初版発行日 1987年4月5日
発行出版社 講談社
スタイル 長編
私の評価
特急「白鳥」内で殺された女に恨みを抱く三人の男女。謎が謎を呼ぶ傑作長編トラベルミステリー。
あらすじ
青森発大阪行きの特急「白鳥」の車内から、小野木ユミの刺殺体が発見された。ユミは業績を伸ばすブティックの女性社長。十津川と亀井の捜査の結果、わかれた夫で宝石商の山本功、ユミに好意を抱く副社長の矢野豊、姪でタレントの土橋かおりの三人が容疑者として浮上する。が、山本かおりはアリバイを主張。数日後、今度は矢野が近鉄特急内で殺されたのだ……!?
小説の目次
- グリーン車の客
- 十分間の壁
- 第二の事件
- 秋田
- 自動車事故
- 死のプレゼント
- 遺書
冒頭の文
青森ー大阪間を走る特急「白鳥」は、電車特急で、十両編成である。
小説に登場した舞台
- 特急「白鳥」
- 京都駅(京都府京都市下京区)
- 原宿(東京都渋谷区)
- 大阪駅(大阪府大阪市北区)
- 秋田空港(秋田県秋田市)
- 秋田駅(秋田県秋田市)
- いろは(秋田県秋田市)
- 千秋公園(秋田県秋田市)
- 上野駅(東京都台東区)
- 東京駅(東京都千代田区)
- 伊豆(静岡県)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 清水新一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 山中:
京都府警の刑事。 - 小谷:
京都府警の警部。 - 阿部:
京都府警の警部。 - 太田:
秋田県警の警部。 - 三浦:
秋田県警の刑事。 - 寺西:
秋田県警の刑事。 - 山本:
新潟県警の警部。 - 本橋:
警視庁爆発物処理班。 - 君原:
警視庁の刑事部長。 - 十津川直子:
十津川警部の妻。
事件関係者
- 小野木ユミ:
35歳。原宿に本社があるアパレル会社「シャルム」の社長。特急「白鳥」の車内で背中を刺され死亡していた。 - 矢野豊:
30歳。アパレル会社「シャルム」の副社長。近鉄特急ビスタカーの車内で刺殺された。 - 山本功:
小野木ユミの元夫。新宿東口にある宝石店「ヤマモト」の店主。 - 土橋かおり:
25歳。タレント。小野木ユミの姪。 - 近藤修:
56歳。アパレル会社「シャルム」の顧問弁護士。銀座に事務所がある。 - 福沢明夫:
秋田に住む設計士。「シャルム」秋田店の設計を担当した。去年の暮れに死亡した。 - 福沢みどり:
21歳。福沢明夫の妹。秋田市在住の女子大生。 - 川村活人:
25歳。土橋かおりが行きつけのディスコで知り合った友人。自宅マンションで死体となって発見された。 - 平川:
中央新聞の記者。
その他の登場人物
- 浅井:
32歳。大阪市内でアンティック・ショップを営む。 - 柴田:
川村活人の友人。 - 和田:
中央新聞の記者。 - 松下かずみ:
福沢みどりの大学のクラスメート。 - 小山良平:
68歳。5月26日に東京駅の連絡通路で男に突き飛ばされて怪我をした。 - 小山典子:
小山良平の娘。 - 八木由美子:
M大学英文科に通う大学三年生。 - 杉ひろみ:
M大学英文科に通う大学三年生。
車掌
- 萩原章一郎:
近鉄特急ビスタカーの車掌。 - 久原:
近鉄特急ビスタカーの車掌。 - 小松:
特急「白鳥」の車掌。 - 宮本:
特急あさひ号の車掌。
印象に残った名言、名表現
(1)西本刑事の苦手分野。
若い西本は、女から、こういう眼で見つめられるのは、苦手である。特に、相手が、若く、美しい場合は、どうしても、狼狽してしまう。
(2)心証が大事。
捜査では、直感で相手を判断してはいけないといわれるが、刑事も、人の子だから、何となく気に食わない人間も、出てくる。
感想
極上のミステリー作品だった。
事件における魅力的な謎あり、警察を欺くトリックあり、二転三転するストーリー展開あり、犯人を炙り出す必殺の罠あり、意外な結末あり。すべてが巧妙に計算された事件だった。
とくに、どんでん返しが何度も続くところが、素晴らしい。
ミステリー作品を読むとき、「犯人はこいつではなかろうか?」と、自分なりの推理をしながら、進めていく。本作では、この「犯人はこいつではなかろうか?」が、次々に覆されていくのである。
最後に真犯人がわかったとき、
まさかっ!!
と、驚愕して結末をむかえる。そして、最後の最後に、意外な結末が待っている。
本作は、最後にウルトラC的な人物が突然、現れて、「すべて私の犯行だった」という残念な展開にはならない。
ある程度、はやい段階で事件関係者と容疑者が絞られ、その中に、真犯人がいる。この真犯人を探っていくミステリーなのである。
西村京太郎先生から、仕掛けられた連続の大どんでん返し。ぜひ体感してもらいたい。
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