初版発行日 2005年3月30日
発行出版社 光文社
スタイル 長編
東京で大学教授、大阪でホームレス、京都でクラブのママが殺される。唯一の共通点は、犯行現場に「第一番」、「第二番」、「第三番」という紙が残されていたこと。
あらすじ
東京のホテルで老教授が刺殺された。バスローブのポケットには「第一番」と書かれた一枚の紙が入っていた。次いで、大阪で殺されたホームレスのジャンパーからは「第二番」。京都で刺し殺されたクラブのママの胸元からは「第三番」の紙が見つかる。何の繋がりもなさそうな三人の共通点とは?十津川執念の捜査!
小説の目次
- 東京・第一番
- 大阪・第二番
- 京都・第三番
- 共通点
- 遍路殺し
- 死へ誘う日記
- 青い国から来た殺人者
冒頭の文
四月十日、朝から春らしい陽光が降り注ぎ、夜になっても、暖かさが残っていた。
小説に登場した舞台
- 天王寺公園(大阪府大阪市天王寺区)
- 名古屋駅(愛知県名古屋市中村区)
- 石部小路(京都府京都市東山区)
- 深大寺(東京都調布市)
- 松山空港(愛媛県松山市)
- 今治駅(愛媛県今治市)
- 今治警察署(愛媛県今治市)
- 砥部町(愛媛県・砥部町)
- 足摺岬(高知県土佐清水市)
- 金剛福寺(高知県土佐清水市)
- 土佐清水(高知県土佐清水市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 鈴木刑事:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 松崎:
大阪府警の警部。 - 木下:
大阪府警の刑事。 - 矢吹:
京都府警の警部。 - 中村:
検死官。
事件関係者
- 岡本義之:
60歳。東京S大学の名誉教授。出版記念パーティーの夜、都内のホテルNで殺される。 - 辻村晴子:
40歳。翻訳の仕事をしている。文部科学省の局長の妻。岡本義之と不倫していた。 - 堀増二郎:
59歳。天王寺公園に住むホームレス。通称ナゴヤ。名古屋でラーメン屋を営んでいたが、借金を作って蒸発。 - 寺島美弥子:
35歳。石部小路のクラブ「てらしま」のママ。 - 荒木健一:
40歳。愛媛県で土産物店を経営。砥部町にある有名な旧家の長男。一年前に自殺した。 - 広田芳郎:
38歳。毎年春と秋に荒木健一の手伝いをしていた男。 - 小田信介:
50歳。砥部信用金庫の支店長。
その他の登場人物
- 岡本文男:
岡本義之の息子。アメリカ在住。 - 岡本美津子:
岡本義之の娘。結婚して北海道に住んでいる。 - 金子徳子:
堀増二郎の元妻。岐阜県美濃加茂市在住。 - 井上:
東京S大学の心理学の教授。岡本義之の友人。 - 大曽根:
名古屋大学の名誉教授。仏教の研究をしている。 - 上野亜希:
石部小路のクラブ「てらしま」のホステス。 - 原田絹子:
祇園の雑居ビルでバーを営んでいる。かつて寺島美弥子と一緒に舞妓をやっていた。 - 荒木登美子:
荒木健一の妹。 - 青木:
出版社の記者。 - 辻村局長:
辻村晴子の夫。 - 田中恭子:
主婦。辻村晴子の大学時代の同級生。 - 相原育代:
人材派遣会社の社長。辻村晴子の大学時代の同級生。 - 西原和之:
41歳。暴力団S組の幹部。
印象に残った名言、名表現
(1)東京と大阪の二大ドヤ街。
世間では、景気は回復基調にあるといっているが、どうやら、景気のいい人間もいれば、悪い人間もいる。そういう二極化している現実があるのだろう。その典型的な例が、東京でいえば、山谷であり、大阪でいえば釜ヶ崎だろう。
(2)今回の事件の被害者は、必ず、共通点があるはず。十津川警部の確信。
「どこかに必ず、共通点があるはずです。どうでなければおかしいと、私は、思っています。」
感想
本作は、場所も属性もまったく異なる3つの殺人事件の共通点を、探っていくストーリーである。一見すると、何の関係もなく見える殺人事件に、実は強烈な共通点があった。連続札事件であった。という、ミステリーの王道である。
十津川班が行った、緻密かつロジカルな推理により、事件の根は、四国お遍路にあることがわかる。そして、十津川警部たちは”本丸の四国”へ飛ぶのだ。
本作では、四国お遍路の概要を、説明する記述がある。それがすごくわかりやすいのだ。
まず、四国お遍路をする際の格好である。
遍路は、金剛杖をつき、白衣を着、そして、すげ笠をかぶって回る。
続いて、お遍路の距離と移動手段について。
八十八ヶ所の寺は、徳島、香川、高知、愛媛の四国全県に、またがっており、そのすべての距離一三六〇キロを歩いて回ると、約五十日かかるというが、最近ではバスで廻ったり、あるいは、ある区間だけ歩いて、翌年、次を回る、そういう人たちも、いるらしい。
さらに、お遍路の満願についての解説もあった。
お遍路が、八十八ヶ所の寺を全部回ると、これを結願、あるいは満願という。第一番から、順番に回る必要はなく、どこから始めてもよく、最後の八十八ヶ所目が、満願になることになる。
この他にも、お遍路さんをもてなす、接待文化が四国にあることにも触れている。本書を読んでいると、いつかお遍路の旅に出たいと思うのだ。
そして、本作のクライマックスも、四国でも人気の観光地であり、有名な札所でもある。その場所は、クライマックスにふさわしい、と私は思った。
ちなみに、四国お遍路を描いた作品としては、2008年刊行の「鳴門の愛と死」、同じく2008年刊行の「四国お遍路殺人ゲーム」がある。こちらも必見の書である。
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