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十津川警部捜査行「阿蘇・鹿児島殺意の車窓」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

阿蘇・鹿児島殺意の車窓小説

初版発行日 2007年3月25日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 短編集

私の評価 4.0

POINT】
火の国・熊本で、維新の舞台・薩摩で十津川は、戦う!
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あらすじ

1.阿蘇で死んだ刑事

短編集「幻想と死の信越本線」に収録。下記を参照↓↓

→「幻想と死の信越本線

2.阿蘇幻死行

十津川警部の妻・直子が友人の戸田恵に誘われて阿蘇と由布院に旅行した。戸田恵の同級生が営む熊本市内のクラブに行った帰り道、国道57号線沿いで、直子の運転する車が何かを轢いた。あわてて直子と恵が道路を調べたが、人は見つからなかった。翌日、国道57号線で轢き逃げによって男が死亡したと報道される……。

3.小さな駅の大きな事件

日本最南端の駅・鹿児島県の西大山駅のホームで男の死体が発見された。被害者は十津川警部の同僚の加倉井刑事だった。加倉井は「大きな仕事をやることになった」と語っていたという。さらに彼の所持品には見慣れぬ高価な腕時計が。不審を抱いた十津川だが、捜査を止めるよう指令が下り……。

4.ある刑事の旅

新しく警視庁捜査一課に配属された若林刑事は、子どもの頃から会っていない父親の宗一郎が鹿児島市内の病院で亡くなったことを知らされる。遺体を引き取りに鹿児島の病院に出向いたところ、父親の恋人だったと名乗る川上ゆき子と会ったが、この女の罠にはまり、殺人容疑で逮捕されてしまう。

5.西の終着駅の殺人

警視庁捜査一課の清水刑事は、故郷の枕崎へ帰省するためにブルートレインはやぶさに乗車した。はやぶさの車内で新井はるみという女に出会う。彼女は、2年前の連続猟奇事件の真犯人は、自分が秘書として働いている男で、その男から逃げているという。

小説に登場した舞台

1.阿蘇で死んだ刑事

短編集「幻想と死の信越本線」に収録。下記を参照↓↓

→「幻想と死の信越本線

2.阿蘇幻死行

  • 阿蘇くまもと空港(熊本県・益城町)
  • 栃木温泉(熊本県・南阿蘇村)
  • サンロード新市街(熊本県熊本市)
  • 由布院温泉(大分県由布市)
  • 由布院駅(大分県由布市)
  • 熊本駅(熊本県熊本市)

3.小さな駅の大きな事件

  • 西大山駅(鹿児島県指宿市)
  • 鹿児島空港(鹿児島県霧島市)
  • 指宿駅(鹿児島県指宿市)
  • 博多駅(福岡県福岡市博多区)

4.ある刑事の旅

  • 鹿児島空港(鹿児島県霧島市)
  • 西鹿児島駅(鹿児島県鹿児島市)

5.西の終着駅の殺人

  • 東京駅(東京都千代田)
  • ブルートレインはやぶさ
  • 西鹿児島駅(鹿児島県鹿児島市)
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登場人物

1.阿蘇で死んだ刑事

短編集「幻想と死の信越本線」に収録。下記を参照↓↓

→「幻想と死の信越本線

2.阿蘇幻死行

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 十津川直子:
    35歳。十津川警部の妻。
  • 戸田恵:
    35歳。十津川直子の妻。
  • 菊乃:
    サンロード新市街にあるクラブ「菊乃」のママ。戸田恵の高校時代の同級生。
  • 原文彦:
    23歳。熊本市内で建設業を営む。国道57号線で人を轢いたと自首してきた男。
  • 太刀川誠:
    熊本の弁護士。
  • 伊地知三郎:
    35歳。六本木にある高級クラブのオーナー。元ホスト。熊本・立野の国道57号線で轢き逃げにあって死亡した男。
  • 大木:
    熊本県警の刑事。
  • 辻:
    熊本県警の刑事。
  • 倉田:
    熊本県警の警部。

