初版発行日 1988年1月25日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 長編
私の評価
父の殺人容疑を晴らせ!!連続殺人犯を追って、後生掛、不老不死、男鹿へ。東北の温泉と盛岡、角館をめぐる捜査行の果てに……。
あらすじ
十津川警部の部下、豊田刑事の父が自殺未遂を起こした。大変なことをしてしまった。死んで詫びるより仕方がないーとの遺書が意味するものは?その父に、秋田の後生掛温泉で知り合った未亡人の殺人容疑がかかっている。豊田は父の無実を証明すべく東北への旅に出る。しかし東京とL特急「たざわ」の車内で第2、第3の殺人事件が……!真犯人が別にいる。十津川が動いた!
小説の目次
- 後生掛温泉
- 父の足跡
- 不老不死温泉
- 男鹿温泉
- 東京
- L特急「たざわ」
- 炎の中で
- 同窓会
- 盛岡へ
- 再点検
- 穴の中で
- 欲望の果てに
冒頭の文
警視庁捜査一課の若い豊田刑事が、自分の1Kのマンションに帰ると、絵ハガキが、届いていた。
小説に登場した舞台
- 明大前(東京都世田谷区)
- 上野駅(東京都台東区)
- 盛岡駅(岩手県盛岡市)
- 特急「たざわ9号」
- 田沢湖駅(秋田県仙北市)
- 田沢湖(秋田県仙北市)
- 玉川温泉(秋田県仙北市)
- 後生掛温泉(秋田県鹿角市)
- 八幡平駅(秋田県鹿角市)
- 大館駅(秋田県大館市)
- 特急「日本海」
- 弘前駅(青森県弘前市)
- 鰺ケ沢駅(青森県・鰺ヶ沢町)
- 深浦駅(青森県・深浦町)
- 艫作駅(青森県・深浦町)
- 黄金崎不老ふ死温泉(青森県・深浦町)
- 十二湖駅(青森県・深浦町)
- 日本キャニオン(青森県・深浦町)
- 十二湖ビジターセンター(青森県・深浦町)
- 越口の池(青森県・深浦町)
- 能代駅(秋田県能代市)
- 男鹿温泉郷(秋田県男鹿市)
- 秋田駅(秋田県秋田市)
- 盛岡駅(岩手県盛岡市)
- 角館駅(秋田県仙北市)
- 角館武家屋敷(秋田県仙北市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の刑事。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 豊田肇:
26歳。警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。父親の殺人容疑を晴らすため、後生掛、男鹿、盛岡、角館に向かう。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 鈴木:
秋田県警の刑事。 - 北川:
秋田県警の警部。 - 片山:
46歳。岩手県警の警部。
事件関係者
- 豊田安治:
58歳。豊田刑事の父親。明大前にある「豊田ケーキ店」を営む。「大変なことをしてしまった。死んで詫びる」と遺書を残し首吊り自殺をしたが一命を取り留めた。 - 三宅文子:
48歳。盛岡にある呉服店の未亡人。資産家。男鹿温泉近くの雑木林で死体となって発見された。 - 林時子:
後生掛温泉にある旅館の従業員。紺屋地獄の谷底で死体となって発見された。 - 三宅清美:
25歳。三宅文子の姪。盛岡市内の証券会社に勤務。盛岡市内のマンションに在住。新宿西口にある「新生ホテル」で死体となって発見された。 - 三宅夕子:
46歳。三宅清美の母親。三宅文子の妹。L特急「たざわ」の車内で死体となって発見された。 - 三宅晴夫:
60歳。三宅文子の叔父。盛岡駅前で土産物店を営む。 - 三宅ひろみ:
52歳。三宅晴夫の妻。 - 朝倉史郎:
43歳。三宅文子の夫の弟。盛岡市内に事務所をかまえる弁護士。 - 朝倉友子:
38歳。朝倉史郎の妻。 - 川上淳:
盛岡市内に事務所をかまえる私立探偵。 - 平山正:
川上淳の高校時代の友人。傷害の前科あり。 - 青木敏朗:
59歳。角館にある旅館「ひのき」の主人。旅館が火事になり火傷で意識不明の状態になったが一命を取り留めた。 - 浅野:
38歳。盛岡にある浅野医院の院長。
その他の登場人物
- 原田佳代:
男鹿温泉にある旅館の従業員。 - 河野寛:
豊田刑事が後生掛温泉で話した男。東京からの旅行者。 - 金村:
50歳。L特急「たざわ」の車掌。 - 中山:
45歳。M銀行角館支店の支店長。 - 広沢敬二:
大手町にある電機メーカーの管理課長。青木敏朗の大学時代の同級生。 - 内山:
四谷で法律事務所をかまえる弁護士。青木敏朗の大学時代の同級生。 - 小池里子:
後生掛温泉にある旅館の従業員。 - 与田君子:
新宿西口にある「新生ホテル」のルーム係。 - 松本良江:
53歳。三宅家のお手伝いをしていた女性。
印象に残った名言、名表現
(1)後生掛温泉の湯治場。
天井の高い檜の大浴場だが、長年使われていて、その檜も、黒ずんでいる。硫黄泉独特の匂いがたてこもり、それに、湯煙で、中は、暗い。それが、いかにも、昔風な湯治場の感じだった。
(2)オーシャンビューというより、まるで海の中にあるような不老不死温泉。
海岸のそばというより、海岸に張り出したように建てられているのが、不老不死温泉だった。
感想
本作は、資産家の家の莫大な遺産をめぐっておきた、連続殺人事件である。
警視庁捜査一課の若手刑事の父親が、首吊り自殺をし、しかも、殺人容疑をかけられたというショッキングな出来事が発端となっており、すぐに、物語の世界観に入り込める。
本作ですばらしい点は、トラベルミステリーとしての出来であろう。
父親の容疑を晴らすため立ち上がった豊田刑事が、父親の足跡をたどりながら旅をする。この道程が、旅情たっぷりに描かれているのだ。
具体的には、田沢湖、後生掛温泉、大館、弘前、不老ふ死温泉、十二湖、男鹿温泉、角館、盛岡と、北東北の各スポットが登場し、読者も一緒になって旅をする”旅気分”が味わえる。
北東北に興味がある方はぜひ一読することをおすすめしたい。
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