初版発行日 2005年11月25日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 短編集
舞台は松本・小諸・野沢温泉・軽井沢・白馬……。十津川&亀井、信濃路を往く!
あらすじ
1.白鳥殺人事件
短編集「野猿殺人事件」に収録。下記を参照↓↓
→「野猿殺人事件」
2.小諸からの甘い殺意
亀井家の近所にある団地に、トラックでりんごを売りに来る、若くて愛想のいい美女と、寡黙で図体のでかい中年男。近所では凸凹夫婦と噂されていた。だが、ある日を境に、女がいなくなる。そして、新宿中央公園で男の死体が発見された!十津川と亀井は、男が住む長野県小諸市に向かったが……。
3.信濃の死
短編集「十津川警部の休日」に収録。下記を参照↓↓
→「十津川警部の休日」
4.ヨコカル11.2キロの殺意
一ヶ月ぶりの休暇で、息子の健一と保科温泉へ旅行にでかけた亀井刑事。行きの特急あさま号の車内で、女優の山本アキ子が殺されていた!列車内で山本アキ子と一緒にいた元プロ野球選手が容疑者として浮上したが……。
5.スキー列車殺人事件
牧野由美は大学時代の仲間だった男女6人で、八方尾根にスキー旅行に出かけた。一人だけ後から来ることになった井上かおりは、姿を見せないまま八方尾根スキー場で殺されていた。さらに、仲間のうちのひとり、原田も死体で発見される……。
小説に登場した舞台
1.白鳥殺人事件
短編集「野猿殺人事件」に収録。下記を参照↓↓
→「野猿殺人事件」
2.小諸からの甘い殺意
- 新宿中央公園(東京都新宿区)
- 特急あさま
- 小諸駅(長野県小諸市)
3.信濃の死
短編集「十津川警部の休日」に収録。下記を参照↓↓
→「十津川警部の休日」
4.ヨコカル11.2キロの殺意
- 特急あさま
- 碓氷峠(群馬県安中市)
- 碓氷橋(群馬県安中市)
- 小諸駅(長野県小諸市)
- 保科温泉(長野県長野市)
- 軽井沢駅(長野県・軽井沢町)
5.スキー列車殺人事件
- スキー列車「あずさ1号」
- 白馬駅(長野県・白馬村)
- 白馬八方尾根スキー場(長野県・白馬村)
- 八方アルペンライン
- 八方駅(長野県・白馬村)
- 兎平駅(長野県・白馬村)
- 名木山ゲレンデ(長野県・白馬村)
登場人物
1.白鳥殺人事件
短編集「野猿殺人事件」に収録。下記を参照↓↓
→「野猿殺人事件」
2.小諸からの甘い殺意
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 亀井公子:
亀井刑事の妻。 - 佐伯:
警視庁初動捜査班の警部。 - 広田勇:
野菜やりんごの直送販売をしていた。長野県小諸市に在住。元市役所職員。新宿中央公園で刺殺されているのが発見される。 - 神谷ユキ子:
広田勇と一緒にりんごを売っていた女。広田勇と同棲していた。現在行方不明。 - 広田里子:
広田勇の母親。 - 広田徹:
広田勇の兄。 - 中山芳樹:
中山企画の社長。世田谷区成城に在住。 - 中山可奈子:
中山芳樹の妻。S信用金庫の理事長の娘。慢性の心臓病を患っている。 - 竹本弘:
四谷三丁目に事務所のある私立探偵。 - 森下:
新宿に事務所のある私立探偵。 - 高田:
亀井家の近所にある団地に住む私立探偵。 - 菊池:
かつて中山芳樹の秘書をしていた男。 - 黒川茂:
32歳。中山芳樹のボディーガード兼運転手。
3.信濃の死
短編集「十津川警部の休日」に収録。下記を参照↓↓
→「十津川警部の休日」
4.ヨコカル11.2キロの殺意
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 清水新一
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 亀井健一:
亀井刑事の息子。 - 亀井公子:
亀井刑事の妻。 - 宮本:
35歳。元プロ野球選手。 - 山本アキ子:
25歳。タレント。本名は桜井かず子。特急あさまの車内で殺されていた。 - 山下:
特急あさまの車掌。 - 原口:
長野県警の刑事。 - 八木:
長野県警の警部。 - 柴田宏:
40歳。東京で不動産業を営む。北軽井沢の別荘で殺されていた。宮本の大学時代の先輩。 - 河西ゆう子:
銀座のクラブのママ。元スチュワーデス。宮本と交際していた。 - 柳沼努:
フリーの芸能レポーター。 - 佐川:
有名芸能レポーター。
5.スキー列車殺人事件
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 牧野由美:
都内のOL。下高井戸に在住。 - 井上かおり:
都内のOL。牧野由美の大学時代の友人。八方尾根スキー場で死体で発見される。 - 相川京子:
都内のOL。牧野由美の大学時代の友人。 - 沢木:
サラリーマン。牧野由美の大学時代の友人。 - 青木:
サラリーマン。牧野由美の大学時代の友人。 - 原田:
大学院生。牧野由美の大学時代の友人。 - 小田けい子:
イラストレーター。 - 八木:
長野県警の警部。 - 大久保:
医師。
印象に残った名言、名表現
(1)上手な嘘のつき方。
「全くの嘘じゃない。われわれが、警察ということで、嘘ばかりでは、信じないだろうと考えたんだな。広田がきたことは認めたが、女については嘘をついた。つまり肝心のことは知らせないといったわけだよ」
(2)父の幸せ。
亀井は、何となく、幸福だった。親子だから当然だが、亀井と、健一の顔は、よく似ている。その親子が、並んで同じ峠の釜めしを食べている図というのは、ちょっと滑稽で、ちょっと、ほほえましい。
(3)刑事の本能。
話を聞いているうちに、亀井は、次第に非番でここにきていることを忘れていった。刑事の本能というか、職業意識というのかが、目をさましてしまったのだ。
感想
本作は、信州・長野を舞台にした短編集である。
「白鳥殺人事件」は、犀川白鳥湖を飛ぶ、美しい白鳥が描かれ、「小諸からの甘い殺意」は、小諸の名物・りんごを売るカップルが登場した。
また、「信濃の死」では、湯けむり漂う野沢温泉が舞台になり、「ヨコカル11.2キロの殺意」では、碓氷峠や保科温泉に、亀井刑事が旅行した。そして、「スキー列車殺人事件」は、国内屈指の人気を誇るスキー場の八方尾根スキー場で、殺人事件が起きた。
いずれも、旅情とトリックにすぐれた作品だった。
この中でも、「小諸からの甘い殺意」が秀逸だった。
無骨で寡黙な男と、気立てがよい美人という美女と野獣カップルが、一生懸命、小諸のりんごを売る姿が、愛嬌と哀愁たっぷりに描かれる。
事件解決のカギとなったのも、小諸のりんごである。このりんごには、無骨男に対する、女の愛情が詰まっていたと、思えるからだ。
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