初版発行日 2012年1月25日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 長編
ラッシュの高田馬場駅ホームで女性刺殺ー犯人はストーカーか?それとも冤罪か?十津川の部下・西本刑事の友人が窮地に!
あらすじ
通勤客でごったがえす朝の西武新宿線高田馬場駅のホームで、若い女性が刺殺された。周囲の状況からストーカーが犯人とされ、警視庁捜査一課の西本刑事の友人が逮捕される。被害者は、公益法人「交通事故調査会」の職員で、昨秋に起きた北陸本線の特急サンダーバード脱線転覆事故を調べていた。十津川警部の捜査と並行して、友人の無罪を信じた西本は独自に動き出す!
小説の目次
- 高田馬場駅ホーム
- 死者の足跡
- ダイイング・メッセージ
- 推理の行方
- 最後の抗議
- 告発とその結果
- すべての終章
小説に登場した舞台
- 所沢駅(埼玉県所沢市)
- 特急サンダーバード
- 和倉温泉(石川県七尾市)
- 金沢駅(石川県金沢市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 小川裕介:
西本刑事の大学時代の同級生で友人。28歳。アスカ出版に勤めている。高田馬場駅の刺殺事件で逮捕される。 - 田代美由紀:
25歳。公益法人「交通事故調査会」の職員。高田馬場駅のホームで刺殺される。 - 五十嵐清志:
公益法人「交通事故調査会」の理事長。65歳。元国交省の事務次官。 - 川本充:
公益法人「交通事故調査会」の第三課長。 - 北川浩:
「北陸本線脱線転覆事故調査審議会」の委員長。S大学で交通工学を教えている。 - さえこ:
和倉温泉のコンパニオン。コンパニオン会社「サクラバンケット」に所属する。 - 奥田:
サクラバンケットの社長。 - 後藤健一郎:
60歳。サラリーマン。事件当日、現場にいた乗客。 - 山内昭:
32歳。サラリーマン。事件当日、現場にいた乗客。 - 小谷伸吾:
28歳。サラリーマン。事件当日、現場にいた乗客。 - 北川亜矢:
25歳。OL。事件当日、現場にいた乗客。 - 佐伯涼子:
22歳。OL。事件当日、現場にいた乗客。 - 渡辺信也:
高田馬場駅の駅員。事件当日、現場にいた。 - 小田伸一:
35歳。工業デザイナー。特急サンダーバード脱線事故で死亡する。 - 田代博司:
田代美由紀の父親。T大学の教授。「北陸本線脱線転覆事故調査審議会」の委員。 - 野本雅美:
「交通事故調査会」の調査員。田代美由紀の短大の後輩。 - 小久保力:
トラック運転手。
その他の登場人物
- 荒木:
アスカ出版の社長。 - 桜井正道:
公益法人「交通事故調査会」の広報部長。 - 崎田:
小田デザイン工房のチーフデザイナー。 - 橋本:
私立探偵。西本刑事の知り合い。 - 田島:
中央新聞の記者。十津川警部の同級生。
印象に残った名言、名表現
■どんなに正しくても、何の武器も持たない一人の個人が組織に勝てないという十津川警部の発言。十津川の経験から得た教訓。彼自身の歯がゆさも含まれている感じがする。
「一人の個人が、何の証拠もなく、ただの、正義感から大きな組織に、歯向かっても、自ずと結果は、見えているんだ。一人では、どうやっても、勝てっこない」
総評
本作は、十津川警部シリーズでは珍しい私鉄がタイトルになった作品である。
十津川警部ファンには周知の事実であるが、十津川警部シリーズはJR(旧国鉄)を舞台にすることが多い。もちろん、物語の舞台の関連で私鉄が登場することはあるが、今回のように、私鉄がメインになることは少ない。ある意味、希少価値の高い作品である。
さて、本作は西本刑事の友人が容疑者になったことにより、西本刑事が事実上の主人公になって物語が進んでいく。西武新宿線で発生した刺殺事件を捜査することになるのだが、その根っことなるのは、特急サンダーバードで発生した脱線事故であることに行き着く。
大きな謎は次の3つ。
- 田代美由紀が死ぬ直前にいった「トラ」は何を意味するのか?
- なぜ田代美由紀は脱線事故の現場でない「和倉温泉」に行ったのか?
- なぜ小川裕介は田代美由紀を追い回していたのか?
この3つの謎を解明することが、事件の全容解明につながっていく。
十津川班の中でも、どちらかといえば、”地味な存在”だった西本刑事が、今回は大活躍するのだ。彼の冷静で、友達思いな一面が大きくクローズアップされる。この作品を読めば、西本刑事という存在を、人間を、より深く理解することができる。
西本刑事の人間模様を知ることで、十津川警部シリーズをより深く楽しめるはずである。
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