初版発行日 2020年6月30日
発行出版社 光文社
スタイル 長編
私の評価
【POINT】
「京都は魔界」その一言を残して、男は消えたー。京都を知り尽くした著者が、京都と戦争、京都人の本質をテーマに、幻想的な手法で挑んだ、意欲的なエンターテインメント!
「京都は魔界」その一言を残して、男は消えたー。京都を知り尽くした著者が、京都と戦争、京都人の本質をテーマに、幻想的な手法で挑んだ、意欲的なエンターテインメント!
あらすじ
編集長・和田は、六道珍皇寺の井戸に消えた編集者・佐伯を追い京都に来た。一方、十津川警部はある討論会で、京都もアメリカの原爆投下目標だったと知る。佐伯の事件を追って京都に来た十津川は、六道珍皇寺と薬師寺をつなぐという謎のトンネルで現世とあの世がつながっている証拠を見つける。しかし十津川はある疑問を抱く―。
小説の目次
- 昼は現世、夜は冥府
- 冥府からの報告
- 京都・空の魔界
- 反撃する京都
- 京都混迷
- 京都的思考の不思議
- 京都はやはり謎の魔界か
冒頭の文
「秋の合併号は、京都特集で行くことにした」和田編集長が続けた。
小説に登場した舞台
- 六道珍皇寺(京都府京都市東山区)
- 京都駅(京都府京都市下京区)
- みなとや幽霊子育飴本舗(京都府京都市東山区)
- 千本ゑんま堂 引接寺(京都府京都市上京区)
- 一乗寺駅(京都府京都市左京区)
- 詩仙堂丈山寺(京都府京都市左京区)
- 薬師寺(京都府京都市右京区)
- 六道の辻(京都府京都市東山区)
- 帝国ホテル東京(東京都千代田区)
- 平安神宮(京都府京都市左京区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 三浦:
京都府警の警部。 - 原:
京都府警の警部。 - 田島:
中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。 - 三上カナ:
三上刑事部長の娘。京都にある仏教系の大学に通っている。
事件関係者
- 和田文彦:
雑誌の編集長。 - 佐伯敬:
雑誌の編集者。京都を取材中、行方不明になる。その後死亡した。 - 畑みゆき:
雑誌の編集者。 - 青木:
京都タイムスのデスク。 - 浅川秀一:
72歳。郷土史家。 - 大河内:
大学教授。 - 蘇我仲路:
陶芸家。蘇我氏の子孫を自認している。 - 平安美樹:
京都の平安さん。 - 安部幽生:
安倍晴明の子孫を自認している男。 - 賀茂かおる:
白拍子の子孫を自認している男。 - 浜田圭介:
コメンテーター。 - 島田:
京都の桔梗屋の主人。 - 一文字:
京都の老舗旅館「平安客舎」の主人。
感想
本作は、京都に住んでいた西村京太郎先生の、京都に対する考察記だととらえている。
小野篁の逸話、陰陽道や五山の送り火についての解説、さらには平安時代に京都にあった「鳥辺野」、「化野」、「蓮台野」という3つの葬場の紹介をしたり、京都の能狂言が描かれていた。
とくに力が入っていたのが、原爆がなぜ京都に落とされなかったかの考察と京都人の特殊性である。太平洋戦争時代の京都については、あまり知られていない部分もあり、勉強になったという読者も多いだろう。
最後に、西村京太郎先生のことばを紹介しておく。
私は二十年京都で生活した。今でも憧れの町であり、憧れの人たちである。しかし、困ったことに、憧れのままである。少なくとも、二十年間は、憧れのままだった。他とは違う町、違う人たち。そういえば、京都の人たちがいう。日本には日本人と京都人がいると。不思議な話である。その不思議さを書いてみたのだが。
一つだけ、はっきり言えることがある。世界が亡びても京都は残るし、京都人は生き残るだろう。
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