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「十津川警部 白浜へ飛ぶ」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

十津川警部 白浜へ飛ぶ小説

初版発行日 1998年7月8日
発行出版社 講談社
スタイル 短編集

私の評価 3.5

POINT】
十津川警部の名推理が光る!傑作ミステリー4編。
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あらすじ

1.処刑の日

都立N病院の理髪店で髪を切っていた入院患者、広田恵司が、理髪中に変死した。広田恵司の髪を切っていたはずの理髪師は、喫煙室で死体となって発見される。何者かが理髪師を殺し、理髪師になりすまして、広田恵司を殺害したと踏んだ十津川は、捜査を開始する。

2.絵の中の殺人

十津川は、新宿Nデパートで、「死体のある風景」という風景画を買った。その絵には、桜の木の下に女の死体が横たわっている風景が描かれていた。しかも、絵を描いた画家は、5月に交通事故死していた。この絵は実際の殺人事件の現場を描いたのではないか?と思った十津川は、捜査を開始したが、意外な真相が明らかになる……。

3.十津川警部の苦悩

警視庁捜査一課のベテラン刑事・長谷川要が警視庁内で自殺した。長谷川の妻に宛てた遺書には、「恨むならTさんを恨んでくれ」と書いてあった。Tさんを自分のことだと察した十津川は、苦悩する。そんな十津川を不憫におもった亀井は、西本にある指示を出す。

4.十津川警部 白浜へ飛ぶ

東京・阿佐ヶ谷のマンションでエリート商社マンが殺害され、恋人のスチュワーデスも南紀白浜空港のトイレで死体となって発見された。そして彼女のマンションには「死ね!」という赤い文字が。犯人は彼女につきまとっていたストーカーなのか。十津川警部がたどりつく結論は?

小説に登場した舞台

1.処刑の日

  • 原宿(東京都渋谷区)

2.絵の中の殺人

  • 東京都調布市
  • 東京都青梅市

3.十津川警部の苦悩

  • 浅草(東京都台東区)
  • 羽田空港(東京都大田区)

4.十津川警部 白浜へ飛ぶ

  • 羽田空港(東京都大田区)
  • 南紀白浜空港(和歌山県・白浜町)
  • 南紀白浜温泉(和歌山県・白浜町)
  • 三段壁洞窟(和歌山県・白浜町)
  • 椿温泉(和歌山県・白浜町)
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登場人物

1.処刑の日

  • 十津川警部:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 広田恵司:
    54歳。広田工業の社長。脳血栓で都立N病院に入院中。N病院の理髪店で髪を切っている最中に、変死する。
  • 広田ふみ子:
    広田恵司の妻。
  • 片桐あや子:
    45歳。都立N病院の理髪師。N病院の喫煙室で死体となって発見された。
  • 原田均:
    50歳。広田工業の副社長。広田恵司の異母弟。
  • 坂西修三:
    49歳。広田工業の販売部長。広田工業の重役の一人。
  • 坂西亜木子:
    42歳。坂西修三の妻。
  • 清水明:
    53歳。広田工業の管理部長。広田工業の重役の一人。
  • 木野本みゆき:
    40歳。清水明の不倫相手。原宿でブランド物の輸入販売店を営む。
  • 柳沼真一:
    広田工業の重役の一人。
  • 勝田進:
    広田工業の重役の一人。

2.絵の中の殺人

  • 十津川警部:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 白石清:
    42歳。サラリーマン。「死体のある風景」を書いた週末画家。調布市在住。今年の5月に交通事故で死亡。
  • 白石悠子:
    白石清の妻。
  • 十津川直子:
    十津川警部の妻。
  • 浅井:
    調布警察署の刑事課長。
  • 長谷川哲夫:
    31歳。運送業の社長。白石清をトラックで轢いてしまった男。現在、交通刑務所に服役中。
  • 沖直美:
    25歳。フリーター。長谷川哲夫の元恋人。去年の4月から行方不明。
  • 田島:
    医師。

