初版発行日 1992年1月20日
発行出版社 新潮社
スタイル 長編
私の評価
殺人が予告された列車は北海の闇の中を疾駆する。非番の中、遭遇した列車内の連続殺人事件。亀井もいない部下もいない。十津川警部は、次第に追い込まれていく…。
あらすじ
警視庁捜査一課の十津川警部は、久しぶりに休暇を得て妻とともに冬の北海道旅行をたのしんだ。そして、妻の希望で人気絶頂の「トワイライト・エクスプレス」に乗車した。しかし、車内には快文のパンフレットが置かれてあった。<今日から明日にかけて、この社内で、乗客の誰かが、殺されます。ご用心のこと>これは、いったい何者の挑戦か?
小説の目次
- 札幌駅6番ホーム
- 新津午前四時四四分
- 夜明けの日本海
- 北陸トンネル
- 終着への旅
冒頭の文
昨日からの雪が、朝になっても降り続いていたが、昼近くなって止み、陽が射してきた。
小説に登場した舞台
- 札幌駅(北海道札幌市北区)
- トワイライト・エクスプレス
- 青森駅(青森県青森市)
- 新津駅(新潟県新潟市)
- 長岡駅(新潟県長岡市)
- 直江津駅(新潟県上越市)
- 富山駅(富山県富山市)
- 高岡駅(富山県高岡市)
- 金沢駅(石川県金沢市)
- 福井駅(福井県福井市)
- 京都駅(京都府京都市下京区)
- 西本願寺(京都府京都市下京区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川警部:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
車掌&鉄道警察隊
- 山下:
トワイライトエクスプレスの車掌。JR北海道。 - 田辺:
トワイライトエクスプレスの車掌。JR北海道。 - 青木:
トワイライトエクスプレスの車掌。JR西日本。 - 前田:
トワイライトエクスプレスの車掌。JR西日本。 - 堀井:
29歳。鉄道警察隊の隊員。 - 長谷部:
27歳。鉄道警察隊の隊員。
トワイライト・エクスプレスの乗客
- 十津川直子:
十津川警部の妻。十津川警部と北海道旅行をした後、札幌駅から二人で乗車。 - 竹内耕三:
6年前、十津川警部が連続婦女暴行で逮捕され、5年の懲役刑を受けた男。すでに出所している。 - 柏木みどり:
M大学文学部の三年生。小樽運河で男が女の首を絞めているところを目撃したと話してきた女性。 - 林竜夫:
M大学文学部の三年生。柏木みどりの友人。 - 中西伸行:
M大学文学部の三年生。柏木みどりの友人。 - 梅田宏美:
M大学文学部の三年生。柏木みどりの友人。 - 中田陽子:
27歳。京都在住。ロイヤル客室で死体となって発見された。 - 戸村浩:
大阪在住の医師。 - 丸山:
カメラマン。 - 羽田:
32歳。N物産の社員。丸山と同室の男。 - 野中功:
32歳。札幌市内に本社のあるN工業の経理課長。1億5千万円相当を持ち逃げして逃亡中。 - 広畑力:
札幌市内にトレーニングジムのトレーナー。野中功の隣室に住む。
その他の登場人物
- 高橋さよ子:
31歳。札幌市内にあるクラブのホステス。小樽運河で死体となって発見された。 - 千田冴子:
千田冴子 - 佐々木:
京都府警の警部。 - 小松哲夫:
竹内耕三の仲間。
印象に残った名言、名表現
(1)女は度胸。
「こんな楽しい夜に、ベットで、寝てなんていられないわ」
(2)名言。
夜行列車は、人生の縮図だといった人がいる。
(3)愛情のもつれからの殺人は、感傷がつきもの。
嫉妬から殺した犯人は、ほとんど、殺した瞬間に、これで、相手が、自分ひとりのものになったと思い、憎しみが、消えてしまうという。
(4)犯人の典型的なパターン。
全く沈黙している人間と、逆に、やたらに喋る人間が、犯人というケースが、多いんだよ。
感想
北海道旅行を楽しんだ十津川警部と直子が、乗車したトワイライト・エクスプレスで起こる連続殺人事件に巻き込まれた、というのが、本作の流れである。
十津川が非番のときに起こる事件なので、部下はいない。相棒のカメさんもいない。
すべて一人で推理をして、判断をしなければならないのだ。これが事態を難しくした。普段の捜査では、冷静に判断する十津川だが、さすがに、今回ばかりは、心細い。
本作では、そんな十津川の不安な心のうちが、描かれる。
今、この車内で、いったい、何が、進行しているのだろうか?
いつもなら、相棒の亀井との弁証法的な会話で、事態を整理し、推理を重ね、新しい突破口を開いていくのだが、それができない。
何もわからないことが、十津川を不安にし、いらだたせて止まらない。
十津川がひたすら追い込まれていく、前半戦である。
だが、後半戦は十津川の逆襲がはじまる。亀井刑事が現れたのだ。十津川からの電話で、何かを察知した亀井が、新津駅からトワイライト・エクスプレスに乗ってきたのである。
「いや、カメさんの顔を見て、ほっとしたよ。ひとりで、心細かったんだ」
唯一無二の相棒、亀井刑事が参戦したことで、やっといつもの調子に戻った十津川警部。
亀井らしい反応に、十津川は、やっと、いつもの雰囲気に戻れたと、ほっとした。
ここから十津川&亀井の逆襲がはじめる。ジリジリと犯人を追いつめていく、怒涛の展開。これぞ、十津川警部シリーズというスピード感。
列車シリーズは、ある意味密室になるので、独特な緊張感がおもしろい。
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