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「怒りの北陸本線」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

怒りの北陸本線小説

初版発行日 1993年5月25日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 長編

POINT】
新宿中央公園、多摩川の河川敷、北陸でおきた3つの怪奇的な殺人事件。事件を追う十津川警部に襲いかかる罠。ゆすり屋の手口を克明に描いた傑作サスペンス!
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あらすじ

新宿中央公園で、背中を刺され両眼をえぐられた男の死体が発見された。所持品から、男は坂井広信と判明。マンションの部屋から八千万円近い預金額の通帳と現金二百万円、更に鏡の裏から、北陸の温泉地を巡る予定が記入されたカレンダーが見つかり、十津川と亀井は宿泊ホテルの調査に向った。その矢先、多摩川の河原で腕を切断された女の死体が……。彼女も同じ日に北陸を訪れていたのだった!?

小説の目次

  1. 公園の死体
  2. 小箱の中身
  3. 二つの標的
  4. 犯人像
  5. 誘惑
  6. 反撃
  7. 最後の戦い

冒頭の文

その死体は、深夜の公園に仰向けに横たわり、淡い月明かりに照らされていた。

小説に登場した舞台

  • 新宿中央公園(東京都新宿区)
  • 国立(東京都国立市)
  • 京都駅(京都府京都市下京区)
  • 特急雷鳥
  • 宇奈月温泉(富山県黒部市)
  • 黒部渓谷鉄道トロッコ列車
  • 高岡駅(富山県高岡市)
  • 和倉温泉(石川県七尾市)
  • 芦原温泉(福井県あわら市)
  • 晴海埠頭(東京都中央区)
  • 会津若松(福島県会津若松市)
  • 成田空港(千葉県成田市)
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登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 関根刑事:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三上刑事部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

事件関係者

  • 坂井広信:
    31歳。ゆすり屋。国立市のマンションに在住。新宿中央公園で死体で見つかる。
  • 目加田冴子:
    28歳。フリーのレポーター。多摩川の河川敷で死体で見つかる。
  • 早川祐一郎:
    中央エンタープライズの理事長。
  • 佐々木知子:
    六本木のクラブ「艶」のホステス。早川祐一郎の女。
  • 石沢義郎:
    32歳。ゆすり屋。中野に在住。
  • 三橋研太郎:
    42歳。世界文明センターの理事長。ゆすり屋。元N組の幹部。
  • 関基一:
    三橋研太郎の運転手。
  • 片山博:
    36歳。向島で城南興信所を営む。元大蔵省の役人。
  • 村越貞明:
    城南興信所の調査員。元K電機の技術者。
  • 宮本美奈子:
    城南興信所の調査員。
  • 谷沢昇:
    42歳。ゆすり屋。詐欺と脅迫の前科あり。
  • 中津田要介:
    72歳の代議士。建設大臣。

その他の登場人物

  • 盛田:
    特急雷鳥の運転士。
  • 山下:
    特急雷鳥の車掌。
  • 小沢ゆかり:
    女優。
  • 谷川:
    小沢ゆかりのマネージャー。
  • 中西良:
    43歳。宝石店の社長。
  • 安田信:
    42歳。池袋の家具店の店主。
  • 五十嵐:
    城南興信所の顧問弁護士。
  • 沢田みゆき:
    六本木のクラブ「みゆき」のママ。元芸能タレント。
  • 浦田:
    画商。
  • 織田:
    福島県警の警部。

印象に残った名言、名表現

(1)表情を失った遺体。

眼を失ってしまったために、男の顔は、表情も失ってしまっていた。死んでも、表情はある。殺された場合は、なおさらである。無念の表情、苦痛の表情、諦めの表情、そうしたものが、感じられないのだ。

(2)特急スーパー雷鳥から見える宇奈月温泉までの景色。

蜃気楼で有名な魚津を過ぎると、間もなく、宇奈月温泉である。水田の広がる平野部から、山あいに入って行き、その袋小路の突き当った所に、宇奈月温泉がある。

(3)今回の犯人は、”正義感”で犯罪を犯した!?

「普通なら、殺人の動機を、隠すものだろう?動機がわからないと、容疑者の特定が、難しいからね。だが、こんどのはんにんは、露骨だ。むき出しに、動機を示している。自分の行動に、後ろめたさを感じていないんじゃないかな」

(4)相手が仕掛けてきたときは、逆にチャンスでもある。

「何もない時に、われわれが、連中を罠にかけようとしても、用心しているから、容易に引っかかりはしないと思う。だが、連中が、こちらに、罠を仕掛けてきた場合は、別だ。向うは、主導権を握っていると思っているから、用心はしないだろう。だから、チャンスでもあるんだ」

(5)刑事の嗅覚。

「何か匂って来たね」

「何となく、キナ臭くなってきたよ」

(6)喫煙の表現がおもしろい。

秘書は、腹を立てたのか、廊下の反対側の喫煙コーナーに行って、ぷかぷか、煙草を吸い始めた。

感想

本作は、いずれも、猟奇的な3つの殺人事件が発端となった、ショッキングな事件である。

十津川警部は、「こうした事件には、自己主張がある」と踏んで、捜査をしていた。確かに、何らかのメッセージがないと、こうした事件は起こさないだろう。

そして、事件の中盤で早くも、容疑者と思われる”連中”を特定する。だが、証拠はない。

本作は、大どんでん返し的なミステリーではない。容疑者を少しづつ少しづつ、追い詰めていく、こうした類のミステリーである。

緻密でロジカル。少しづつ追い詰めていくゾクゾク感が味わえるのだ。警察ミステリーの王道が、この作品には、詰まっていると思う。

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