初版発行日 2016年3月4日
発行出版社 集英社
スタイル 長編
私の評価
東京、金沢を結ぶ連続殺人に挑む推理行。有名観光地を舞台に描く長編旅情ミステリー。
あらすじ
細野新司は、金沢の女子大生竹内綾と遠距離恋愛中。北陸新幹線開業日に綾と東京から乗車する計画を立てる。だが、綾は待ち合わせ場所に現れず、細野は金沢の彼女のマンションを訪ねるが留守だった。やがて、江戸川で綾らしい女性の溺死体が発見されたと連絡が入る。捜査担当の十津川警部は細野の行動に疑惑を……。
小説の目次
- 遠距離恋愛
- 黒部宇奈月温泉駅
- 江戸川周辺
- 尾行
- 二十枚の切符
- 金沢へ再び
- 「かがやき五一九号」再び
冒頭の文
北陸新幹線が三月十四日から開通すると決まった時、細野新司は、金沢に住む竹内綾に電話して、こういった。
小説に登場した舞台
- 東京駅(東京都千代田区)
- 東京ステーションホテル(東京都千代田区)
- 北陸新幹線かがやき
- 金沢駅(石川県金沢市)
- 黒部宇奈月温泉駅(富山県黒部市)
- 宇奈月温泉(富山県黒部市)
- 香林坊(石川県金沢市)
- 富山駅(富山県富山市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 片山明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 中村:
宇奈月温泉派出所の巡査長。 - 川島:
江戸川警察署生活安全課の刑事。 - 後藤:
江戸川警察署の刑事。 - 五十嵐:
江戸川警察署の刑事。 - 水沼:
江戸川の派出所の巡査長。
事件関係者
- 細野新司:
24歳。広告代理店に勤務するサラリーマン。二子玉川のマンションに在住。金沢出身。竹内綾と遠距離恋愛中。 - 竹内綾:
金沢に在住。大学三年生。細野新司と遠距離恋愛中。ミスキャンパスに選ばれた美人。江戸川で溺死体となって発見された。 - 荒木哲男:
上野にあるジャパン観光の社長。 - 高山功:
28歳。ジャパン観光の社員。傷害の前科あり。 - 小坂井大輔:
31歳。東京芸能プロダクションに所属する売れない俳優。江戸川区内に在住。かつてジャパン観光で働いていた。江戸川の川原で死体となって発見された。
その他の登場人物
- 緒方由紀:
竹内綾と同じ大学に通う友人。 - 鈴木清美:
竹内綾と同じ大学に通う友人。 - 岸辺雪江:
ジャパン観光の会員。杉並区高井戸のマンションに在住。 - 高山浩:
高山功の兄。千束にある喫茶店「カフェアール」のオーナー。 - 桜井:
東京芸能プロダクションのマネージャー。
印象に残った名言、名表現
■黒部宇奈月温泉駅の風景。
この黒部宇奈月温泉駅は、他の新駅と同じ、アルミニウムを使った、やたらに明るい近代的な駅舎だったが、降りてみて、駅前の広場に、何もないことに、十津川は、おどろいた。
感想
本作は、これまでの十津川警部シリーズでは考えられなかった3つのポイントがあった。それは、ポジティブなものではなく、ネガティブなものだったと感じている。
一つは、十津川警部が容疑者をずっとミスリードしていたことである。
確かに、これまでの事件でも、十津川警部が犯人を見誤っていたことも多かった。それが、ミステリーのどんでん返しの伏線にもなっていたのだから当然である。
それでも、見誤るのは一時的である。すぐに方向修正して、犯人に近づいていった。だが、今回は、最初から終盤までずっとミスリードしていたのである。
本作の構成上、十津川がミスリードしていた人物が犯人でないことは、読者もわかっている。それなにの、ずっとミスリードさせておく意味があったのか…。
二つ目は、殺害の動機がたったの”120万円”だったことである。
これまでの十津川警部シリーズで、お金が殺人の動機となる場合は、ほとんどが億円以上、少なくとも千万円以上であった。百万円単位の場合は、「それくらいの金で殺人は犯さない」というのが定説だったと思う。
しかし、今回はたったの120万円。なんというか、、、”ちゃちな”犯罪だなと感じてしまう。まぁ、それだけ日本が貧しくなったと捉えれば、ある意味、リアリティがあるのだが…。
三つ目は、ウソ発見器が登場したことである。
相手の表情や言葉尻を読みとって、証言の真意を推理するのが、十津川警部の醍醐味だったのではないのか?ウソ発見器に使ってはいかんだろと。
本作では、このウソ発見器が事件解決のカギにはなっていないし、ちょろっと試しに使った程度ではあったが、ウソ発見器が登場すること事態にショックを受けてしまった。
だから、個人的には、残念な作品であったと思う。
コメント