初版発行日 2018年10月5日
発行出版社 講談社ノベルス
スタイル 長編
私の評価
両国駅3番ホームでの怪異と指輪の謎に、十津川警部が迫る!
あらすじ
会社員の宮田は、普段は使われていないJR両国駅3番ホームで、深夜に二人の不審な人物を目撃する。翌日、3番ホームに入り込んだ宮田と恋人の千里はランの模様が入った指輪を拾うが、ある理由から指輪の複製を依頼した宝石店の店員が殺害された。そして優勝力士と両国から館山に向かう臨時特急に乗った千里が行方不明に。
小説の目次
- 深夜のホームで
- 臨時特急
- 昭和二十年三月九日の夜
- 過去への旅
- あるグループ
- 五千万円の口止め料
- 三月九日夜の出発
冒頭の文
宮田は、一ヶ月前に、千葉県の津田沼のマンションに引っ越した。
小説に登場した舞台
- 両国駅(東京都墨田区)
- 津田沼駅(千葉県習志野市)
- 両国国技館(東京都墨田区)
- 蘇我駅(千葉県千葉市中央区)
- 館山駅(千葉県館山市)
- 赤湯駅(山形県南陽市)
- 赤湯温泉(山形県南陽市)
- 三鷹駅(東京都三鷹市)
- 千葉駅(千葉県千葉市中央区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 宮田典:
29歳。千駄ヶ谷にあるAI工業本社に勤務。津田沼のマンションに在住。両国駅近くでトラックに轢かれて死亡した。 - 渡辺千里:
千葉県庁の職員。宮田の大学時代の同級生で恋人。 - 白石豊:
35歳。銀座・数寄屋橋にある宝石店「東京ジュエリー」の店員。四谷三丁目の自宅マンションが火事になり死亡した。 - 杉山好市郎:
39歳。元ゲーム機メーカーの社員。「メダカ通信」の定期購読者。三鷹に在住。 - 斉藤加代:
27歳。中野区のマンションに在住の女性。 - 林嘉夫:
35歳。元JR社員。 - 高橋文彦:
26歳。元JR社員。 - 田辺大:
25歳。元JR社員。
その他の登場人物
- 岸本マキ子:
宝石店「東京ジュエリー」の社長。 - 館山:
18歳。力士。 - 原田勝:
86歳。年金生活者。 - 三浦恵子:
50歳。深川R小学校の校長。 - 中根敬:
国立大学の教授。太平洋戦争を研究している。 - 工藤直子:
赤湯温泉にある旅館の女将。 - 真田:
雑誌「鉄道日本」の編集長。 - 阿久津:
ゲーム機メーカーの社員。杉山好市郎の同期だった。 - 鈴木:
ゲーム機メーカーの社員。杉山好市郎の元上司。 - 桜内明:
桜商事の二代目社長。 - 山田和平:
33歳。山田元少尉の孫。 - 倉田倫子:
85歳。倉田元少尉の未亡人。 - 倉田かずこ:
20歳。倉田倫子の孫。女子大生。 - 山田太陽:
山田和平の弟。
感想
今回は、両国駅がテーマになった作品である。両国といえば両国国技館であり相撲の街である。作中に力士も登場するなど、両国らしさが垣間見られたシーンもあった。
が、本作の主眼は太平洋戦争時代のエピソードであり、太平洋戦争の歴史組み込み型ミステリーという点では、2010年代以降の十津川警部シリーズの王道パターンの一つである。
ただし、この歴史のエピソードの解説が加わることで、ミステリーそのものが中だるみしてしまうのは否めない。途中で緊張感が途切れてしまうので、終盤のミステリーもふわふわとしてしまうのだ。
ここが残念であるが、太平洋戦争の歴史については、戦争を経験した西村京太郎先生だからこそ描ける部分なので、否定するつもりはない。
最後に、西村京太郎先生の言葉を紹介しておく。
戦争末期、唯一の国家目的は、本土決戦だった。従って、それを邪魔するものは、全て悪であって、排除されなければならなかった。それが、両国駅3番ホームから出発する、子供を乗せた臨時列車であってもである。当然悲劇が生れる。それを、どう考え、どう納得したらいいのか。唯一、納得できる考え方がある。それは、戦争が生んだ怪談なのだと思うことである。だから怖い。
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