初版発行日 1999年9月30日
発行出版社 徳間書店
スタイル 長編
私の評価
早朝、寝台特急の個室内で発見された女は、前夜の女とは別人だった。しかも、その女も既に死んだ筈だというのだ……!?謎が謎を呼ぶ事件に、十津川と亀井が挑む!
あらすじ
雑誌「旅と人間」のカメラマン・木下孝は、新型寝台特急”サンライズエクスプレス”を取材するため、高松まで乗車することになった。女好きの木下は、隣の個室に乗り合わせた若い美女と知りあい、永井みゆきと名のるその女の目的地・道後温泉まで同行することを企む。が、乗りかえ駅の坂出で彼女が起きてこないのに不審を抱き、その室をあけると、別の女の死体が出てきたのだ。しかも、永井みゆきと名のる女は、去年東京で死んだ筈だという……。
小説の目次
- A個室の女
- 再会の時
- ボディガード
- 犯行の目的
- 迷路からの脱出
- 愛と復讐
- 終焉への疾走
冒頭の文
カメラマンの木下は、久しぶりに、夜行列車に乗ることになった。
小説に登場した舞台
- 東京駅(東京都千代田区)
- サンライズ瀬戸
- 高松駅(香川県高松市)
- 松山駅(愛媛県松山市)
- 道後温泉(愛媛県松山市)
- 東京競馬場(東京都府中市)
- 宮古島(沖縄県宮古島市)
- 砂山ビーチ(沖縄県宮古島市)
- 那覇港(沖縄県那覇市)
- 新宿中央公園(東京都新宿区)
- 成城学園前駅(東京都世田谷区)
- 丸子多摩川(東京都大田区)
- 三鷹駅(東京都三鷹市)
- 深大寺(東京都調布市)
- 箱根(神奈川県・箱根町)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 片山明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 太田:
香川県警の警部。 - 青木:
香川県警の本部長。 - 中村:
警視庁初動捜査班の警部。 - 浜崎:
銀座警察署の刑事。 - 新治:
警視庁捜査四課の警部。 - 橋本豊:
私立探偵。元警視庁捜査一課の刑事で、十津川警部の元部下。 - 田口:
中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。
事件関係者
- 木下孝:
雑誌「旅と人間」のカメラマン。取材でサンライズ瀬戸に乗車する。 - 田島:
雑誌「旅と人間」の編集長。三鷹のマンションに在住。 - 永井みゆき:
25歳。東京・荻窪のマンションに在住。新橋にあるコンパニオン会社「フローラ・東京」の社長。高知出身。サンライズ瀬戸の中で死体となって発見された。 - 小柳ゆみ:
木下孝がサンライズ瀬戸の中で話した女性。 - 小松勇:
32歳。私立探偵。練馬区石神井のマンションに在住。 - 桜井恵一:
「日本探偵社」に勤める探偵。小松勇の友人。新宿中央公園で死体となって発見された。 - 小林恵子:
26歳。六本木にあるクラブ「ドリーム・アイ」のホステス。成城学園前駅にあるマンションに在住。自宅で死体となって発見された。 - 酒井久仁:
52歳。銀座に事務所をかまえる弁護士。次の参議院選挙に出馬すると言われている。 - 柏木明:
35歳。暴力団K組の幹部。中野区中野のマンションに在住。 - 目加田一勇:
25歳。K組の組員。柏木明の部下のチンピラ。 - 中川清:
30歳。K組の組員。柏木明の部下のチンピラ。 - 塚本専太郎:
70歳。塚本製薬の社長。雑誌「旅と人間」のスポンサーをしていた。 - 高品誠:
40歳。四谷にある和菓子店の店主。かつて銀座で老舗和菓子店を経営していた。父親が塚本専太郎の大学時代の同級生。 - 五十嵐泰三:
東新宿にある大和菓子本店の社長。
その他の登場人物
- 村上:
雑誌「旅と人間」の編集者。 - 宮本さゆり:
M銀行道後温泉支店に勤務する女性。 - ヒロコ:
銀座にあるクラブ「ミラージュ」のホステス。 - みどり:
新宿のクラブRのホステス。木下孝と親しくしている。 - 鈴木よしみ:
石神井駅前にあるラーメン店Kの店員。小松勇と親しくしていた。 - 堀本:
四谷三丁目にある「日本探偵社」に勤める探偵。橋本豊の知り合い。 - ミネ:
68歳。新宿中央公園のホームレス。 - 坂井:
新宿中央公園のホームレス。 - 川上あき:
四谷三丁目にある会計事務所の事務員。 - 足立ありさ:
30歳。新宿のクラブ「ドリーム」のママ。柏木明の恋人。 - 藤原:
新橋に事務所をかまえる私立探偵。元警察官。塚本専太郎に依頼された仕事をしている。 - 戸倉:
神田に事務所をかまえる私立探偵。元警察官。塚本専太郎に依頼された仕事をしている。
印象に残った名言、名表現
■美女は心まで美しいのか。
男は、美しい女を見ると、彼女の心まで美しいと思ってしまうものだという人がいる。正確にいえば、心も美しいと、思いたいということになるのかも知れない。
感想
二転三転するストーリー展開、なかなか見えない事件の全貌、そして、意外すぎる結末。これぞミステリーという秀作であった。
発端は、サンライズ瀬戸で起こった殺人事件。カメラマンの木下孝が車内で親しくなった女性の個室に、別の女が死体となって発見されたことだった。
だが、この殺人事件には、犯人たちの作為が働いていたのだ。その後も連続して殺人事件が発生する。普通は、何件も殺人事件が発生したら、犯人像や事件の背景が明らかになってくるのだが、なかなか、全体が見えてこない。
むしろ、誤った方向に導かれているような気さえするのだ。
やっと、事件の全貌が見えてきたのが、終盤。
これまで、正直にいって、犯人に振り廻されて、事件全体が見えなかったといってもいい。それどころか、犯人を見誤って、間違った結論を出してきたといってもいい。
それが、ここへ来て、事件の全体像が見えてきた。
十津川警部は、犯人の確信を深めていくが、これから、さらに、ひと悶着ありそうな気配。
何かが、急激に動き出そうとしている。いや、何かというあいまいなものではなく、これからは、具体的に、人間が、動き出すだろう。
終盤から最後に至るまでは、怒涛の展開だった。「まさか」、「まさか」が連続して発生していく。そして、最後は、誰も想像していなかった結末を迎えるのだ。
どんでん返しの連続。神経をすり減らしながら読みふけってしまった。
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