3.十津川警部の苦悩

  • 十津川警部:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 本多時孝:
    警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
  • 三上本部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。
  • 長谷川要:
    58歳。警視庁捜査一課のベテラン刑事。警視庁の仮眠室で自殺する。
  • 長谷川章子:
    長谷川要の妻。
  • 上条豊:
    53歳。浅草の仲見世にある和菓子店「菊花」に勤務する職人。自宅マンションで死体となって発見された。
  • 中田:
    上条豊が勤めていた和菓子店「菊花」の店主。
  • 井上克己:
    42歳。上条豊が勤めていた和菓子店「菊花」の職人。稲荷町のマンションに在住。
  • 丹羽三郎:
    40歳。上条豊が勤めていた和菓子店「菊花」の職人。
  • 細川みずえ:
    29歳。上野のクラブのホステス。丹羽三郎の恋人。
  • 木下秀:
    35歳。上条豊が勤めていた和菓子店「菊花」の職人。
  • 楠幸枝:
    30歳。上野の旅館の仲居。木下秀の恋人。
  • 木田優:
    35歳。上条豊が勤めていた和菓子店「菊花」の職人。
  • 井之川誠:
    28歳。上条豊が勤めていた和菓子店「菊花」の職人。千束で両親と暮らす。
  • 広野:
    警視庁の警部。長谷川要の同期。
  • 武田:
    Mローンの副社長。元警視正。長谷川要の同郷。
  • 藤沢徹:
    Mローンの社長。
  • 多田秀男:
    Mローンの共同経営者。2年半前、何者かに殺された。
  • 仁志田伍郎:
    19歳。多田秀男殺害で逮捕された男。現在はニシダオートを経営している。

4.十津川警部 白浜へ飛ぶ

  • 十津川警部:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三上本部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。
  • 小林努:
    N商事の社員。阿佐ヶ谷の自宅マンションで何者かに毒をもられて死亡する。
  • 小笠原マリ:
    JASのCA。小林努の恋人。南紀白浜空港のトイレで死体となって発見される。
  • 木村:
    和歌山県警の警部。
  • 井上:
    羽田空港JAS事務所の所長。
  • 加藤知美:
    JASのCA。
  • 朝井みよ子:
    南紀白浜空港で女性トイレから駆け出してくる男を目撃した女性。
  • 堀内真紀子:
    30歳。六本木のクラブのホステス。小林努と交際していた。現在、行方不明。
  • 太田和也:
    26歳。フリーター。小笠原マリのストーカー。

印象に残った名言、名表現

(1)十津川は、三上部長のことを、ある意味尊敬している。

十津川は、三上部長が、嫌いではない。ある意味では、尊敬していた。彼は、しばしば、十津川の捜査方針に反対するが、完全に反対したことは、一度もない。どこかで、妥協してくるのだ。

(2)小さな嫌悪の積み重ねが、大きな憎しみを生む。

「よくいうじゃないか。人間対人間というのは、一度、嫌になってくると、全てが嫌になってくるものだと」

「どんどん、彼の気持ちの中で、苦痛や、それから嫌悪が、エスカレートしていくのに、私が、気がつかなっただけだと思う」

(3)嫌煙の時代。

「そうです。特権です。今、禁煙箇所が、やたらに増えていて、煙草を吸う人間は、大変に、肩身の狭い思いをしています」

(4)未来のある子供や若者が殺されるのは痛ましい。

十津川は、子供が殺される事件に出会うと、悲しくなる。が、若い男女が、結婚間際に殺されるのも、胸が痛む。被害者たちの輝やかしい未来が、突然、断ち切られてしまうことだからである。

感想

本作は、表題となった短編「十津川警部 白浜へ飛ぶ」ほか、4作品の短編集である。珍しく、「十津川警部 白浜へ飛ぶ」以外は、東京が舞台になっている。そのため、旅情を感じさせる作品は、「十津川警部 白浜へ飛ぶ」だけである。

そういう意味では、十津川警部シリーズらしくない、短編集といってもいいだろう。

この4作品の中で、個人的に、最も秀逸だと思ったのは、「十津川警部の苦悩」。この短編は、自殺したベテラン刑事の原因は、十津川警部にあるのではないか?いう疑惑が生じ、十津川警部が思い悩む姿が幾度となく、登場する。

こんなにも、弱気で、センチメンタルな十津川警部は、あまり、見たことがない。

ハートは熱く、頭はクールな十津川警部。いつだってフェアに物事をみる、頼れる刑事。だが、彼も刑事である前にひとりの人間なのだ。

そんな、十津川警部の人間らしさを、再認識した作品であった。

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