初版発行日 2013年2月15日
発行出版社 文藝春秋
スタイル 長編
私の評価
佐々木監督、選手らが実名で登場!待ち受ける驚天動地の結末。十津川警部シリーズ最大の問題作!
あらすじ
世界最強の女子サッカーチーム、なでしこジャパン22人が五輪直前に誘拐されたー。十津川警部はひとり難を逃れた澤穂希選手に協力を要請。プレー同様頭脳も鋭い澤選手と十津川、夢の2トップが解決に向け動き出す。
小説の目次
- 県人会
- 澤穂希のアシスト
- 関西空港
- 一番GK海掘です
- 必死の駆け引き
- 奪回成功?
- 最後のペナルティキック
冒頭の文
警視庁捜査一課、北条早苗刑事、二十八歳、独身である。
小説に登場した舞台
- 帝国ホテル東京(東京都千代田区)
- 新神戸駅(兵庫県神戸市中央区)
- 東京駅(東京都千代田区)
- 関西国際空港(大阪府泉佐野市)
- 軽井沢駅(長野県・軽井沢町)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 片山明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 松本:
大阪府警の警部。 - 有田:
群馬県警の警部。 - 橋本豊:
私立探偵。元警視庁捜査一課の刑事で、十津川警部の元部下。 - 十津川直子:
十津川警部の妻。
誘拐されたなでしこジャパンの監督&選手たち
- 佐々木則夫:
なでしこジャパンの監督。 - 海掘あゆみ:
なでしこジャパン代表のGK。INAC神戸所属。 - 福元美穂:
なでしこジャパン代表のGK。岡山湯郷ベル所属。 - 近賀ゆかり:
なでしこジャパン代表のDF。INAC神戸所属。 - 矢野喬子:
なでしこジャパン代表のDF。浦和レッズ所属。 - 岩清水梓:
なでしこジャパン代表のDF。日テレ・東京ヴェルディベレーザ所属。 - 有吉佐織:
なでしこジャパン代表のDF。日テレ・東京ヴェルディベレーザ所属。 - 鮫島彩:
なでしこジャパン代表のDF。モンペリエ所属。 - 熊谷紗希:
なでしこジャパン代表のDF。フランクフルト所属。 - 川澄奈穂美:
なでしこジャパン代表のMF。INAC神戸所属。 - 田中明日菜:
なでしこジャパン代表のMF。INAC神戸所属。 - 宮間あや:
なでしこジャパン代表のMF。岡山湯郷ベル所属。 - 上尾野辺めぐみ:
なでしこジャパン代表のMF。アルビレックス新潟所属。 - 阪口夢穂:
なでしこジャパン代表のMF。日テレ・東京ヴェルディベレーザ所属。 - 宇津木瑠美:
なでしこジャパン代表のMF。モンペリエ所属。 - 安藤梢:
なでしこジャパン代表のFW。デュイスブルク所属。 - 大野忍:
なでしこジャパン代表のFW。INAC神戸所属。 - 京川舞:
なでしこジャパン代表のFW。INAC神戸所属。 - 大儀見優季:
なでしこジャパン代表のFW。トゥルビネ・ポツダム所属。 - 大滝麻未:
なでしこジャパン代表のFW。オリンピック・リヨン所属。 - 岩渕真奈:
なでしこジャパン代表のFW。日テレ・東京ヴェルディベレーザ所属。
事件関係者
- 後藤由紀:
20歳。女子サッカー選手。なでしこジャパン代表のGK。岡山湯郷ベル所属。東京にあるM大学の3年生。岡山出身。後藤製菓・社長の娘。岡山県人会の会合の会場で何者かに誘拐される。 - 澤穂希:
なでしこジャパン代表のMF。INAC神戸所属。 - 橋詰やよい:
「フットボール日本」の記者。 - 伊原敬:
「フットボール日本」のカメラマン。 - 木下晋:
IT企業「フレンド」の社長。 - 平松昇:
IT企業「A&KCO」の社長。 - 近藤修:
65歳。大手コンビニチェーンの社長。
その他の登場人物
- 石黒信一郎:
60歳。岡山県人会の事務局長。 - 仲田歩夢:
