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「十和田南へ殺意の旅」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

十和田南へ殺意の旅小説

初版発行日 1989年1月30日
発行出版社 廣済堂出版
スタイル 長編

POINT】
「住まば日の本 遊ばば十和田 歩きゃ奥入瀬」。風光明媚な十和田が舞台!物語の前半と後半でまったく違う性格に変貌していく登場人物たち。十津川警部シリーズの名作の一つ。
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あらすじ

「保険金をかけて姉を殺した古木保男ふるきやすおに復讐する」との手紙を残し、井関いぜきゆきは十和田へ向かった。後日、ゆきの自首により所轄署は湖畔のペンションで古木の死体を発見するが、解剖の結果、被害者は前夜のうちに何者かに殺害されていたことが判明する。十津川警部は古木の身辺から殺人動機を持つ三人の男女を割り出し、錯綜する事件の謎に挑む!!

本作のポイントは「心理的なトリック」。

小説の目次

  1. プロローグ
  2. 十和田湖にて
  3. 奥入瀬で
  4. 東京
  5. 第二の招待状
  6. 疑惑への旅
  7. 姉妹
  8. 終りの幕を引く

冒頭の文

(一通目)
中村先生。
今、私は、青森市内のホテルで、この手紙を、書いています。

小説に登場した舞台

  • 十和田湖(秋田県・小坂町&青森県十和田市)
  • 奥入瀬(青森県十和田市)
  • 雪井ノ滝(青森県十和田市)
  • 青森空港(青森県青森市)
  • 大湯温泉(秋田県鹿角市)

登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 清水新一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。

警察関係者

  • 会田:
    秋田県警の警部。
  • 吉田:
    秋田県警の刑事。
  • 鈴木:
    秋田県警の刑事部長。
  • 花井:
    調布署の刑事。
  • 小野:
    青森県警の警部。

事件関係者

  • 古木保男:
    画家。36歳。十和田湖のペンションで殺されていた。
  • 白井豊:
    30歳。自動車修理工場で働いていたがすでに退職。古木保男の友人。
  • 岡部功:
    30歳。北千住の喫茶店「プチ・モンド」を営む。古木保男の友人。
  • 井関亜木子:
    3月に交通事故で死亡。古木保男と交際していた。
  • 井関ゆき:
    井関亜木子の妹。古木保男を殺したと自首する。
  • 中村:
    弁護士。十津川警部の大学時代の友人。
  • 岸本由美子:
    35歳。未亡人の資産家。古木保男と交際していた女性。
  • 森川みどり:
    31歳。古木保男と交際していた女性。去年の3月に自殺を図り、現在も意識不明。
  • 森川次郎:
    森川みどりの弟。元ボクサー。26歳。
  • 望月京子:
    30歳。銀座のクラブのホステス。古木保男と交際していた女性。

その他の登場人物

  • 林:
    画家。十和田湖の休平近くにアトリエを持っている。60歳。
  • 堀田:
    青森市立美術館の館長。
  • 大須賀:
    池袋西口の私立探偵。
  • 早川文子:
    石神井公園の近くに住む女性。70歳。
  • 冬木かな:
    渋谷の輸入玩具店のオーナー。
  • 安藤:
    渋谷駅前にある安藤不動産の社長。
  • 新島圭子:
    OL。学生時代に井関ゆきの親友だった女性。
  • 小沢ふゆ子:
    主婦。学生時代に井関ゆきの親友だった女性。
  • 細野知子:
    通産省に勤務。学生時代に井関ゆきの親友だった女性。
  • 本田:
    白井豊が働いていた自動車修理工場のオーナー。
  • 細川:
    カメラマン。岡部功の高校時代の同級生。

印象に残った名言、名表現

(1)警察のずさんな捜査だったと非難を浴びようとも、事件の真相を明らかにすべき、という十津川警部の倫理観と正義感。

「もちろん、調べて、秋田県警に報告するよ。協力要請が、あったことだし、もし、三月六日の事故が、本当は、殺人だったのなら、それを明らかにするのは、われわれの務めだからね。」

(2)時に愛は、本当の姿を見る目をゆがめてしまう。

それは、冷静な弁護士の態度ではなかった。明らかに、愛に溺れた中年の男の態度だった。

総評

この作品の一番の魅力は、人物の印象が前半と後半で、まったく変わってしまうことにある。

純粋かつ清楚で、正義感あふれる人物が、冷酷かつ狡猾で、欲深く、悪意に満ち溢れた人物になる。光の当て方で絵のデザインが変わる、“一画二驚”作品というものがあるが、まさにそれと同じである。

これは、「こういう流れで登場した人物は、当然こんな人物であるべきだ」という心理的な思い込み、先入観をつかった心理的なトリックともいえる。トラベルミステリー作家として有名な西村京太郎先生だが、こうした心理的なトリックの切れ味も実に鋭い。

この鋭さこそが、西村京太郎先生が、長年にわたって、ミステリー作家の第一人者として、君臨してきた所以の一つなのだろうと、思う。

本作は、1980年代に刊行された、十津川警部シリーズの名作の一つである。

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