初版発行日 2019年2月20日
発行出版社 中央公論新社
スタイル 長編
私の評価
【POINT】
十津川は副総理暗殺と元同僚殺害の真相にたどり着けるのか!?
十津川は副総理暗殺と元同僚殺害の真相にたどり着けるのか!?
あらすじ
えちごトキめき鉄道・日本海ひすいラインの泊駅で、普通列車に乗っていた男が青酸カリにより中毒死した。被害者は元警視庁刑事・新井で、車内では乗客に飲み物を配っていた女がいたという。新井は、5年前に起きた副総理暗殺事件の捜査方針に不満を持ち1年前に退職し、事件現場のホテルで当時清掃員をしていた富永という男を単独で追っていたようだ。しかし、富永は新井が殺害された翌日に姿を消していた…。
小説の目次
- 泊行き普通列車
- 合同捜査
- ある七十歳
- 政治と殺人と
- 奇妙な京都旅行
- 黒い五分間の謎
- 逆転の法則
冒頭の文
私は、旅が好きだ。それも、鉄道の旅が好きだ。だからといって、とても鉄道マニアといえそうもない。せいぜい、鉄道ファンぐらいか。
小説に登場した舞台
- 直江津駅(新潟県上越市)
- えちごトキめき鉄道「日本海ひ
- 谷浜駅(新潟県上越市)
- 有間川駅(新潟県上越市)
- 名立駅(新潟県上越市)
- 筒石駅(新潟県糸魚川市)
- 能生駅(新潟県糸魚川市)
- 浦本駅(新潟県糸魚川市)
- 梶屋敷駅(新潟県糸魚川市)
- 糸魚川駅(新潟県糸魚川市)
- 青海駅(新潟県糸魚川市)
- 親不知駅(新潟県糸魚川市)
- 市振駅(新潟県糸魚川市)
- 泊駅(富山県下・朝日町)
- 富山駅(富山県富山市)
- 東京駅(東京都千代田区)
- 茅ヶ崎海岸(神奈川県茅ヶ崎市
- 浜松駅(静岡県浜松市)
- 京都駅(京都府京都市下京区)
- 千歳烏山駅(東京都世田谷区)
- 成田空港(千葉県成田市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 土屋:
富山県警の警部。 - 向坂:
富山県警の刑事。 - 橋本豊:
私立探偵。元警視庁捜査一課の刑事で、十津川警部の元部下。
事件関係者
- 新井健一:
50歳。元警視庁の刑事。世田谷区のマンションに在住。1年前に退職し、一人で5年前の平間剛殺害事件を追っていた。えちごトキめき鉄道の車内で服毒死する。 - 後藤恵一郎:
総理大臣。「ハンティング・ワールド日本支部」の支部長をしている。 - 後藤紀子:
後藤恵一郎の妻。 - 平間剛:
当時60歳。副総理大臣兼外務大臣。5年前、Nホテルで行われたパーティ会場のトイレで射殺された。 - 富永秀英:
70歳。泊に在住。5年前、都内在住でホテルの清掃員をしていた。新井健一殺害事件の後、練馬区内のマンションに引っ越した。 - 菅沼功一郎:
42歳。名古屋市内にある菅沼病院の外科医。名古屋市内のマンションに在住。射撃大会の会場で銃が暴発して死亡する。 - 秋山けい:
30歳。名古屋市内にある菅沼病院の医師。名古屋市内のマンションに在住。 - 山口明:
N大学の准教授。政治学が専門。後藤恵一郎のブレーン。大学隣の公園で射殺された。 - 足立俊次:
30歳。元テニス選手。後藤紀子が所属するテニスクラブの会員。現在、商事会社のロサンゼルス支店に勤務している。
えちごトキめき鉄道の乗客
- 木村文彦:
千駄ヶ谷にあるAI会社に勤務。同人雑誌「鉄道は友達」のメンバー。 - 渡辺信一郎:
74歳。泊にある菓子店の店主。 - 高橋知之:
48歳。直江津にあるコンビニの店主。 - 近藤由美:
36歳。泊在住の専業主婦。 - 安藤博:
45歳。泊在住。 - 安藤節子:
40歳。安藤博の妻。心臓の持病がある。
その他の登場人物
- 田所:
新聞記者。同人雑誌「鉄道は友達」のメンバー。 - 横井圭太郎:
射撃クラブを経営。元オリンピックの射撃選手。 - 坂口敏行:
茅ヶ崎在住の資産家。「ハンティング・ワールド日本支部」の会員。 - 杉下あけみ:
27歳。四谷にある出版社に勤務。山口明の恋人。 - 吉田悠:
世田谷区北烏山のマンションに在住の男。 - 小田島広之:
三鷹市のマンションに在住の男。 - 平間悟:
平間剛の弟。 - 三浦:
65歳。後藤総理の元秘書。 - 田中康介:
作家。十津川警部の大学時代の同級生。筆名は渋谷義男。 - 大石徹:
元M重工造船の技術者。 - 柴崎博久:
元M重工造船の技術者。 - 足立俊之:
千歳烏山駅前にあるカフェ「むさしの」の主人。足立俊次の父親。
感想
本作は、トラベルミステリーと社会派ミステリーが、良い塩梅で融合した作品だったと思う。
序盤は、旅情がメインになっており、えちごトキめき鉄道の沿線の描写が続く。序盤の最後で殺人事件が発生したことで、物語が動いていく。その後は、殺人事件とその裏にある政治的な背景を探っていくことになるのだ。
中盤は、社会派で固い話になっていくのかと思いきや、殺人事件の捜査が続いてく。サスペンスフルな展開である。終盤にかけていよいよ社会派の色合いが強くなっていくのである。
本作は、殺人事件の捜査そのものは、比較的あっさりと解決してしまうが、”本当の悪”はあまりにも巨大で警視庁捜査一課では手に負えない。こうした悪に十津川警部はどう立ち向かい、どう折り合いをつけたのか?これが結末に描かれる。
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