INAC神戸の選手。 - 京川舞:
INAC神戸の選手。 - 田中陽子:
INAC神戸の選手。 - 五十嵐:
日本サッカー協会の役員。 - 丸山桂里奈:
スペランツァ大阪高槻所属の選手。FW。 - 古橋剛:
企業コンサルタント。
印象に残った名言、名表現
なし。
感想
本作は、何と言っても、なでしこジャパンの選手たちと監督が、実名で登場したことであろう。実際に知っている人物たちが登場すると、リアリティがあるし、親近感もわいてくるのだ。
御存知の通り、2011年のドイツ女子ワールドカップで、なでしこジャパンが優勝するという快挙を成し遂げた。これは歴史的な偉業であり、なでしこジャパンの選手たちは国民栄誉賞を受賞している。さらに、澤穂希選手は、その年、もっとも活躍した選手が選ばれる、女子バロンドールに選ばれた。これも、信じられないような快挙だ。
そんな選手たちが、登場するミステリー小説というだけでも、興味深いものがあるだろう。
本作は、なでしこジャパンの監督と選手たちが、関西国際空港で誘拐されてしまうというショッキングな事件であった。捜査のプロ・十津川警部とサッカーのプロ・澤穂希選手が、協力して捜査に当たる点もおもしろい。
この事件がどんな結末を迎えるのか?本書を手にとって確かめてもらいたい。ミステリーとしては、しっかりどんでん返しが用意されていたと思うが、展開としてはやや弱いか。
だが、なでしこファンなら、十分に楽しめるとは思う。
最後に、本書の刊行にあたって発見された西村京太郎先生のことばを紹介しておく。先生がなでしこジャパンの取材をされたときのものである。
ロンドンオリンピックの直前、岡山県の湯郷に、なでしこジャパンの取材に、というより、女子サッカーの練習風景を見に行った。ここに、岡山湯郷ベルというプロチームがあり、日本代表GKの福元美穂とMFの宮間あやの二人がいて、時代を背負う若い選手たちと一緒に練習しているというのである。
なにしろ若い女性ばかりである。さぞ、賑やかだろいうと思って出かけた。確かに、いた。グランドの隅に、二十人ばかりの若い女性たちが、ひとかたまりになって、準備運動中だった。世界大会で優勝したので、アマゾネスみたいな女性たちを想像していたのに、皆さん、むしろ小柄で、遠くからは可愛らしい女の子の集団に見えて、意外だった。ところが、シュートの練習に進むと、途端に猛烈な音とスピードになって、見ていた編集者が「さすがにすごいね」と喚声をあげた。
小柄で可愛いのに、すごいのである。そのうちに、監督が、手招きして呼んでくれた。こんな時は、たいてい、息をはずませながら、ニコニコしながら近づいてくるものなのだが、驚いたことに、二十人あまりの選手たちが、一斉に、こちらに向かって全速で駆け出したのである。しかも、誰も笑っていない。まるで練習の続きにしか見えない。若い女性が一斉に駆け寄ってくるのが、嬉しいよりも怖くなって、あやうく逃げ出すところだった。それが、二、三メートルぐらいのところで、ぴたりと急停止をしたが、こちらを見て、ニコリともしない。それが、監督が「こちらは、ミステリーを書いていて、君たちを取材に来られたんだ」と、いったとたんに「わあーッ」と声をあげ、ニッコリし、一斉に「監督を犯人にしてくださあーい!」と、大声を出したのには、びっくりした。
このあと、何事もなかったように、練習を再開している。彼女たちの福元選手もいたし、宮間選手もいたのだが、同じように陽焼けした顔で、同じように、力を抜かずに走り廻っていたので目立たなかった。
それを見ていて、わかったことがある。世界大会で優勝して自信を持ち、形はプロになったが、気持ちは、生まじめなアマチュアなのだということである。いいなあと思った。陽焼けした可愛らしいなでしこたち。
コメント