初版発行日 1995年2月28日
発行出版社 徳間書店
スタイル 長編
私の評価
【POINT】
おみくじが示す連続殺人の謎。十津川警部の推理が冴える!
おみくじが示す連続殺人の謎。十津川警部の推理が冴える!
あらすじ
東京・井の頭公園で発見された男の刺殺死体。ポケットには善光寺の”凶”のおみくじが入っていた。被害者の交友関係から、捜査線上に一人の女が浮かぶ。その直後、名古屋発の特急「しなの21号」の車内で、女は毒殺されてしまった。ハンドバッグの中には、やはり”凶”のおみくじが!犯人の狙いは何か?
小説の目次
- 凶のくじ
- しなの21号
- 予告
- 野沢温泉
- 喫茶店
- 道後温泉
- 救出劇
- 沈黙の壁
- ジグソーパズル
- 犯人像
- 激しい女と激しい男と
- 最後の戦い
冒頭の文
五月十五日の朝、東京の井の頭公園で、男の死体が発見された。公園内の池の近くである。
小説に登場した舞台
- 井の頭恩賜公園(東京都武蔵野市)
- 名古屋駅(愛知県名古屋市中村区)
- 特急「しなの21号」
- 塩尻駅(長野県塩尻市)
- 松本駅(長野県松本市)
- 特急「あずさ9号」
- 長野駅(長野県長野市)
- 善光寺(長野県長野市)
- 特急「あさま6号」
- 高崎駅(群馬県高崎市)
- 野沢温泉(長野県・野沢温泉村)
- 松山空港(愛媛県松山市)
- 道後温泉(愛媛県松山市)
- 吉田インターチェンジ(静岡県・吉田町)
- 八尾空港(大阪府八尾市)
- 浜名湖(静岡県浜松市)
- 足柄サービスエリア(静岡県・小山町)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 安木:
35歳。長野県警捜査一課の警部。 - 内田:
浅草署の刑事。 - 寺沢:
警察庁の職員。十津川警部の同期。 - 田口:
中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。 - 亀井マユミ:
亀井刑事の娘。犯人に誘拐される。
事件関係者
- 河野久志:
36歳。3月までR銀行調布支店の貸付課課長代理をしていた。調布市内のマンションに在住。井の頭公園で刺殺死体となって発見された。 - 牧原麻美:
デザイナー。南青山でM・Aデザイン工房を営む。かつて「豊田みち子」の名前でAV女優をしていた。特急しなの21号で毒殺される。 - 堀永一:
経営コンサルタント。目黒区自由が丘に在住。野沢温泉で刺殺死体となって発見された。 - 中尾祐子:
かつて六本木のクラブ「艶」でホステスをしていた。大田区田園調布のマンションに在住。松山の道後生まれ。 - 中尾由香:
中尾祐子の妹。道後温泉で両親の店を手伝っている。 - 松山友一郎:
62歳。浅草にあるカニ料理店「広まつ」の主人。柏崎の生まれ。今年のはじめ、夫婦で心中した。 - 松山ふみ子:
60歳。浅草にあるカニ料理店「広まつ」の女将。新潟の漁村生まれ。今年のはじめ、夫婦で心中した。 - 黒木要介:
29歳。カメラマンの卵。世田谷区成城のマンションに在住。以前、松山夫妻の「広まつ」で働いていた。 - 花井えりか:
看護師。黒木要介の恋人。 - 塚本完次:
四ツ谷駅近くにある塚本探偵事務所の所長。
その他の登場人物
- 広田:
R銀行調布支店の支店長。 - 可奈子:
六本木のクラブ「艶」のホステス。 - 城之内由紀:
25歳。堀永一の雇われ家政婦。 - 有田:
八尾空港内にある西日本M飛行の事務所長でパイロット。 - 小柳:
浅草のファーストフード店のアルバイト。以前、松山夫妻の「広まつ」で働いていた。 - 崎田:
K生命雷門支店の支店長。 - 山下:
特急「しなの21号」の車掌。
印象に残った名言、名表現
■1998年の長野オリンピックに向けて色めき立っていた当時の長野市。
駅を降りると、さすがに、冬季オリンピックの看板が目立った。そいういえば、途中、列車の窓からも、新しい道路建設の景色が見られた。
感想
今回の事件は、財産を根こそぎ奪われ、しかも、自殺に見せかけて殺された浅草の夫妻の敵討ちが、事件の核であった。
お人好しで、努力家で、コツコツと積み上げてきたものを、詐欺師たちにすべてを奪われ殺された。その恨みの強さは、当人しかわからないであろう。その恨みの強さが、今回の事件の至るところに垣間見られた。
その一つが、「凶のおみくじ」である。犯人が犯行現場に必ず残す凶のおみくじ。これが今回の事件のキーアイテムにもなった。
このおみくじが示す意味について、十津川警部が推理を働かせ、東奔西走するのである。しかも、このおみくじには、恨みを抱いた犯人から、詐欺師たちへのメッセージも込められているのである。
犯人の激しい恨みと、犯人を愛する女の激しい愛情、そして、最後の悲しい結末が、印象的だった。
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