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十津川警部「長崎 路面電車と坂本龍馬」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

小説

初版発行日 2018年9月10日
発行出版社 祥伝社
スタイル 長編

私の評価 2.1

POINT】
長崎と京都を舞台に、繰り広げられる歴史論争!?
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あらすじ

長崎取材中のライター松本が失踪、代理を命じられた神山は同地に飛んだ。松本の足取りを追った神山は、NAGASAKIクラブという謎の歴史研究グループ五人組に出会う。彼らは、幕末の貿易商グラバーが日本で初めて走らせた蒸気機関車を、英国の植民地化計画の端緒と見た坂本龍馬が破壊したという説を唱えていた。やがてメンバーの一人の死体が京都の疎水で発見され、協力を依頼された警視庁の十津川は捜査を開始。事件の背後に明治一五〇年を期した歴史論争と、黒い野望が渦巻いていることを掴むが…。

小説の目次

  1. 長崎にて
  2. 野望と挫折
  3. 京都へ
  4. NAGASAKIクラブ
  5. 事件の広がり
  6. 戦いのナガサキ
  7. 栄光と挫折と

冒頭の文

社長の佐々木明が、神山たち社員を見回して、「松本君から、君たちに連絡がないか?」と、きいた。

小説に登場した舞台

  • 長崎空港(長崎県大村市)
  • 長崎駅(長崎県長崎市)
  • グラバー園(長崎県長崎市)
  • 風頭公園展望台(長崎県長崎市)
  • 丸山公園(長崎県長崎市)
  • 眼鏡橋(長崎県長崎市)
  • 史跡料亭 花月(長崎県長崎市)
  • 長崎大学(長崎県長崎市)
  • 新大阪駅(大阪府大阪市淀川区)
  • 京都駅(京都府京都市下京区)
  • 京都霊山護國神社(京都府京都市東山区)
  • 霊山歴史館(京都府京都市東山区)

登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。

警察関係者

  • 竹田:
    長崎県警の刑事。
  • 伊地知:
    長崎県警捜査一課の警部。
  • 春日:
    京都府警の警部。
  • 田中:
    京都府警捜査一課長。
  • 田島:
    中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。

NAGASAKIクラブ

  • 木下功:
    NAGASAKIクラブのメンバー。文部科学省の係長。副業作家。ペンネームは高橋誠。国分寺のマンションに在住。銀閣寺近くの疎水で死体となって発見された。
  • 中島秀文:
    NAGASAKIクラブのメンバー。
  • 岩田天明:
    NAGASAKIクラブのメンバー。
  • 北村愛:
    NAGASAKIクラブのメンバー。文部科学省の職員。北多村勇という芸名で女優もしている。
  • 松本信也:
    32歳。調査会社「リサーチジャパン」の元社員。NAGASAKIクラブのメンバー。長崎に取材しに行ったが、行方不明になる。

事件関係者

  • 松本みどり:
    松本信也の妻。
  • 神山明:
    32歳。調査会社「リサーチジャパン」の社員。松本信也の代わりに長崎を取材することになった。
  • 大日向武:
    「新生日本を創る会」の代表。
  • 金田一輝:
    代議士。文部科学大臣。

その他の登場人物

  • 佐々木明:
    調査会社「リサーチジャパン」の社長。
  • 小宮山:
    長崎大学の准教授。日本の歴史が専門。
  • 戸田:
    長崎テレビの広報担当。
  • 平松:
    霊山歴史館の館長。
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感想

本作は、歴史論争と政治闘争がまねいた殺人事件であった。明治維新前後の坂本龍馬や土佐藩、京都などの歴史を探っていく物語であった。

こうした歴史が事件の根にあるのは、2010年代以降の十津川警部シリーズの大きな特徴であり、この点については、何も言うことはない。もちろん、個人的には好きではないが。

ただ、本作で気になった点が1つ。

物語の最終盤で十津川警部が犯人に話したことばである↓↓

「どんな殺し方をしたのかは、わかりません。しかし、殺してしまったんですよ」

つまり、よくわからんけど、殺したんだろう。と伝えているということである。

これまでの十津川警部シリーズでは、どんな殺し方をしたのか?その詳細まで捜査をして明らかにしていた。が、本作については、そうした細部まで描かれていないのである。

こうしたところの細部にこそ、ミステリーのリアリティとか緊張感が現れると思うのだが、こういう点をざっくばらんにしてしまうから、曖昧で盛り上がりのない結末になってしまうのではないかと個人的には思う。

下の先生の言葉にあるように、本作を作った意図は、ミステリーではなく、歴史論争や歴史認識を伝えたいということなのだろうから、ミステリーの部分は二の次なのかもしれない。であるならば、十津川警部シリーズとして、この作品を書く必要がないのではないか…というのが私の思いである。

最後に、西村京太郎先生のことばを紹介しておこう。

今年は明治維新一五〇年だという声がある一方、いや戊辰戦争一五〇年だという声もあって、久しぶりに、歴史論争が起きるのではないか、それなら、長崎がマークされるだろうと期待していたのに、なぜか、くすぶっただけで、燃あがらない。総理大臣が長州出身だから、勝ち組歴史を変えたくないのか。日本人が歴史論争や歴史認識が苦手なのか。仕方がないので、勝手にいじってみたのだが、上手くいったかどうか、面白いと思っていただければ、幸いである。

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