初版発行日 1984年11月25日
発行出版社 角川書店
スタイル 長編
私の評価
亀井刑事の首に一千万円の懸賞金が!囮になった亀井、青森までの十四時間の長い旅が始まった!
あらすじ
十津川警部の片腕で、捜査一課のベテラン刑事亀井は、気は優しく真面目で、通称”カメさん”の愛称で誰からも親しまれていた。その亀井に何者かによって懸賞金がかけられた。<死亡に限り一千万円>亀井に対する私怨か、警察に対する挑戦か?出張で大阪にいた亀井は自ら囮になることを決意し、叔母のいる青森までを走る「白鳥3号」に乗り込み、犯人をおびきだそうとするが……。
小説の目次
- 懸賞金一千万円
- 潜入
- 北陸本線
- 保証小切手
- 信越本線
- 女の影
- 襲撃
- 動機を追って
- いたずら電話
- 人質
- 旅の終り
冒頭の文
第一線のベテラン刑事が、全国から集って、意見の交換をし、合せて、親睦をはかる会議が、今年は、大阪府警本部で、四月十六日に開かれ、東京警視庁からは、捜査一課の亀井刑事が、出席した。
小説に登場した舞台
- 道頓堀(大阪府大阪市中央区)
- 心斎橋(大阪府大阪市中央区)
- 新宿駅(東京都新宿区)
- 東京駅(東京都千代田区)
- 新大阪駅(大阪府大阪市淀川区)
- 大阪駅(大阪府大阪市北区)
- 特急「白鳥3号」
- 敦賀駅(福井県敦賀市)
- 福井駅(福井県福井市)
- 芦原温泉駅(福井県あわら市)
- 加賀温泉駅(石川県加賀市)
- 金沢駅(石川県金沢市)
- 富山駅(富山県富山市)
- 糸魚川駅(新潟県糸魚川市)
- 直江津駅(新潟県上越市)
- 新宿区役所(東京都新宿区)
- 柏崎駅(新潟県柏崎市)
- 長岡駅(新潟県長岡市)
- 東三条駅(新潟県三条市)
- 新潟駅(新潟県新潟市中央区)
- 伊勢佐木町(神奈川県横浜市中区)
- 新発田駅(新潟県新発田市)
- 坂町駅(新潟県村上市)
- 村上駅(新潟県村上市)
- あつみ温泉駅(山形県鶴岡市)
- 鶴岡駅(山形県鶴岡市)
- 酒田駅(山形県酒田市)
- 羽後本荘駅(秋田県由利本荘市)
- 秋田駅(秋田県秋田市)
- 東能代駅(秋田県能代市)
- 鷹ノ巣駅(秋田県北秋田市)
- 弘前駅(青森県弘前市)
- 青森駅(青森県青森市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 清水新一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 小林:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 木本:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 金子:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 若林遼:
25歳。警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。亀井殺害の検証主を探すために、片山由美と恋人という設定で潜入捜査をした。 - 片山由美:
警視庁の婦警。亀井殺害の検証主を探すために、若林と恋人という設定で潜入捜査をしたが、特急「白鳥3号」の車内で何者かに刺殺された。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 外村:
弘前署の警部。 - 花井:
警視庁捜査四課の警部。 - 亀井公子:
亀井刑事の妻。
事件関係者
- 石崎二朗:
21歳。チンピラ。前科あり。心斎橋で亀井を襲おうとして逮捕された。 - 幸田圭吾:
S組の相談役。 - 井上:
29歳。S組の組員。 - 田所ゆき:
新宿にあるバー「ゆき」のママ。熊本出身。 - 後藤正也:
40歳。新宿にあるクラブ「セイント」の元オーナー。10年前、殺人事件で亀井刑事に逮捕された男。一ヶ月前に出所している。特急「白鳥3号」の車内で亀井刑事を襲おうとして逮捕された。 - 原勝一:
42歳。自称詩人。ガンマニア。芦花公園の豪邸に在住。5年前、傷害事件で亀井刑事に逮捕され服役していたが、出所している。特急「白鳥3号」で亀井を殺そうとしたが逮捕された。 - 荒川裕:
新宿にあるバー「ゆき」のバーテン。特急「白鳥3号」の車内で死体となって発見された。 - 五十嵐明:
六本木にあるレストラン「ピノキオ」の社長。奥沢にある豪邸に在住。 - 久原夏子:
クラブ「チボリ」のママ。元モデル。四谷のマンションに在住。 - 服部五郎:
K組の組員。元S組の組員で幸田圭吾の子分だった。
その他の登場人物
- きくえ:
後藤正也の恋人。 - 井戸口公平:
銀座と新宿にある井戸口宝石店のオーナー。大久保に在住。 - 井戸口一也:
井戸口公平の息子。井戸口宝石新宿店の店長。 - 真田杏子:
幸田圭吾の愛人。四谷三丁目のマンションに在住。 - 磯見茂樹:
医師。 - 白井:
成城学園にある小児科医院の医師。 - 池田:
特急「白鳥3号」の車掌長。
感想
本作は、特急「白鳥3号」の車内で繰り広げられる、犯人との闘争を描いた作品であった。
亀井刑事に懸賞金がかけられているのだから、いつ、どこで犯人が襲ってくるかわからない。しかも、その犯人が誰なのかもわからないのだ。それが特急列車の車内での出来事なのだから、常に緊張感がある。この緊張感が、大阪から青森までずっと続くのである。
捜査については、十津川、亀井を中心とした特急「白鳥3号」組、本多捜査一課長を中心とした東京組の二手に分かれている。交互に視点が切り替わるので、事件の真っ只中の視点と、事件を俯瞰的に眺める視点の両方から眺められるので、全体像も把握しやすかった。
また、トラベルミステリーらしい情緒も感じられる作品。特急「白鳥3号」で停車する、一つ一つの駅の風景を情緒たっぷりに描かれている。これはすごく良かったと思う。
ただし、一つだけ気に成る点が。
それは、特急「白鳥3号」の車内で、亀井刑事のために潜入捜査をしていた婦人警官が殺されたシーン。殺された後の十津川警部の反応があまりにも淡白なのである。
十津川警部はほぼ無反応。亀井刑事だけが驚き悔しさを顕にしたが、十津川の指示で動いていた部下が死んだのに、これはあまりにも冷たすぎた。
本来、十津川警部は情に厚く、部下を大事にする警部である。人情に厚い十津川警部が冷たく見えてしまったのが、残念な点であった。
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