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「門司・下関 逃亡海峡」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

門司・下関 逃亡海峡小説

初版発行日 2007年12月31日
発行出版社 徳間書店
スタイル 長編

私の評価 4.1

POINT】
大学講師夫人が謎の焼死を遂げた。夫は葬儀中に愛人の韓国人留学生と失踪。彼が妻を殺したのか!?関門海峡の荒波に翻弄される逃避行の結末は!?十津川&亀井、執念の追跡!
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あらすじ

S大学の講師・篠塚昭夫しのづかあきおは、韓国人の留学生アン・ミカとの浮気を妻の恵子けいこに知られてしまった。無理心中を図ろうと部屋に火を放った恵子は焼死。解剖の結果、睡眠薬が検出され、警視庁捜査一課の十津川警部は恵子の死因に疑問を抱く。事情聴取を受けた篠塚は、自分が疑われていることを知り、ミカと一緒に韓国への逃亡を計画する。葬儀の途中で姿を消した篠塚と、東京駅で合流したミカの行方を追う十津川班。だが二人が乗ったはずの新幹線には姿がなかった。神戸からフェリーで門司へ向かったのだ。

小説の目次

  1. 逃亡第一日
  2. 関門の海
  3. よさこいアリラン
  4. 荒れる海
  5. プサン遠望えんぼう
  6. 出航
  7. 愛の傷痕きずあと

冒頭の文

篠塚昭夫は、妻、恵子の嫉妬が、これほど強いものだとは、知らなかった。

小説に登場した舞台

  • 新神戸駅(兵庫県神戸市中央区)
  • 阪九フェリー神戸乗り場(兵庫県神戸市東灘区)
  • 阪九フェリーせっつ号
  • 福岡空港(福岡県福岡市博多区)
  • 小倉駅(福岡県北九州市小倉北区)
  • 博多駅(福岡県福岡市博多区)
  • 博多港(福岡県福岡市博多区)
  • 新門司港(福岡県北九州市門司区)
  • 門司港駅(福岡県北九州市門司区)
  • 関門トンネル(福岡県北九州市門司区&山口県下関市)
  • 下関春帆楼本店(山口県下関市)
  • 下関港(山口県下関市)
  • 対馬(長崎県対馬市)
  • 厳原港(長崎県対馬市)
  • 丸屋ホテル(長崎県対馬市)
  • 韓国展望所(長崎県対馬市)
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登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川警部:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三上本部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

事件関係者

  • 篠塚昭夫:
    38歳。S大学の講師。妻の焼死自殺の容疑が自分に向けられたと思い、逃亡する。
  • 篠塚恵子:
    篠塚昭夫の妻。夫の不倫に激怒し、部屋に灯油を撒いて、火をつけて、焼死する。
  • アン・ミカ:
    28歳。韓国人留学生。篠塚昭夫の不倫相手。
  • 後藤要:
    篠塚恵子の父親。神奈川県にある大学の学長。成城に在住。
  • 後藤晶子:
    篠塚恵子の母親。N製薬の社長の娘。夫と成城に在住。
  • シュ・レイカ:
    アン・ミカがソウルの大学に通っていた頃の同級生。
  • 前田紀男:
    弁護士。篠塚昭夫の大学時代の友人。
  • 河村陽子:
    前田紀男の助手。
  • リ・ケイフク:
    対馬の韓国資本のホテルのオーナー。

その他の登場人物

  • 李:
    韓国人会館の受付。
  • 木島:
    長崎県警の警部。
  • 友田:
    35歳。弁護士。

印象に残った名言、名表現

(1)門司の町。

二人は、朝食を済ませると、ブラブラと、海峡沿いの道を、歩くことにした。

春の陽光が、海面に降り注いでいる。風もあまりなくて、ボンヤリしていると、眠くなりそうな陽気だった。

(2)下関の有名旅館、春帆楼。

観光案内にも出ている、古い旅館で、明治二十八年、日清戦争の後の、講和条約が結ばれた旅館としても、有名である。今も、その講和条約が結ばれた部屋が、当時のまま、残されていた。

(3)日本の国防上、重要だった対馬。

「景色の歴史の島なんです。対馬は国境の島といいましたが、大和朝廷の頃は、もっと切実な、大陸からの敵に対して、防波堤の役目を、果たしていたんですよ」

感想

手に汗握る逃亡劇、息詰まる心理戦、そして、三角関係の愛憎。スペクタクルなミステリーを、西村京太郎先生の、軽快なタッチで描かれる、圧倒的な読みやすさ。すべてのバランスが良い、作品であった。

東京から新幹線に乗りフェリーで逃亡、お祭りへの潜入、韓国人会館からの逃亡、対馬への漂流。アン・ミカの同胞である、韓国人の助けを借りながら、十津川たちから逃げていく姿は、痛快だった。

逃げる側の篠塚と、追う側の十津川警部の視点が交互に切り替わり、互いの心理を比べられるのも、面白い。

そもそも、今回の事件は、篠塚昭夫が妻を殺した容疑で、十津川警部たちが追跡するのだが、この事件は冤罪であることが、最初からわかっている。

しかし、状況証拠はすべて、篠塚昭夫が犯人であることを示している。だから、篠塚は、逃亡するしかなかったのだ。

そして、この二人の逃亡劇は、どんな結末を迎えるのか?篠塚は最後に何を思い、何をするのか?十津川警部は、どんな結論を下すのか?この続きは、本作を読んでもらいたい。

ちなみに、冤罪容疑者の逃亡劇を描いた作品として、2006年刊行の「北への逃亡者」がある。こちらの作品も、傑作である。

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