初版発行日 1991年5月25日
発行出版社 中央公論新社
スタイル 長編
私の評価
【POINT】
捜査一課の名物刑事が退職直後に失踪、その妻も不審な焼死。十津川警部がたどる謎深き木曾路の殺人迷路。
捜査一課の名物刑事が退職直後に失踪、その妻も不審な焼死。十津川警部がたどる謎深き木曾路の殺人迷路。
あらすじ
事件に対する執念深さで、捜査一課の名物刑事といわれた奥田。その奥田が、退職直後に木曾の宿場町で失踪。さらに、実在しない奥田の娘から捜索依頼の手紙が届き、奥田の妻も、入院先で不審な焼死をとげる。事件の概要もつかめぬまま混乱する十津川警部と捜査本部。元刑事の周辺に、いったい何が起きたのか。奥田の残した写真を手がかりに、十津川と亀井のコンビは、迷宮のような謎の出口を求めて、山深い木曾路をたどるが……。
小説の目次
- 一通の手紙
- 殺意のバイパス
- 人間の鎖
- 夜の死
- 再び福島宿
- 対決
冒頭の文
十津川の前に、何枚かの写真が、置かれている。
小説に登場した舞台
- 八王子駅(東京都八王子市)
- 名古屋駅(愛知県名古屋市中村区)
- 特急「しなの15号」
- 中津川駅(岐阜県中津川市)
- 馬籠(岐阜県中津川市)
- 是より北 木曽路 の碑(岐阜県中津川市)
- 藤村記念館(岐阜県中津川市)
- 馬籠峠(岐阜県中津川市)
- 妻籠宿(長野県・南木曽町)
- 南木曽町博物館(長野県・南木曽町)
- 福島宿(長野県・木曽町)
- 滝見温泉(長野県・南木曽町)
- 大平宿(長野県飯田市)
- 飯田駅(長野県飯田市)
- 東京駅(東京都千代田区)
- 寝台特急はやぶさ
- 久留米駅(福岡県久留米市)
- 松本駅(長野県松本市)
- 成田空港(千葉県成田市)
- 飯坂温泉(福島県福島市)
- 熊谷(埼玉県熊谷市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 清水新一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 田原:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 平井:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 林:
八王子署の署長。 - 三浦:
長野県警の警部。 - 松本:
長野県警の警部。
事件関係者
- 奥田悠一郎:
60歳。元警視庁捜査一課の名物刑事。2ヶ月前に退職した。三鷹のマンションに在住。木曾路を旅行中、失踪する。その後、八王子の病院近くの雑木林で死体となって発見された。 - 奥田礼子:
53歳。奥田悠一郎の妻。2年前から八王子の病院に入院中だったが、入院先の病院で焼死した。 - 池内市郎:
60歳。7年前、内縁の妻を殺した容疑で奥田悠一郎が逮捕した男。7年間の服役後出所した。奥田悠一郎を殺したと自首したが、釈放。その後、寝台特急はやぶさの車内で毒殺された。 - 太刀川良子:
池内市郎の離婚した妻。池袋でブティックを営む。 - 太刀川ゆき:
太刀川良子と池内市郎の娘。代々木八幡のマンションに在住。 - 井上良介:
太刀川ゆきの恋人。雑誌「トピックス」の記者。東中野のマンションに在住。福島宿の旅館ともえ屋の裏で死体となって発見された。 - 大関多一郎:
大関エンタープライズの社長。元凄腕の刑事。 - 工藤哲夫:
大関多一郎の甥。 - 朝見まり子:
48歳。東京・白金台で料亭を経営。今年の4月、妻籠宿近くの渓流で死体となって発見された。 - 崎田功:
朝見まり子の会社の経理部長。福島宿近くの林の中で首をつって死んでいた。 - 木戸進:
福島宿で土産物店を営んでいたが、急にどこかへ引っ越した。現在行方不明。 - 木戸里子:
木戸進の妻。現在行方不明。
その他の登場人物
- 小池みよ:
福島宿「はたや」の主人。 - 伊原:
元警視。現在は警備保障会社の社長。 - 白木かな子:
福島宿にある旅館の女将。木戸里子の親友。 - 吉井:
阿佐ヶ谷で喫茶店を営む男。井上良介の友人。
印象に残った名言、名表現
■馬籠宿。
石だたみの道の両側に、江戸時代の家が、並んでいる。まるで、そこだけが、時代に取り残されたみたいに、景色が違っていた。
感想
トラベルミステリーとして秀逸な作品だったと思う。
本作の舞台は、江戸時代の面影が残されている木曾路の宿場町。この作品を読んでいると、いつか自分もここを歩いてみたいと思うのだ。
もちろん、ミステリーも極上である。二転三転する犯人像、手に汗握るスリリングな展開。心理戦ともいえる犯人の追跡行。
今回は、元凄腕の刑事が殺された事件であったが、他にも元凄腕の刑事が登場し、十津川警部との息詰まる対決がある。この対決は見ものである。
最後に、西村京太郎先生のことばを紹介しておく。
都会に暮らして、車の生活に慣れてしまうと、時々、車の走らない道路を、のんびりと、歩いてみたくなる。大都会では、なかなか、実現できない希望だが、地方へ行くと、その希望がかなえられて、嬉しくなる。木曾の旧街道も、その一つである。
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