初版発行日 2002年10月5日
発行出版社 講談社
スタイル 長編
十津川警部シリーズ史上、もっとも美しい女性のひとり、千姫こと本多あかり!時を超えた西村京太郎浪漫!
あらすじ
TV番組の感情団に、大阪城落城の際、炎を避けるために、千姫が頭からかぶったものだという打かけが出品された。持ち主は、自ら千姫の末裔を名乗る姫路在住の美女。この番組への出演をきっかけに、注目を浴びはじめた彼女だが、接近を図った者たちは次々に無残な死を遂げ……。
小説の目次
- 秘せよ千姫
- 殺せ千姫
- 涙せよ千姫
- 苦悩せよ千姫
- 語れ千姫
- 耐えよ千姫
- 死せよ千姫
小説に登場した舞台
- 姫路駅(兵庫県姫路市)
- 姫路城(兵庫県姫路市)
- 千姫ぼたん園(兵庫県姫路市)
- 夢前川(兵庫県姫路市)
- のこぎり横丁(兵庫県姫路市)
- 愛宕念仏寺(京都市右京区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
兵庫県警
- 森田:
兵庫県警捜査一課の警部。 - 小原:
兵庫県警捜査一課の刑事。
事件関係者
- 本多あかり:
自身を千姫の末裔と称する美女。姫路市内でデザイン工房を営む。 - 白石真一:
イタリア料理点を十数店経営する青年実業家。40歳。 - 高橋圭一郎:
48歳。TK興業の社長。 - 南条圭子:
銀座で大型宝石店を営む。 - 本多清純:
本多あかりの父親。3年前に火災で亡くなる。 - 西沢恭之助:
骨董品の鑑定士。 - 山田文代:
62歳。江戸川区内で駄菓子屋を営んでいる。かつて本多清純のお手伝いだった。 - 野本:
3年前の火災事件を目撃した元巡査長。すでに亡くなっている。
その他の登場人物
- 東野:
TV鑑定団の司会者。 - 井上:
TV鑑定団の司会者。 - 飯田:
古美術専門家。 - 永井:
古美術専門家。 - 青木:
TV鑑定団を制作しているプロダクション「オリエント」の担当者。 - 林清美:
TV鑑定団を制作しているプロダクション「オリエント」の担当者。 - 佐々木:
TV鑑定団を制作しているプロダクション「オリエント」の担当者。 - 飯田京子:
ミス日本に選ばれたスチュワーデス。白石真一の元妻。 - 増田:
白石真一の秘書。35歳。 - 高橋美代子:
高橋圭一郎の妻。 - 坂本:
高橋圭一郎が経営している新宿歌舞伎町のパブの店長。 - 秋山:
高橋圭一郎が経営している池袋のパブの店長。 - 重野:
刀剣専門の勘定家。 - 成田:
練馬警察署生活保護課の刑事。 - 大和田:
本多清純が経営していたリサイクルショップの従業員。 - 金子:
練馬区内の消防署の副署長。 - 花岡康治:
N大学の助教授。本多清純のいとこ。 - 田之上:
50歳。辛辣な批評家。 - 羽田しおり:
野本と婚約していた女。 - 塩崎進太郎:
O製薬の社長。
個人的メモ
- 姫路城と絶世の美女。この組み合わせがなんとも艶めかしい。
- 犯行現場を早い段階でチラ見せする。
- 十津川警部の気品についての考察がおもしろい→「美しさというのは、ある程度、努力によって輝くものだろうが、気品というのは、生まれつきのものではないだろうか。」
- 千姫や本多正純に関連する歴史的事実やエピソードがこれでもかというほど登場する。
- 「悲しみと怒りの感情は、ごく近いもの」
総評
本作は最初から容疑者が1人しかいない。つまり、容疑者の動機と証拠をつかむのが主な目的になる。その容疑者は美しく、気品があり、凛としている、絶世の美女。
本作は小説なので、本多あかりが実際にどんな顔をしているのかわからない。それでも、彼女がとてつもない美人だということが、伝わってくる。自分の頭の中で最強の美女を、本多あかりと重ね合わせながら、物語の世界に入っていた。
だから、なぜ本多あかりがあんなことをしたのだろうか?と我が事のようにアレコレ推理を重ねた。きっと、そうせざるを得ない事情があるのだと。そこには物語があるのだと。
そんなこんなで最後まで読みすすめる。ラストの亀井刑事のセリフ。
「これで良かったような気もしています」
筆者もまったく同じ気持ちであった。すごく納得感のある終わり方だった。この終わり方は、十津川警部シリーズの中でも、上位に入る美しさだと思う。
最後に、表紙カバーに記載されていた西村京太郎先生が本作を描いた背景について語ったことばを紹介しておく。
姫路へ行った時や、新幹線で通過する時など、何回となく、姫路城を見てきた。
そのたびに、美しさに感動をしたが、その反面、あの時代の城にしては、優雅すぎて、強さに乏しいなと思っていた。
今回、千姫について書こうと思い、関係書籍を読んでいて、千姫が、しばらくの間、姫路城に住んでいたと知り、いかにも、あの優雅さは、千姫にこそふさわしいものだと感じた。いや、それ以上に、どこか、驕慢ささえ感じる美しさは、徳川秀忠の娘の千姫を、思い出させるものだと思った。
千姫という名前が象徴する美女のイメージと、姫路城のイメージとは、永遠かもしれない。
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