初版発行日 2008年9月30日
発行出版社 徳間書店
スタイル 短編集
私の評価
東京ーそこは人間のあらゆる欲望が詰まったパンドラの箱。十津川、亀井、そして捜査一課の刑事たちが、今日も事件を追って首都を走る!
あらすじ
1.特別室の秘密
十津川警部の妻・直子が尿管結石で病院に運ばれた。痛みがなくなると、持ち前の好奇心が頭をもたげた直子は、病院の中を探検することにした。立入禁止の札がかかったガラスドアの向こうに、五〇〇と書かれた病室を見つけるが、案内図には載っておらず、入院患者や看護婦に聞いても答えはさまざま。どうやら院長が使っている部屋らしいのだが、最後五〇〇号室を訪ねた直子の耳に、部屋の中からけもののような唸り声が聞こえ……。
2.一日遅れのバースデイ
広永浩一郎が急性心不全で死亡した。主治医の田口は、処方していた睡眠薬が、大量に使われていたことを不審に思い、知り合いの十津川警部に相談した。捜査をはじめた十津川は、広永浩一郎に資産がないことを知り、息子たちに殺人の動機がないため、殺人の可能性が消えたと判断したが……。
3.野良猫殺人事件
短編集「野猿殺人事件」に収録。下記を参照↓↓
→「野猿殺人事件」
4.死体の値段
クラブ「ベラミ」で働くホステス・中島君子は、70歳の資産家・大山卓造の財産狙いでつきあっていた。だが、君子の部屋で、大山が急死してしまう。このままでは、一銭も手に入らないと思った君子は、ある行動に出る……。
5.死が乗り入れてくる
小説に登場した舞台
1.特別室の秘密
なし
2.一日遅れのバースデイ
なし
3.野良猫殺人事件
短編集「野猿殺人事件」に収録。下記を参照↓↓
→「野猿殺人事件」
4.死体の値段
- 中野駅(東京都中野区)
- 下高井戸駅(東京都世田谷区)
5.死が乗り入れてくる
- 上野駅(東京都台東区)
- 特急「ひたち」
- 水戸駅(茨城県水戸市)
- 西国分寺駅(東京都国分寺市)
登場人物
1.特別室の秘密
- 十津川警部:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 十津川直子:
十津川警部の妻。 - 加藤春子:
アジア第一病院に入院している患者。脳血栓で倒れてリハビリ中。 - 太田恵子:
アジア第一病院に入院している患者。急性肺炎の患者。 - 仁科専一:
アジア第一病院に入院している患者。糖尿病の患者。 - 君原:
60歳。アジア第一病院に入院している患者。 - 小野塚匡:
アジア第一病院の院長。脳外科の権威。 - 山下ひろみ:
アジア第一病院の看護師。 - 鬼頭恵美子:
三星銀行の会長の娘。 - 鬼頭広志:
三星銀行の頭取。鬼頭恵美子の婿。
2.一日遅れのバースデイ
- 十津川警部:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 広永浩一郎:
71歳。飲食店チェーンの社長。急死する。 - 広永浩:
広永浩一郎の長男。 - 広永明:
広永浩一郎の次男。 - 田口:
広永浩一郎の主治医。十津川警部の知り合い。 - 長崎:
T生命の担当者。 - 木下勇一:
医師。
3.野良猫殺人事件
短編集「野猿殺人事件」に収録。下記を参照↓↓
→「野猿殺人事件」
4.死体の値段
- 十津川警部:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 中島君子:
29歳。クラブ「ベラミ」で働くホステス。 - 大山卓造:
70歳。個人資産数十億円ある資産家。 - 井上利夫:
チンピラ。君子が以前交際していた男。 - 大山市郎:
大山卓造の息子。大山産業の社長。 - 大山静子:
大山市郎の妻。
5.死が乗り入れてくる
- 十津川警部:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 清水新一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上本部長:
刑事部長。十津川警部の上司。 - 佐々木:
26歳。中央興産の仙台支社に勤務。 - 今西めぐみ:
24歳。佐々木の恋人。Nデパートの広報誌の編集長。東京・西国分寺のマンションに在住。資産家の娘。 - 井上:
特急「ひたち」の車掌。 - 小田誠二郎:
50歳。Nデパートの販売部長。社長の弟。 - 池島弘:
Nデパート水戸店の在庫係。元Nデパート広報誌の編集長だったが左遷された。
印象に残った名言、名表現
(1)噂話の塩梅。
噂というのは、一割の真実と九割の嘘があれば、成立するのだろう。また、そのくらいがいちばん面白いらしい。
(2)人間は多面的ないきものである。
今西めぐみという女性の人間像も、その過程で、少しずつ、はっきりしてきた。
捜査が、進展するので、十津川は、嬉しいのだが、時には、辛いこともある。被害者の遺族が持っているイメージを、こわしてしまうことが、あるからだ。
感想
本作は、いずれも、東京がメイン舞台となった、5つの短編集である。
5つの作品は、いずれも、トリックがメインの作品になっている。もちろん、短編なので、西村京太郎先生得意の壮大なトリックではない。
だが、ちょっとした時間差を利用した、意表をつくトリックなどが収録されている。
西村京太郎先生は、長編だけでなく、短編ミステリー作家としても、非凡な才能をもちあわせた作家だと、再認識させられる。
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