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「羽越本線 北の追跡者」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

羽越本線 北の追跡者小説

初版発行日 2007年1月31日
発行出版社 徳間書店
スタイル 長編

私の評価 3.8

POINT】
致道館の教えと人の弱さを描いたミステリー。東京-山形、連続殺人の黒幕を追う!
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あらすじ

東京のホテルで宿泊客の男が殺され、彼をホテルに紹介した大学教授も行方不明になった。胃からエチゼンクラゲの肉片が発見され、十津川と亀井は、クラゲの研究所で有名な山形県鶴岡の加茂水族館を訪ねる。館長の後藤に不審を抱く二人……。一方、被害者が公益法人<山形の文化を守る会>の職員・岩田博司と判明。事件の鍵は山形に!?

小説の目次

  1. エチゼンクラゲ
  2. 鶴岡・至道館
  3. いなほ五号
  4. 芋煮会の後
  5. 射撃
  6. 集結
  7. 作並で決着

冒頭の文

東京駅に近いホテルKの支配人、井上に、電話が入った。

小説に登場した舞台

  • 鶴岡市立加茂水族館(山形県鶴岡市)
  • 羽越本線いなほ五号
  • 新潟駅(新潟県新潟市)
  • 鶴岡駅(山形県鶴岡市)
  • 山形駅(山形県山形市)
  • 山形市役所(山形県山形市)
  • 神楽坂(東京都新宿区)
  • 作並温泉(宮城県仙台市青葉区)
  • 作並駅(宮城県仙台市青葉区)
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登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三上本部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

山形財団

  • 広池幸三郎:
    山形財団の理事長。山形時報の社長。元鶴岡市役所の管理部長。
  • 吉田:
    山形財団の副理事長。
  • 三木毅:
    35歳。広池幸三郎の秘書。
  • 岩田博司:
    山形財団の職員。ホテルKに宿泊していたが、有明コロシアム脇に停めてあった車のリアシートで殺されていた。
  • 石田覚:
    山形財団の広報担当。
  • 中野:
    山形財団の職員。
  • 山崎義博:
    山形財団の職員。現在は行方不明。
  • 木村武:
    山形財団の職員。

事件関係者

  • 斉田守:
    60歳。千駄ヶ谷にある国立大学の大学教授。
  • 後藤:
    山形県鶴岡の加茂水族館の館長。
  • 藤田由紀子:
    女子大生。山崎義博の姪。
  • 井上弥生:
    山形市内でコンパニオン会社「バンケット」を経営しており、広池幸三郎の恋人だった。10年前、作並温泉で何者かに殺害される。

その他の登場人物

  • 井上:
    東京駅近くにあるホテルKの支配人。
  • 青木:
    新宿のホテルSの支配人。井上の友人。
  • 立花:
    K大学の教授。魚類の研究をしている。
  • 阿部:
    山形県警の警部。
  • 香取美由紀:
    斉田教授の市民講座を主催している主催者。
  • 野中:
    山形県警の警部。
  • 竹原:
    山形市内にある法律事務所の所長。弁護士。
  • 鈴木:
    大都タクシーの運転手。

印象に残った名言、名表現

(1)江戸時代、庄内藩の致道館で教えていた荻生徂徠の学問。

「簡単にいえば、学問と政治の一致です。形式主義ではなくて、本当の学問を政治に生かす。だから、恥というものは、どういうものか?そして、武士は、どう生きなければならないか?それを教えたのが、致道館なんです。さらにいえば、生徒の天性を大事にする学問です」

(2)山形名物、芋煮会。

山形の芋煮は、もともとが、家庭料理で、サトイモ、牛肉、ゴボウ、ネギ、シイタケなどを、鍋に入れて、味噌で、味つけしたものである。もともとは、秋の行事だが、最近は、一年を通して、観光客目当てに、公園や河原で芋煮会を行い、それを、味わってもらう、一つのイベントに、なっている。

感想

人間は二面性のある生き物である。

”悪をくじき、弱気を助けるべき”という強い精神と、”長いものには巻かれろ”という弱い精神である。それぞれの精神の一方だけ持っている人間は稀で、強い精神と弱い精神が同居している人間がほとんどではないだろうか。

本作は、こんな人間の二面性を描いた作品である。

山形県を舞台に、山形県の教えである荻生徂徠の精神をもった人々が、時には悪に立ち向かい、時には悪に懐柔されてしまう、そんな二面性をもった人たちの人間ドラマが描かれているのである。

それは、本作で十津川警部がいった次の言葉に集約されている。

「相手から手酷い仕打ちを、受けると、半分の人間は、それに、反発して、戦おうとするんでしょうが、あとの半分は、おびえてしまって、相手のいいなりになってしまう。人間というのは、そうした強さと弱さの両面を持っているものですからね。」

最終章で、すべての人間が作並温泉に集結する。この時の緊張感は、まさにサスペンス。そして、人の弱さを目の当たりにするだろう。

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