初版発行日 1988年12月20日
発行出版社 毎日新聞社
スタイル 長編
私の評価
犯人の仕掛けた鉄壁のトリックに挑む十津川警部の絶妙の推理!
あらすじ
プレイボーイの青年実業家・高原雅之が刺殺され、付き合いのあった五人の女が捜査線上に浮かんだ。直後、その一人であるモデルの片平みゆきが、犯行を認める遺書を残し、伊豆・石廊崎に失踪する。事件は落着したかに見えたが釈然としない十津川警部。その危惧どおり、恐るべき連続殺人が開始された……。
小説の目次
- 踊り子3号
- リゾート21
- 石廊崎
- 捜査会議
- 事件の再開
- 三人の女
- 疑惑
- 一つの推理
- ひかり5号
- ワープロ
- 過去の影
- 最後の告白
冒頭の文
改札口を出たところで、酒井修は、急に気が変わった。
小説に登場した舞台
- 特急踊り子号
- 熱海駅(静岡県熱海市)
- 伊豆急行リゾート21
- 蓮台寺駅(静岡県下田市)
- 蓮台寺温泉 清流荘(静岡県下田市)
- 松崎(静岡県・松崎町)
- 堂ヶ島洋ランセンター(静岡県・西伊豆町)
- 波勝崎モンキーベイ(静岡県・南伊豆町)
- 石廊崎(静岡県・南伊豆町)
- 石廊崎ジャングルパーク(静岡県・南伊豆町)
- 石廊崎灯台(静岡県・南伊豆町)
- 妻良港(静岡県・南伊豆町)
- 天城峠(静岡県伊豆市)
- 修善寺温泉(静岡県伊豆市)
- 修善寺駅(静岡県伊豆市)
- 岡山駅(岡山県岡山市北区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 小山:
静岡県警の警部。 - 鈴木:
静岡県警の刑事。 - 三沢:
新宿署の刑事。 - 本間:
岡山県警の警部。 - 広沢:
40歳。警視庁の事務官。 - 和田:
北海道警の警部。
事件関係者
- 酒井修:
東京駅丸の内口にある中央商事本社に勤務。 - 高原雅之:
高級外車の輸入販売会社の社長。自宅マンションで死体となって発見された。 - 宮本真理:
25歳。高原雅之の妹。高原雅之の遺産15億円を相続した。 - 宮本:
宮本真理の夫。高原雅之の死後、高級外車の輸入販売会社の社長に就任した。 - 片山みゆき:
25歳。ファッションモデル。阿佐ヶ谷のマンションに在住。下田市出身。高原雅之の恋人の一人。石廊崎で行方不明になる。その後石廊崎近くの森林で髙原を殺したという自供と自殺する旨のメモが見つかる。 - 秋山圭子:
30歳。元中央相互銀行の社長秘書。高原雅之の恋人の一人。踊り子ハイキングコース近くの林の中で死体となって発見された。 - 小林由美:
26歳。銀座のクラブKのホステス。高原雅之の恋人の一人。 - 津田明江:
28歳。デザイナー。国立市の豪邸に住む資産家。高原雅之の恋人の一人。 - 森千賀子:
26歳。タレント。中野のマンションに在住。高原雅之の恋人の一人。 - 崎田:
西新橋に事務所をもつ私立探偵。秋山圭子から高原雅之の調査を依頼されていた。
その他の登場人物
- 井上:
下田交通ハイヤーの運転手。 - 田崎:
東京から妻良港に来た釣り人。 - 安田:
東京から妻良港に来た釣り人。 - 仁村:
高原雅之が経営していた輸入販売会社の副社長。 - 柳沼きみ子:
83歳。高原雅之が経営していた空想出版の副社長。去年の11月に老衰で死亡。 - 池内:
杉並区でスーパーを営む男。 - 佐藤:
56歳。杉並区で金融業を営む男。
印象に残った名言、名表現
(1)波勝崎モンキーベイ。
浜勝崎に近づくと、道路にときどき野猿の姿を見かけるようになった。群れから離れた猿が一匹、二匹と道路に出てきてエサをねだっているのである。
(2)当たり前過ぎると逆に疑念を抱く。
あまりにも予測どおりの結果が出ると、かえって、その結果に疑いを持ってしまうのだ。
感想
華麗なる大どんでん返しが炸裂した作品だった。
最初は簡単な事件に思えた。痴情のもつれで、女がカッとなって男を殺して逃亡。その後、逃げ切れないと判断して、遺書を書いて石廊崎に身を投げた。
ただし、これで終わったら、ミステリーにならない。当然、ここから連続殺人事件に発展していくのである。
事件の関係者で殺されたのは、高原雅之、片山みゆき、秋山圭子の3人。残る関係者は4組。
- 宮本夫妻
- 小林由美
- 津田明江
- 森千賀子
誰が真犯人なのか?に焦点を絞り捜査をしていくのだが、誰が犯人であったとしても、連続殺人の動機がうまく説明できないのである。
また、動機だった。結局、動機に戻ってくるのだ。今度の事件で、動機がいちばんわからない。
連続しているようであってバラバラ。バラバラなようであって連続している。なんとも掴み所がない事件なのだ。
だが、すべての辻褄があうひとつの答えがあったのだ。この答えは大どんでん返しの後にわかる。そして、本作のタイトルがなぜ「伊豆の海に消えた女」なのかも理解できるであろう。
この強烈な大どんでん返しを、ぜひ味わってもらいたい。
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