初版発行日 1977年5月25日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 長編
私の評価
十津川警部シリーズ、初期の名作!意欲充満の会心サスペンス長編!!
あらすじ
十津川警部は帰宅途中を襲われ、不覚にも誘拐された。彼が気付いたときには、彼は奇怪な無人島にいた。しかもそこには、ある町の一部分がそっくり再現されていたのだ。次々建物から現れる人間は、皆或る事件の目撃者、そしてやがて展開される狂気のシーン。
小説の目次
- 私設法廷
- 第一の証言
- 第二の証言
- 第三の証言
- 第四の証言
- 新たな殺人
- 再開
- 疑惑
- 第三の殺人
- 判決
冒頭の文
今の世の中、刑事だからといって、強盗に襲われないという保証は、どこにもない。私服でいる時なら尚更だろう。
小説に登場した舞台
なし。
登場人物
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 山口博之:
浪人生。二浪中。北海道出身。 - 岡村精一:
中央銀行N支店の副支店長。茅ヶ崎に在住。千田美和子と不倫していた。 - 千田美和子:
中央銀行N支店の行員。岡村精一の不倫相手。 - 浜野光彦:
フリーカメラマン。 - 三根ふみ子:
37歳。バー「ロマンス」のママ。300万円の借金をしていたが、小林啓作が退職金から支払った。 - 小林啓作:
バー「ロマンス」の常連客。今年の四月に勤めていた不動産会社を定年退職。退職金750万円。そのうち300万円を三根ふみ子の借金返済にあてた。 - 安藤つね:
69歳。バー「ロマンス」の並びにある果実店の女将。 - 木下誠一郎:
37歳。太陽物産第三営業課長。1年前、バー「ロマンス」前で殺害された。 - 佐伯信夫:
21歳。木下誠一郎殺害容疑で逮捕され服役。無罪を主張していたが、刑務所で死亡する。 - 佐々木勇造:
佐伯信夫の父親。ブラジル帰り。
印象に残った名言、名表現
■十津川警部の洞察力。
相手が喋り過ぎるときも嘘が多いが、短か過ぎる時も要注意なのだ。人間は、嘘をごまかそうとして、必要以上に説明するものだし、また、嘘を見破られまいとして、寡黙にもなる。
感想
十津川警部シリーズといえば、トラベルミステリーや十津川班たち刑事の活躍が定番だが、本作はまったく趣が異なる。だが、本作は傑作だったと思う。
1年前の殺人事件。この時の容疑者は逮捕され服役し獄中死してしまったが、その時に証人となった人物と十津川警部が無人島に集められ、この1年前の事件の検証を改めて行い、この証人の中に真犯人がいるという設定であった。しかも、この無人島は、事件が起こった現場を完全に再現されているのだ。
完全隔離されたこの場所に集められた人間たち。ここで行われる事件の再検証と裁判。そして、新たに起こる殺人事件。ミステリー好きとしては、ゾクゾクするような設定である。
私も読みながら、「こいつが怪しい。いや、こいつかもしれない」とアレコレ推理をしながら読み進めていくのだ。最後に、十津川警部の理詰めの推理が展開され、事件は解決する。
最初から物語の世界に引き込まれ、最後まで一気読みしてしまうほどの、面白さだった。本作は、十津川警部シリーズの定番と呼ばれるトラベルミステリーではないが、ミステリーとして傑作だった。
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