初版発行日 1994年2月5日
発行出版社 講談社
スタイル 長編
私の評価
総理大臣の私設秘書だった男の周辺で起きる連続殺人!捜査に乗り出した十津川に、警察上層部からの圧力が!!悪徳政治屋の罠に、十津川、万策尽きるか!?
あらすじ
長野県の諏訪湖湖畔に隠棲し、作家だと自称する男の周辺で連続殺人が発生。その周辺を探っていた探偵らしき男性が殺害され、さらに、男に関係していた人物が、次々に殺されていった。解明に乗り出した十津川警部だったが、警視庁上層部は捜査の中止を命令。単独、捜査を続行した十津川に最大の危機が迫る!
小説の目次
- 帰京
- ホステス
- 不安
- ある男の正体
- 安曇野
- 振込先
- 動き出す
- 最後の闘い
冒頭の文
諏訪湖の周辺に、バブル全盛の頃、競うように、いくつものリゾートマンションが、建てられた。
小説に登場した舞台
- 諏訪湖(長野県諏訪市)
- 上諏訪駅(長野県諏訪市)
- 松本(長野県松本市)
- 安曇野(長野県安曇野市)
- 大王わさび農場(長野県安曇野市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
J・I・C
- 山下俊:
自称作家。諏訪湖のリゾートマンションで暮らす。新橋でJICという調査機関を立ち上げ、望月元首相の個人秘書だったと噂されている男。 - 金子祐介:
調査機関J・I・Cのメンバー。山下俊の部下。 - 堀井則夫:
調査機関J・I・Cのメンバー。山下俊の部下。 - 村田知子:
調査機関J・I・Cのメンバー。山下俊の部下。 - 戸田孝太郎:
調査機関J・I・Cのメンバー。山下俊の部下。 - 塚本隆:
調査機関J・I・Cのメンバー。山下俊の部下。 - 木下徹:
調査機関J・I・Cのメンバー。山下俊の部下。 - 高田秀夫:
52歳。倒産した高田興産の元社長。小久保清子を殺したと自首してきた男。自首してすぐに病死する。調査機関J・I・Cのメンバー。山下俊の部下。
事件関係者
- 林田明:
35歳。私立探偵。東京都世田谷区在住。諏訪湖から水死体となって発見される。 - 小久保清子:
28歳。銀座のクラブ「葵」のホステス。豊島園近くの駐車場で焼死体となって発見される。 - 山野辺夏子:
銀座のクラブ「葵」のママ。かつて、若手の代議士・柳原次男の秘書をしていた。 - 平田信介:
70歳。代議士。保守党の重鎮。山野辺夏子と関係があった。 - 田口:
中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。 - 望月:
代議士。保守党の有力者で元総理大臣。 - 長友憲一郎:
保守党の代議士。作並温泉のホテルSで毒殺される。 - 森田加代:
36歳。赤坂のクラブ「フレンド」のママ。新橋の元芸者。作並温泉のホテルSで毒殺される。 - 長友清:
長友憲一郎の息子。長友銀行世田谷支店の支店長。 - 古川克己:
45歳。代議士。長友清と同じグループに所属。 - 塩崎是成:
P製薬社長。 - 飯田秀夫:
56歳。P製薬の重役。突然、辞職する。 - 森川健:
35歳。塩崎是成の秘書。
その他の登場人物
- 石野:
レイクサイド・諏訪の管理人。 - 石野美加子:
石野の娘。松本の大学に通う女子大生。 - 多田:
長野県警の警部。 - 広沢恭一郎:
中央新聞の顧問。 - 佐々木仁:
代議士。保守党の党首。 - 井原:
宮城県警の警部。 - 小杉:
長友家のお抱え運転手。 - 十津川直子:
十津川警部の妻。
印象に残った名言、名表現
(1)今回の事件は、厄介になりそうだ。
何か、得体の知れぬ不安を、十津川は、感じていた。
(2)石橋の上を叩いて渡る人物も、組織には必要。
三上部長が、いなければ、検挙率は、あがっているかも知れないが、若い刑事が、暴走して、誤認逮捕も、増えていたに違いないと思うようになったのである。
感想
本作は、政治の世界のダーティな部分が、描かれた。
政治の世界は、魑魅魍魎が跋扈する世界と言われているが、本作を読むと、その恐ろしさがわかる。ここでは、金、女性問題、スキャンダル、強請り、脅迫といった言葉が飛びかい、謀略の限りをつくし、裏で暗躍する人物たちが登場する。
政治家といえば政策である。
だが、実際には、政策云々より、利害関係や人間関係、利権、野心、金といった要素で、この世界が動いているということを、痛感する。
ただし、登場人物が多く、人間関係も複雑なので、読みやすい作品ではない。
最終章、激しい爆撃と銃撃シーンは、アクション映画さながらの、緊張感があった。
最後に、本作刊行にあたり発表された、西村京太郎先生のことばを紹介しよう。
私は、旅行に出て、そこで、人々に会うと、さまざまな想像をしてしまう。一見、小さな旅館の主人だが、本当は、大強盗団のリーダーではないのか。もちろん、妄想だが、それだけ、旅先で、ふと出会った人たちは、謎に満ちて見えるということである。この作品は、そうした妄想の所産である。人間は、他人の人生を生きることは出来ない。それは、私には、不満であると同時に、楽しくもある。
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