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十津川警部「わが愛する犬吠の海」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

わが愛する犬吠の海小説

初版発行日 2016年9月14日
発行出版社 祥伝社
スタイル 長編

POINT】
被害者はなぜ、駅の命名権を買ったのか?十六年前の悲劇が哀切の真相を呼ぶ!ダイイングメッセージが自分の名前!?十津川は謎を追って銚子へ!
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あらすじ

東京Tホテルで殺された男が残した血文字「こいけてつみち」は、被害者の名前だった。死に際になぜ自分の名を?十津川は、「小池鉄道」という駅が銚子にあると知り、現地へ急行。銚子電鉄が駅名愛称命名権を販売、終点外川駅の権利を小池が買っていたことを掴む。さらに彼は駅前に事務所を開く一方で、住まいのある京都では広告会社の経営を続けていた。小池はなぜ駅の命名権を買い、銚子と京都に二重生活を送っていたのか?やがて十六年前に犬吠埼で起こった悲劇が浮上した時、十津川が哀切の真相に迫る!

本作の重要な謎は、「なぜ、被害者は、ダイイングメッセージに自分の名前を書いたのか?

小説の目次

  1. 死者からの伝言
  2. 十六年前の犬吠埼温泉
  3. 十六年前の写真
  4. 風景写真の謎
  5. 「四引く三は一か」
  6. 証拠はあるか
  7. わが愛について

冒頭の文

その男の死体は、今、十津川の足元に、俯せに横たわっている。

小説に登場した舞台

  • 銚子駅(千葉県銚子市)
  • 仲ノ町駅(千葉県銚子市)
  • 観音駅(千葉県銚子市)
  • 笠上黒生駅(千葉県銚子市)
  • 海鹿島駅(千葉県銚子市)
  • 犬吠駅(千葉県銚子市)
  • 外川駅(千葉県銚子市)
  • 犬吠埼温泉ぎょうけい館(千葉県銚子市)
  • 銚子マリーナ(千葉県銚子市)
  • 銚子海洋研究所(千葉県銚子市)
  • 京都駅(京都市下京区)

登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。

警察関係者

  • 三浦:
    京都府警の警部。
  • 小野寺:
    千葉県警の警部。42歳。

事件関係者

  • 小池鉄道:
    38歳。京都市内在住。広告会社「京都広告」の副社長。千代田区のTホテルで背中を刺されて死亡していた。
  • 竹下治夫:
    38歳。広告会社「京都広告」の社長。小池鉄道と大学時代からの友人。
  • 園田恵子:
    小池鉄道の大学時代の恋人。 大学4年生の時、犬吠の近くの海岸で亡くなる。
  • 山口由美:
    小池鉄道の大学時代の友人。
  • 二宮エリカ:
    小池鉄道が外川駅で立ち上げた会社「小池企業」の社員。
  • 二階堂:
    「京都広告」の元社員。
  • 小笠原:
    横浜のカフェ「フランソワ」の店主。
  • 木村:
    銚子鉄道の駅員。

印象に残った名言、名表現

■本作について、西村京太郎先生のことば

取材で三回、銚子電鉄に乗っている。銚子電鉄に乗ると、必ず犬吠駅でおりて、犬吠のホテルに泊まっているから、犬吠にも三回行っていることになる。取材が、銚子電鉄のことが多く、赤字対策のぬれ煎餅の話だったり、駅名を売る話だったりで、一泊する犬吠の海は、いつもおだやかだった。朝、ホテルで眼をさまして、窓の外を見ると、青空と、青い海と、有名な純白の灯台が眼に飛び込んでくる。一度でもいいから、荒れる犬吠の海をみたいのだが、そのチャンスを得ていない。その代わりに、犬吠で殺人がおきる小説を書いたのだが、果たして、荒れる犬吠の海の代わりになっただろうか?

総評

本作は、前半の早い段階で、16年前に犬吠海岸で起きた”できごと”が、根本にあることがわかる。揺るぎない容疑者も浮上する。犯人はこの人物しかあり得ないことがわかる。読者にもすぐわかる。十津川警部も、ほぼ断定して動いている。

しかし、証拠もなければ、動機もあいまいだ。16年前のできごとを、今から探るのも難しい。それでも、十津川警部は、小さな点をかき集め、点をつなげて線にして、最後は大きな面にとらえるのだ。

捜査の経過や、事件の真相を、ここで明らかにすることはできない。本書を手にとって、確かめてほしい。

ただ一つだけ、言えるとすれば、この事件には、”ミスリード”が仕掛けられていることだ。「当然こうあるべきであろう」という一般常識や先入観が、真相を誤解させてしまうのである。

読者も十津川警部も、ミスリードを見破れない。最後の最後に”本当の姿”が明らかになる。真実をすべて理解したとき、犯人の”愛”が感じられるのである。

本作は、銚子電鉄が舞台となったが、2010年刊行の「銚子電鉄 六・四キロの追跡」も、銚子電鉄が舞台となっている。

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