初版発行日 1998年7月20日
発行出版社 祥伝社
スタイル 長編
私の評価
スポーツ選手連続殺人事件の震撼!現場に残された「メロン最中」の謎とは!?
あらすじ
伊豆下賀茂のテニスコートで美人プロ選手中野美代子の死体が発見された。殴殺だった。直後、コーチの須田、大会スポンサー社長の小池も惨殺され、すべての現場にはなぜか「メロン最中」が残されていた……。やがて背後に、スポーツ界を巻き込む脱税疑惑が浮上するが、十津川警部の執念の捜査を嘲笑うように殺人は続く!次なる標的は誰なのか?犯人との息詰まる攻防戦の中、十津川は事件の恐るべき構図を見抜いたが…。
小説の目次
- メロン最中
- 軽井沢
- 脱税事件
- 若きカップル
- 密告
- 決行の時
- 事件の裏側
冒頭の文
九月二十三日の夜。
小雨が降っていたが、空気は、生暖かい。四谷三丁目の路地の入口に、パトカーがとまり、刑事たちが、雨に濡れながら、死体を調べていた。
小説に登場した舞台
- 四谷三丁目(東京都新宿区)
- 下賀茂温泉(静岡県・南伊豆町)
- 軽井沢(長野県・軽井沢町)
- 明治神宮外苑(東京都港区&新宿区)
- 成田空港(千葉県成田市)
- 那覇空港(沖縄県那覇市)
- アメ横(東京都台東区)
- 有明コロシアム(東京都江東区)
- 地獄谷温泉後楽館(長野県・山ノ内町)
- 上諏訪(長野県諏訪市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 片山明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 中村:
警視庁の検死官。 - 三浦:
静岡県警の警部。 - 吉田:
静岡県警の刑事。 - 安田:
長野県警の警部。 - 鈴木:
長野県警の刑事。 - 竹田:
長野県警の警部。 - 矢代:
長野県警の警部。 - 伊地知:
沖縄県警の警部。 - 田口:
中央新聞会社部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。
事件関係者
- 中野美代子:
23歳。プロのテニス選手。東京・杉並区のマンションに在住。下賀茂にある上野正一郎の別荘で死体となって発見された。 - 須田豊:
プロのテニス選手。中野美代子の大学の先輩でコーチをしていた。四谷三丁目の路地で死体となって発見された。 - 古池勇一郎:
61歳。繊維メーカーSNN工業の社長。。東京都世田谷区在住。軽井沢の別荘で死体となって発見された。 - 高村明:
48歳。税理士。元税務署の職員。世田谷区太子堂に在住。2年前、諏訪湖の岸で死体となって発見された。 - 高村綾子:
高村明の妻。今年の2月に自殺。 - 高村可奈:
24歳。高村明の娘。S大学を卒業後、T製薬の管理課に勤務していたが、母親の自殺後に退職。 - 秋山匡:
25歳。S大学の大学院生。予備校の講師をしている。高村可奈の恋人。池尻大橋のKボクシングジムに通っている。 - 寺沢昭:
プロのテニス選手。有明コロシアムで試合中に撃たれて死亡した。 - 藤本卓也:
プロ野球選手。沖縄キャンプ中、那覇市内の海岸に死体となって発見された。 - 稲垣大成:
稲垣興業の社長。元国務大臣。 - 浅井:
稲垣大成の秘書。
その他の登場人物
- 上野正一郎:
48歳。T製薬の社長。大学時代テニス部に所属していた。 - 上野章子:
上野正一郎の妻。 - 井上:
プロテニス協会の事務局員。 - 中野昌子:
45歳。中野美代子の母親。 - 木村アキ:
プロのテニス選手。中野美代子の親友。 - 遠藤正樹:
48歳。代議士。中野美代子と不倫をしていた。 - 佐伯:
N大学テニス部の監督。学生時代、須田豊のライバルだった。 - 村井:
S住建の職員。軽井沢の別荘の管理をしている。 - 古池文子:
古池勇一郎の妻。 - 鈴木:
世田谷税務署の署長。 - 滝沢:
S大学の教授。 - 滝ゆう子:
寺沢昭の妻。 - 風見準一:
31歳。寺沢昭のマネージャー。元プロテニス選手。合気道五段。
印象に残った名言、名表現
(1)犯人は頭がよい。
あの二人は、そんなバカではない。むしろ、頭のいい連中だと、十津川は、思っているのだ。
感想
本作は、スポーツ選手が、相次いで殺されるというショッキングな事件だった。この連続殺人事件の大きな謎は、
「なぜ、犯行現場にメロン最中が残されているのか?」である。
普通、このメロン最中は、犯人のメッセージと読み取る。つまり、このメロン最中は、犯人が伝えたい思いが込められているのだと。動機の一部なのである。
本作においても、これは正しい。このメロン最中には、あるメッセージが込められていた。だが、このメロン最中は、ミスリードを誘う罠になっていたのが、本作の特徴である。
本作には、大きな罠が仕掛けられている。これは、犯人の罠でもあり、西村京太郎先生が、読者に仕掛けた罠でもある。
読者は、この罠を、十津川警部より先に見破れるか?ここに、本作の面白さがあるだろう。
最後に、本作刊行にあたって発表された、西村京太郎先生のことばを紹介しておく。
下賀茂を、取材したのは、去年の六月で、下田から、西伊豆に行く途中の、谷すじの温泉だった。相模湾から、駿河湾に抜ける、風の名所といわれたが、その時は、梅雨の晴れ間の、おだやかな日だった。
犯罪など起こりそうもない、殺人も似合わない、その平和の土地から事件が始まったら、どうなるのか。
下賀茂のテニスコートから、軽井沢、諏訪、沖縄、そして東京の有明へと、舞台は広がっていく。それと共に事件も広がっていく。そんな構想で、出来上がった作品である。日本各地に行くつもりで、楽しんでいただければ、幸いです。
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