初版発行日 1985年11月25日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 長編
私の評価
只見線で何かが起きている!?捜査にのりだした十津川警部の前に、地元警察の厚い壁が……。山深き鉄道ミステリー!
あらすじ
只見線は、上越線の小出駅から、会津若松までを走るが、急行「奥只見」は、浦佐から出発し、小出を経て、会津若松まで行く。その浦佐で27歳になる男が殺された。一方、会津若松の鶴ヶ城では、東京で宝石商を営む男の死体が発見された。彼には再婚したばかりの若い美人妻が。また浦佐と会津若松の間の奥只見郷でも、男の水死体があがった。
小説の目次
- 三つの死
- 一筋の線
- 急行「奥只見」
- メンバー
- ラムネ菓子
- プロゴルファー
- 真実への旅
- 墓はおりたか
冒頭の文
上越新幹線で、一番小さな駅は、長岡の一つ手前の浦佐駅である。
小説に登場した舞台
- 浦佐駅(新潟県南魚沼市)
- 鶴ヶ城(福島県会津若松市)
- 入広瀬駅(新潟県魚沼市)
- 新宿中央公園(東京都新宿区)
- 上野駅(東京都台東区)
- 小出駅(新潟県魚沼市)
- 急行奥只見
- 大白川駅(新潟県魚沼市)
- 会津川口駅(福島県・金山町)
- 会津若松駅(福島県会津若松市)
- 満田屋(福島県会津若松市)
- 飯盛山(福島県会津若松市)
- 会津武家屋敷(福島県会津若松市)
- 大湯温泉(新潟県魚沼市)
- 五日町(新潟県南魚沼市)
- 東山温泉(福島県会津若松市)
- 大内宿(福島県・下郷町)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 清水刑事:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 桜井刑事:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 畠中:
六日町署の刑事。 - 安藤:
六日町署の刑事。 - 小林:
40歳。会津署の刑事。 - 中根:
会津署の刑事課長。 - 二宮:
28歳。入広瀬村駐在所の警官。
会員制クラブ「泉」
- 大石:
銀座にある会員制クラブ「泉」のオーナー。 - 今西浩:
45歳。銀座にある宝石店の店主。資産家。東京都千代田区在住。鶴ヶ城のお濠で死体となって発見された。 - 岸本駿一郎:
38歳。都内4ヶ所にあるスーパーチェーン「ワールド」のオーナー。東京都渋谷区在住。入広瀬駅近くの川で死体となって発見された。 - 柴田克彦:
デザイナー。中野にある高級マンションに在住。新宿中央公園近くの路上に停まっている車の中で死体となって発見された。 - 湯川道夫:
50歳。グラフィックデザイナー。 - 三木明:
29歳。プロゴルファー。 - 中野義司:
41歳。中華料理チェーン「天和」のオーナー。 - 杉森光治:
36歳。美容院チェーンのオーナー。 - 足立玲子:
26歳。会員制クラブ「泉」のバニーガール。 - 花井ゆう子:
会員制クラブ「泉」のバニーガール。 - 林かおり:
会員制クラブ「泉」のバニーガール。女子大生。 - 島崎エリカ:
19歳。会員制クラブ「泉」のバニーガール。 - 鈴木ケイ子:
会員制クラブ「泉」のバニーガール。
事件関係者
- 川島伸行:
27歳。東京都内にあるK銀行に勤務。インドネシア語を学ぶため、新潟県・大和町にある国際大学に入学。大和町にある国際大学近くで何者かに鈍器で殴られ殺された。 - 広田美紀:
K銀行に勤務。川島伸行の恋人。 - 今西佐和子:
27歳。今西浩の妻。元ファッションモデル。 - 岸本冴子:
37歳。岸本駿一郎の妻。 - 春日みゆき:
三木明の恋人。東中野のマンションに在住。
その他の登場人物
- 田中:
入広瀬村役場の職員。 - 渡辺:
若松交通のタクシー運転手。今西浩を乗せて会津若松市内を案内した。 - ひとみ:
大湯温泉の芸者。 - 夏子:
大湯温泉の芸者。 - 片山:
急行「奥只見」の車掌。 - 浜谷勇:
30歳。プロゴルファー。三木明の友人。
印象に残った名言、名表現
(1)十津川警部の直感が当った。
電話を置いた時、十津川は、軽い興奮を感じていた。予想が当った時に感じる興奮である。
(2)たとえ仕事でも、初めて行く場所は胸躍るものである。
仕事でも、何となく、心が弾むのは、奥只見へは、初めての旅行だからだろう。
(3)急行「奥只見」の風景。
急行「奥只見」は、新緑の中を、ことことと、走り続ける。遠くの高い山の頂きには、白い残雪が見えた。
(4)只見線の美しい景色。
一〇時四〇分。会津川口着。
景色は、相変わらず、美しい。
山があり、水田があり、渓流が見え、田子倉ダムがある。
(5)日頃食べ慣れている食事が落ち着くものである。
「どうも、ぜいたくな食事だと、落ち着きません。カレーライスか、ラーメンが、一番、気楽になれます」
(6)男は女の話ばかりするのではない。
「男が集まると、女の話というのは、嘘ですよ。観念的な話でも、一日中、話し合えるんです」
感想
十津川警部シリーズには、2つのパターンがあると思う。
一つは、スピーディーかつド派手な展開。次々と殺人が起きたり、爆発が起きたり、誘拐やジャックが起きる。最初から最後まで、緊張感が漂っているパターンである。
もう一つは、ロジカルに犯人を追いつめていく展開。関係者を一人ひとり、丁寧に洗い出し、それぞれに聞き込みをやり、情報を一つ一つ精査していき、やがて犯人にたどり着く、というパターンである。
前者はスピード感と緊張感に溢れ、後者は、ゆっくりだが確実に、ジリジリと犯人に迫っていく感じがある。
本作は、後者のパターンである。次々と殺人事件が起こるが、スピード感はない。だが、一つ一つパズルをはめていくような展開である。十津川と亀井が、現地に足を運び、ゆっくりだが、確実に犯人に迫っていったのだ。
そして、本作には、ミステリーらしい、どんでん返しが待っていた。最後まで、飽きさせない展開である。
最後に、本作では、舞台となった只見線沿線の美しい景観が、細かく描かれている。旅情も味わせる作品であった。
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