初版発行日 2019年10月20日
発行出版社 祥伝社
スタイル 長編
私の評価
【POINT】
三路線が同時発車する阪急梅田駅から事件は始まったー。連続殺人の鍵は敗戦前夜に焼却された日記!吉田茂、石原莞爾、阪急社長・小林一三……。歴史の闇に十津川が挑む!!
三路線が同時発車する阪急梅田駅から事件は始まったー。連続殺人の鍵は敗戦前夜に焼却された日記!吉田茂、石原莞爾、阪急社長・小林一三……。歴史の闇に十津川が挑む!!
あらすじ
阪急梅田駅では、神戸・宝塚・京都の三路線の列車が同時に発車する。写真家菊地が撮影に来た夜、旧友の木内えりかが六甲駅ホームから転落、死亡した。遺体からは睡眠薬が検出、殺人だった。被害者が自費出版を進めていたと判明した矢先、新たな殺人が! えりかの祖父宏栄は、戦中の阪急顧問弁護士で、社長の小林一三や吉田茂、石原莞爾と交流。大戦末期に和平を訴えて政府を批判し、獄死していた。未刊の本は宏栄についてのものと思われ、十津川はこれこそ事件解決の鍵と睨むが、捜査は思惑を超え、難航した……。
小説の目次
- 阪急電鉄・梅田駅
- 神戸周辺
- 吉田茂と石原莞爾
- 合同捜査
- 接点を探す
- ねずみたちを追って
- 終章の日記
冒頭の文
菊池実は四九歳。今年の末には五〇歳になる。そろそろ分別がついてもいいのだが、それができない。
小説に登場した舞台
- 新大阪駅(大阪府大阪市淀川区)
- 大阪梅田駅(大阪府大阪市北区)
- 十三駅(大阪府大阪市淀川区)
- 西宮駅(兵庫県西宮市)
- 六甲駅(兵庫県神戸市灘区)
- 神戸三宮駅(兵庫県神戸市中央区)
- 京都駅(京都府京都市下京区)
- 清水寺(京都府京都市東山区)
- 錦市場(京都府京都市中京区)
- 四条通(京都府京都市下京区)
- 六甲山ホテル(兵庫県神戸市灘区)
- 新神戸駅(兵庫県神戸市中央区)
- 石塀小路(京都府京都市東山区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田中大輔:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 寺崎:
兵庫県警捜査一課の警部。 - 田島:
中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。
事件関係者
- 菊池実:
49歳。写真家。東京のN大学卒業。 - 木内えりか:
47歳。阪急電鉄本社の宣伝部に勤務。菊池実の大学時代の後輩。神戸の六甲にあるマンションに在住。六甲駅のホームから転落して電車にはねられて死亡した。 - 津村美咲:
25歳。菊池実の助手をすることになったカメラマン。四谷三丁目のマンションに在住。自由が丘の公園で死体となって発見された。 - 木内宏之:
89歳。木内えりかの父親。 - 木内敏江:
79歳。木内えりかの母親。 - 木内宏栄:
木内宏之の父親。阪急電鉄の顧問弁護士をしていた。すでに他界している。 - 野村英子:
野村ビジネスの社長の一人。野村三兄妹の長女。阪急電鉄の大株主。 - 野村英樹:
40歳。野村ビジネスの社長の一人。野村三兄妹の長男。阪急電鉄の大株主。 - 野村英明:
野村ビジネスの社長の一人。野村三兄妹の次男。阪急電鉄の大株主。 - カリナ:
アメリカの女優。野村英樹の妻。
その他の登場人物
- 藤田由紀:
30歳。阪急電鉄本社の宣伝部に勤務。木内えりかの同僚。 - 青田:
新橋にある「月光出版」の編集者。 - 永井直人:
目黒区自由が丘に在住。「日本歴史研究」の同人になっっていた永井勝行の孫。 - 長野ゆりこ:
京都・石塀小路にあるバーのママ。 - 木戸敬:
M新聞の記者。 - 太田:
大学教授。戦中、戦後の日本社会を研究している。
感想
本作は、阪急電鉄沿線を舞台にしたトラベルミステリーと、歴史組み込み型ミステリーを合作したような作品だった。
前半は、阪急電鉄沿線や京都などの描写が多く、後半はほとんどが太平洋戦争についてのエピソードが中心である。
ミステリーについて語る部分はないが、太平洋戦争史に興味がある方にとっては、面白いエピソードを知ることができる機会になるかもしれない。
最後に、西村京太郎先生のことばを紹介しておく。
ここにきて、戦争に絡むミステリーを書きたいと思うようになった。すでに、戦後七十四年。人々の思い出から、戦争の匂いが消えかけている。しかし、今もなお、戦争の傷が、何処かに残り、戦争を知らない人にも、影響を与えている筈である。
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