初版発行日 1992年12月5日
発行出版社 講談社
スタイル 短編集
私の評価
北へ走る三陸鉄道を襲う殺意。殺人予告を知りながら救えなかった苦悩!十津川警部痛恨の事件!!
あらすじ
1.恨みの陸中リアス線
北へ走る三陸鉄道リアス線の車内で水産会社社長が殺された。男の身元を知って十津川は自責の念にかられる。殺害予告の脅迫状に怖いえた被害者の娘が父の死の前日、捜査一課に助けを求めていたのだ。そして上野で起こった第二の殺人が、十津川を宮古へと向かわせた。
2.新幹線個室の客
十津川警部の大学時代の同級生で大阪在住の坂田弘が、相談したいことがあるといい、坂田に会うために十津川は東京駅から新幹線に乗った。坂田がいるはずの新幹線個室の扉を開けた十津川だったが、室内にはうめき声をあげた男がいた。男は「刑事の十津川が、おれを、殺した」といい、死亡した。坂田が事件に関係があると睨んだ十津川は、捜査を開始する!
3.急行アルプス殺人事件
坂口刑事は故郷の白馬村から急行「アルプス」で東京に戻る途中、乗用車が炎上している現場に遭遇し、運転士や車掌と協力して車の運転席から若い女性を救出する。ところが、その2日後、女性は肺炎で亡くなってしまう。そればかりか、女性を救助した車掌と運転士が相次いで命を落とす。この不吉な出来事の連鎖に不審を抱いた十津川警部は、一連の死を殺人事件と見て捜査を開始する──。
4.一日遅れのバースデイ
短編集「裏切りの街 東京」に収録。下記を参照↓↓
→「裏切りの街 東京」
小説に登場した舞台
1.恨みの陸中リアス線
- 盛岡駅(岩手県盛岡市)
- 宮古駅(岩手県宮古市)
- 島越駅(岩手県・田野畑村)
- 島越港(岩手県・田野畑村)
- 上野駅(東京都台東区)
- 浄土ヶ浜海岸(岩手県宮古市)
- 大沢温泉(岩手県花巻市)
2.新幹線個室の客
- 東京駅(東京都千代田区)
- 新大阪駅(大阪府大阪市淀川区)
- 仙台空港(宮城県名取市)
- 宮城刑務所(宮城県仙台市若林区)
- 国会図書館(東京都千代田区)
- 羽田空港(東京都大田区)
- 大分空港(大分県国東市)
- 由布院温泉(大分県由布市)
3.急行アルプス殺人事件
- 井の頭公園(東京都三鷹市)
- 吉祥寺駅(東京都武蔵野市)
- 急行「アルプス号」
4.一日遅れのバースデイ
短編集「裏切りの街 東京」に収録。下記を参照↓↓
→「裏切りの街 東京」
登場人物
1.恨みの陸中リアス線
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三浦:
岩手県警の刑事。 - 坂本:
岩手県警の警部。 - 十津川直子:
十津川警部の妻。 - 田口(通常は田島という名前で登場):
中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。 - 匂坂秀夫:
築地にあるS水産の社長。中野区内に在住。三陸鉄道の車内で何者かに殺害された。 - 匂坂みつ子:
匂坂秀夫の娘。十津川警部に助けを求めてきた女性。 - 三村幸二郎:
S水産所有の漁船の船長。宮古市内に在住。上野にあるホテルRで死体となって発見された。 - 木内:
S水産宮古支店の支店長。 - 大野:
三陸新聞社の記者。 - 秋山剛:
六本木にある「秋山商会」の社長。 - 栗林喜一:
50歳。去年の12月に遭難した第9S丸の漁労長。浄土ヶ浜で死体となって発見された。 - 小川保:
去年の12月に遭難した第9S丸の機関長。大沢温泉の露天風呂で死体となって発見された。 - 浜田:
去年の12月に遭難した第9S丸の漁船員。 - 加藤明:
去年の12月に遭難した第9S丸の漁船員。遭難事故で死亡した。
2.新幹線個室の客
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。 - 塚本:
大阪府警の警部。 - 坂田弘:
40歳。十津川警部の大学時代の同級生。コンサルタント。大阪市福島区のマンションに在住。十津川に相談したいと言ってきたが、行方不明になる。 - 武藤好一郎:
39歳。十三にある喫茶店「プチドール」のマスター。新幹線個室で何者かに殺害された。 - 山本:
新幹線ひかり116号の車掌。 - 柴田夕子:
武藤好一郎の妹。十三に在住。 - 戸田くみ子:
28歳。大阪在住のOL。去年の10月、東京のホテルで何者かに殺害された。 - 三崎典伍:
42歳。大阪に本社があるK工業の東京支店長。戸田くみ子と不倫していた。去年の10月、大阪港で水死体となって発見された。 - 丸山俊一:
32歳。大阪在住。戸田くみ子と三崎典伍の殺害容疑で逮捕・起訴され、宮城刑務所に収監中。 - 坂田洋子:
坂田弘の元妻。デザイナー。 - 片山みどり:
23歳。家業の精肉店を手伝う。以前、喫茶店「プチドール」のウエイトレスをしていた。 - 戸田雅子:
戸田くみ子の母親。
3.急行アルプス殺人事件
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 坂口弘:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。 - 山下淳:
45歳。急行「アルプス」の車掌。松本市のマンションに在住。自宅で死体となって発見された。 - 佐野武彦:
46歳。急行「アルプス」の運転士。井の頭公園で死体となって発見された。 - 神埼ゆう子:
28歳。カメラマン。練馬区石神井のマンションに在住。木崎湖近くで炎上していた車の中にいたが、坂口刑事らに救出された。しかし、入院先の病院で死亡した。 - 小森:
松本市内の運転所の所長。 - 小笠原:
神埼ゆう子の婚約者。新宿にあるS交易の社員。ロボット研究の愛好会の会員。国立のマンションに在住。 - 福田:
建設会社に勤務。ロボット研究の愛好会の会員。 - 山田:
西新宿に事務所をかまえる弁護士。
4.一日遅れのバースデイ
短編集「裏切りの街 東京」に収録。下記を参照↓↓
→「裏切りの街 東京」
感想
本作は、4つの短編が収録された短編集だが、いずれも、サスペンスフルな力作揃いだった。
とくに、「新幹線個室の客」は、印象的な作品である。
十津川警部の大学時代の同級生が登場した事件で、殺人事件で誤認逮捕された男を同級生が救うために、起こってしまった悲しい事件であった。
犯人像も動機も意外性があり、東京、大阪、仙台、由布院と舞台が次々に移り変わっていくスピード感もあり、長編並みの読み応えがある作品であった。
もちろん、この他の3作品も、パワフルな作品である。
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