初版発行日 1988年3月30日
発行出版社 光文社
スタイル 短編集
私の評価
何を目撃したのか?山手線を取材した記者が殺され、写真を奪われた!旅情と謎とを見事に融合した、”トラベル・ミステリー”の秀作を集めた傑作集!
あらすじ
1.山手線五・八キロの証言
旅行雑誌の編集者・香月修は、帰宅途中、何者かに襲われ、殴殺された。物盗りでもなく、人に恨まれることもない。彼は山手線一周の取材に携わっていただけだ。ところが、香月が車窓から撮影した写真が、死後、奪われてしまった!香月はいったい何を目撃したのか?ここに動機を求めて、十津川警部は山手線の乗客の中から目撃者捜しを始めたが……。一方、取材の話を聞いたホステス・北村友美も失踪、多摩川で死体となって発見された。遺された大粒のルビーの指輪に秘密が!?
2.裏磐梯殺人ルート
短編集「みちのく事件簿」に収録。下記を参照↓↓
→「みちのく事件簿」
3.鎮魂の表示板が走った
銀座にある毛皮店の社長・片平要の息子が誘拐されたという連絡が片平の妻・ゆう子から入る。十津川警部たちは片平の家に駆けつけ、犯人からの連絡を待っていたが、ゆう子の甥・原田昭夫から電話が入り、片平の息子と一緒にいるという。誘拐事件は勘違いということで終了した。一方、山口県の徳山駅付近で東京に住む風俗嬢・井上ルミ子が何者かに殺害される。死んだルミ子の周囲を調査した十津川は、ルミ子の関係者として原田昭夫が浮上するー。
小説に登場した舞台
1.山手線五・八キロの証言
- 千歳船橋駅(東京都世田谷区)
- 上野駅(東京都台東区)
- 郡山駅(福島県郡山市)
- 快速「ばんだい」
- 会津若松駅(福島県会津若松市)
- 鶴ヶ城(福島県会津若松市)
- 満田屋(福島県会津若松市)
- 東山温泉(福島県会津若松市)
- 巣鴨駅(東京都豊島区)
- 西日暮里駅(東京都荒川区)
2.裏磐梯殺人ルート
短編集「みちのく事件簿」に収録。下記を参照↓↓
→「みちのく事件簿」
3.鎮魂の表示板が走った
- 和泉多摩川(東京都狛江市)
- 広島空港(広島県三原市)
- 小郡駅(現・新山口駅)(山口県山口市)
登場人物
1.山手線五・八キロの証言
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 清水新一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 竹田:
警視庁の捜査本部長。 - 田中:
警視庁鑑識課の刑事。 - 香月修:
28歳。旅行雑誌「旅の話」の編集者。千歳船橋のマンションに在住。自宅近くで何者かに殴られて死亡する。 - 大久保:
45歳。旅行雑誌「旅の話」の編集長。 - 寺田:
旅行雑誌「旅の話」の編集者。 - 島崎:
旅行雑誌「旅の話」の編集者。 - 中島:
旅行雑誌「旅の話」の編集者。 - 中川肇:
トラベルライター。 - 佐々木みどり:
24歳。M銀行神田支店に勤務。香月修の婚約者。 - 北村友美:
28歳。歌舞伎町のクラブ「クレパス」のホステス。中野のマンションに在住。京王多摩川近くの川で死体となって発見された。 - 水田マキ:
歌舞伎町のクラブ「クレパス」のホステス。 - 神林冴子:
歌舞伎町のクラブ「クレパス」のママ。 - 大川悠:
便利屋。杉並区下高井戸のマンションに住んでいた。 - 水野寛:
水野興業の社長。 - 青木ゆみ子:
49歳。巣鴨に在住の主婦。 - 田中ふみ:
行商。 - 小池弘:
30歳。小池産業の社長。田園調布に在住。 - 小池みゆみ:
小池弘の妻。 - 小池ユキ:
3歳。小池弘&まゆみの娘。 - 今西昭:
30歳。小池弘の大学時代の同級生。 - 山内:
今西昭の大学時代の同級生。四谷のマンションに在住。 - 山本ひろみ:
OL。北千住のマンションに在住。
2.裏磐梯殺人ルート
短編集「みちのく事件簿」に収録。下記を参照↓↓
→「みちのく事件簿」
3.鎮魂の表示板が走った
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 清水新一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 山下:
山口県警の警部。 - 片平要:
38歳。銀座にある毛皮店の社長。成城の豪邸に在住。 - 片平ゆう子:
片平要の妻。主婦。 - 片平久志:
片平要&ゆう子の息子。小学校1年生。 - 原田昭夫:
29歳。片平ゆう子の甥。フリーター。 - 井上ルミ子:
28歳。風俗嬢。世田谷区上馬のマンションに在住。徳山駅近くで何者かに殺害された。 - 川村:
54歳。小郡駅の駅長。
感想
本作は、力作3作を収録した短編集である。
この中で一つ推すとすれば、表題作となった「山手線五・八キロの証言」だろう。一つの事件の被害者が別の事件の加害者というミステリーらしい作品であり、120ページ弱の大ボリュームかつ短編とは思えないほどの登場人物の多さ、それに見合う力作であった。
一部、福島県が登場するものの、メイン舞台は東京都内であり、山手線がテーマになっているので、東京在住の方にとっては親しみやすい作品でもあると思う。
最後に、西村京太郎先生のことばを紹介しておこう。
東京に生まれ、東京に育った私にとって、環状線の山手線は、特別に親しみの持てる電車だった。子供のときは、いつまで乗っていても叱られないメリーゴーランドみたいなものだったし、学生時代や就職してからは、勉強にあきたり、仕事が面白くないときに、乗っていたことがある。
あのとき、ぼんやりと車窓の景色を眺め続けたり、乗り降りする乗客の顔を観察したりしていたのだが、この小説を書くのに役立ったのだと思っている。私と一緒に、皆さんももう一度、山手線に乗ってください。
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