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「越後湯沢殺人事件」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

越後湯沢殺人事件小説

初版発行日 1993年8月25日
発行出版社 中央公論新社
スタイル 長編

POINT】
完璧なアリバイ、大物政治家や地方の有力者たち。海千山千の強大な相手に、十津川班が立ち向かう!
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あらすじ

越後湯沢のリゾート・マンションで芸姑・由美の絞死体が発見された。新潟県警は、部屋の所有者・沢木を容疑者として逮捕する。身に覚えのない沢木は、大学の同窓生・十津川警部に助けを求めた。旧友の無実を信じ、現地に入り個人的に捜査を進める十津川に、亀井刑事から思わぬ知らせが入った。湯沢町議で建設会社を経営する由美の父親が東京で殺されたというのだ!正式に事件を担当することになった十津川だが、新たな容疑者として浮かび上がるのは政財界の大物たちばかり。強固なアリバイと権力の壁を前に、十津川警部は危険な賭けを試みる!

小説の目次

  1. ヴィラ湯沢701号室
  2. 休暇
  3. 若い死
  4. 検証
  5. 二世議員
  6. 過去への追跡
  7. 師走の風の中で

冒頭の文

沢木は、列車が、長い大清水トンネルに入ったとたんに、小説『雪国』の冒頭の一節を思い出した。

小説に登場した舞台

  • 越後湯沢駅(新潟県・湯沢町)
  • 雪国の宿 高半(新潟県・湯沢町)
  • 上野駅(東京都台東区)
  • 半蔵門(東京都千代田区)

登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川省三:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 清水新一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三上刑事部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

事件関係者

  • 沢木敬:
    40歳。オモチャの設計会社の社長。
  • 早川ゆかり:
    24歳。由美の名前の芸者。沢木のマンションで死んでいるのが発見される。
  • とみ子:
    芸者。早川ゆかりと仲が良い。
  • 中谷博:
    24歳。タレント。
  • 若宮勇:
    湯沢町会の議長。若宮建設の社長。早川ゆかりの父親。
  • 栗山政一郎:
    62歳。参議院議員。
  • 栗山貢:
    栗山政一郎の長男。衆議院議員。39歳。
  • 奥寺祐介:
    サン建設の社長。
  • 松本弘:
    M銀行本店の渉外部長。元M銀行新潟支店の支店長。
  • 早川好江:
    早川ゆかりの母親。ゆかりやとみ子が所属していた置屋の女将。
  • 小田研一:
    栗山政一郎の秘書。39歳。
  • 榊原久之:
    栗山貢の大学時代の同級生。大学時代に自殺している。
  • 小倉美加:
    OL。小田研一の不倫相手。

その他の登場人物

  • 青田悠一:
    新潟県警の刑事。
  • 三浦:
    新潟県警の警部。
  • 安倍:
    沢木敬の顧問弁護士。
  • 若宮加代子:
    若宮勇の妻。
  • 新井功:
    サン建設の営業第一部の部長。32歳。
  • 新井あや子:
    新井功の妻。別居中。
  • 林正文:
    中谷博のマネージャー。
  • あけみ:
    芸者。
  • 片桐:
    K産業の社長。
  • 田口:
    中央新聞の社会部に所属する記者。十津川警部の大学時代の同級生。
  • 杉本:
    栗山貢の大学時代の同級生。
  • 深谷信之:
    栗山政一郎の秘書。
  • 車田貴美子:
    26歳。車田工業社長の娘。
  • 車田安子:
    車田貴美子の母親。
  • 江本広平:
    ロック歌手。中谷博の友人。
  • 寺本元:
    栗山政一郎の顧問弁護士。

印象に残った名言、名表現

(1)留置所でひとりになった孤独感。

自分の弁明を聞いてくれる人間が、一人もいないことの孤独感に、果して、いつまで、耐えられるだろうかと、考えてしまう。

(2)刑事・十津川と人間・十津川の間で揺れ動く。

越後湯沢に着くまで、沢木のことは、なるべく、考えまいと思った。彼は、大学の同窓である。どうしても、情に流されてしまう。彼が、犯人の筈がないと思ってしまう。その先入主が、事件を見る眼を、曇らせてしまうことが、怖かったからである。

(3)発想がおもしろい。

「あたしは、芸者だから、嘘をつくのば上手いんだけど、本当のことを話すのは、苦手なの」

総評

本作は、オモチャ設計会社の社長・沢木敬が越後湯沢で購入したマンションの部屋で、若い芸者の死体が発見されたことからはじまる。

当然、部屋の主である沢木敬が容疑者になり、彼は逮捕されてしまう。ただ、沢木敬が誤認逮捕であることは、すぐに予想がつく。芸者の人間関係を洗いだした結果、大物政治家、政治家の息子、越後湯沢の有力者、大手銀行の責任者などが、関連していることもわかる。

読者は、この人物たちの中に真犯人がいるのだろうと、これもすぐに予想がつく。ただし、ここからが難しい。

いずれもほぼ完璧なアリバイがある。いずれも有力者で金もコネもある。警察組織に圧力もかけられる。そう簡単に、尻尾を出すはずがない。しかも、新潟県警は、沢木敬を起訴する方針を固めた。

こんな中から真犯人を見つけだし、動機を解明し、犯罪の証明をし、証拠をつかまなければならない。かなり厄介な事件なのだ。

容疑者が有力者であるため、登場人物も多い。人間関係も利害関係も複雑である。読者としては、この人間関係を理解するのがなかなか大変だ。しかし、真相が解明する頃には、これらの関係がスッキリと整理されている。

そして、なぜ今回の事件が起こってしまったのか?腑に落ちて理解できるはずだ。

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