3.小さな駅の大きな事件

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 本多時孝:
    警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
  • 三上刑事部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。
  • 加倉井肇:
    52歳。警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の同僚。福井県出身。西大山駅で何者かに射殺された。
  • 原田:
    指宿署の刑事。
  • 伊東:
    鹿児島県警の警部。
  • 橋本豊:
    私立探偵。元警視庁捜査一課の刑事で、十津川警部の元部下。
  • みや子:
    21歳。加倉井刑事の娘。東京の女子大生。
  • 小杉要:
    20歳。N大学に通う大学三年生。スーパーの強盗事件で逮捕された。
  • 小玉信一:
    20歳。S大学に通う大学三年生。小杉要とともにスーパー強盗をした男。自宅アパートの部屋で死体となって発見された。
  • 今井徹:
    21歳。K大学に通う大学三年生。小杉要とともにスーパー強盗をした男。
  • 飯島:
    鹿児島選出の代議士。警察畑出身。
  • 浦中誠:
    36歳。飯島代議士の秘書。
  • 足立良行:
    29歳。鹿児島市内に住む理髪店員。以前、飯島代議士の選挙事務所で働いていた。
  • 本橋真一郎:
    弁護士。鹿児島出身。

4.ある刑事の旅

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 若林:
    28歳。警視庁捜査一課に新しく配属された刑事。
  • 若林宗一郎:
    58歳。若林刑事の父親。家具職人。鹿児島のS病院で心不全で亡くなる。
  • 若林みどり:
    23歳。若林刑事の妹。OL。
  • 川上ゆき子:
    40歳。鹿児島市内のホステス。若林宗一郎の恋人。
  • 藤村:
    鹿児島県警の警部。
  • 石田:
    鹿児島中央署の署長。
  • 二宮良介:
    鹿児島市内にあるサラ金「アケボノ金融」を営む。元K組の組員。
  • 内藤:
    若林宗一郎が入院していた病院の院長。

5.西の終着駅の殺人

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 清水新一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。故郷の枕崎へ帰省中、ブルートレインはやぶさで新井はるみに出会う。
  • 新井はるみ:
    大沼安雄の秘書。清水刑事がブルートレインはやぶさで出会った女性。はやぶさの個室寝台で絞殺されていた。
  • 木下:
    鹿児島県警の刑事。
  • 片岡信:
    25歳。2年前の連続猟奇事件で起訴されて、死刑判決を受けた男。
  • 大沼安雄:
    51歳。ビル管理会社「大沼興業」の社長。数百億円の資産を持ち政財界・芸能界に顔がきく大物。
  • 広田功:
    30歳。私立探偵。

印象に残った名言、名表現

(1)阿蘇の景色。

阿蘇の雄大な景色を眺めながら、阿蘇登山道路を走り、やまなみハイウェイを通って、由布院に向う。空は、文字通り五月晴れで、直子は、昨夜の出来事を忘れることが出来た。

(2)刑事の妻。

夫にとって、刑事の仕事は、生甲斐どころか、彼の人生、生き方そのものなのだ。刑事以外の彼を想像することなど、直子には、考えられなかった。

(3)西大山駅。

雑草が、生い茂ったホーム。その周囲は、さつまいも畑である。

遠くに、薩摩富士と呼ばれる開聞岳が、見える。わずか九百メートルの高さだが、周囲が、平坦な畑なので、高く見える。

感想

本作は、阿蘇と鹿児島を舞台にした、5つの短編集である。

十津川警部シリーズでは、九州を舞台にした作品もそれなりに刊行されているものの、他の地域と比べると、九州は比較的少ない。だから、九州の十津川警部シリーズファンとしては、嬉しい作品の一つでもある。

九州七県は、それぞれ違う特色をもっている。いろいろな顔がある。その中でも、大自然の阿蘇と、南国情緒ただよう鹿児島は、とりわけ、特徴的だといえよう。この阿蘇と鹿児島を、ミステリーという媒体で、西村京太郎先生が、情緒たっぷりに描いているのだ。

5作品ともに、特徴のある作品だが、一番の推しは、「小さな駅の大きな事件」である。

現職の警視庁捜査一課の刑事が射殺されたというショッキングな事件であるが、舞台は日本最南端の駅である「西大山駅」。

雑草が、生い茂ったホーム。その周囲は、さつまいも畑である。

遠くに、薩摩富士と呼ばれる開聞岳が、見える。わずか九百メートルの高さだが、周囲が、平坦な畑なので、高く見える。

作中でも、「何もない駅」として描かれているが、本当に何もない駅である。しかし、駅から見える開聞岳とさつまいも畑の風景は美しく、マニアには人気のある駅でもある。

この景色を頭に思い浮かべながら、本作を読んでみてほしい。ここで起きた殺人事件が、いかに異様なものなのか、よくわかるだろう。

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