初版発行日 2006年5月25日
発行出版社 中央公論新社
スタイル 長編
岩手、青森、秋田、山形、福島をまたぐ逃亡劇!逃亡者、弁護士、刑事、犯人。次々と視点が切り替わる!クライマックスの緊迫感あふれる傑作サスペンス!
あらすじ
話題の超高層ホテルの開業日当日、客室のシャワールームで寺西由香里が殺された。由香里は、ホテルを設計した建築家・真田健一郎の秘書。第一発見者は、真田の弟子で由香里の恋人である小野寺誠。が、小野寺は行方をくらましたのだ!平泉、花巻、田沢湖……東北地方を逃げ回る小野寺。三田村と北条早苗二人の刑事の追跡。小野寺と捜査本部にかかる謎の電話の目的は?
小説の目次
- 東京ジャングル
- 北上盆地
- 味方と敵と
- 田沢湖
- ある意見
- 再捜査
- 反撃
- 終章
小説に登場した舞台
- 新花巻駅(岩手県花巻市)
- 北上川(岩手県花巻市)
- 花巻駅(岩手県花巻市)
- やぶ屋総本店(岩手県花巻市)
- 花巻温泉 ホテル紅葉館(岩手県花巻市)
- 宮沢賢治記念館(岩手県花巻市)
- 平泉駅(岩手県・平泉町)
- 高館義経堂(岩手県・平泉町)
- 中尊寺(岩手県・平泉町)
- 盛岡の北上川にかかる旭橋(岩手県盛岡市)
- 盛岡駅(岩手県盛岡市)
- 岩山展望台(岩手県盛岡市)
- 藤七温泉(岩手県八幡平市)
- 八幡平アスピーテライン展望所(岩手県八幡平市)
- 田沢湖(秋田県仙北市)
- 大曲駅(秋田県大仙市)
- 秋田駅(秋田県秋田市)
- 五所川原駅(青森県五所川原市)
- 斜陽館(青森県五所川原市)
- 能代駅(秋田県能代市)
- 酒田(山形県酒田市)
- 会津若松(福島県会津若松市)
- 東山温泉(福島県会津若松市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 小野寺誠:
32歳。京都生まれの若手建築家のホープ。真田健一郎の大学の後輩であり、有望な弟子の一人。 - 寺西由香里:
25歳。小野寺の恋人。真田健一郎の秘書。 - 真田健一郎:
建築家の大家。 - 真田美由紀:
真田健一郎の妻。 - 秋山はるか:
弁護士。小野寺誠の大学時代の同級生。 - 木塚真理:
小野寺誠の初恋相手。 - 藤原麻衣:
若手の建築家。真田健一郎の教え子の一人。 - 三木利夫:
田沢湖畔の山小屋で暮らす夫婦。東京から移住してきた。 - 三木香織:
三木利夫の妻。 - 佐々木浩一:
若手の建築家。真田健一郎の教え子の一人。 - 河野彰:
若手の建築家。真田健一郎の教え子の一人。
その他の登場人物
- 川岸良造:
日本不動産の社長。品川の超高層ホテルのオーナー。 - 神谷愛子:
女優。 - 矢野明:
40歳。秋山はるかが担当している事件の容疑者。
個人的な推しポイント
- 逃亡者の小野寺の視点、弁護士の秋山はるかの視点、警察の視点。それぞれの視点から物語が進行していく。
- 小野寺を追う十津川警部、小野寺をかくまう三木夫婦。このふたつが交錯したときの緊張感がたまらない。
- クライマックスの緊迫感がとく面白い。そこいらのドラマや映画よりよっぽどドキドキする。
総評
トラベルミステリー作家という職業は面白いだろうな、そう思う。
十津川警部と亀井刑事が田沢湖周辺で小野寺を捜索しているとき、次のような記載があった。
「湖面に目をやると、放水路が、湖面に突き出していて、そこから、ものすごい勢いで、水が、湖面に向かって吐き出されているのが、わかった。」
「今年は、雪が多かったせいなのか、その放水路から、湖面に向かって、大量の水が、音を立てて、流れ込んでいるのだ。それで、田沢湖の湖面も、いつもに比べて、水位が、高くなっているらしい。その証拠に、岸の辺りは、水に浸かってしまっている。」
これは想像で書いているのではなく、実際に田沢湖に取材に行ったのだろう。一般的な田沢湖の風景ではなく、冬に雪が多かったせいで、水位が高くなっている様子がありありと描かれている。
「作品創作×旅」。この2つの極上体験を同時に味わえる西村京太郎氏がうらやましい。
さて、本編は若手建築家のホープ、小野寺誠が恋人の寺西由香里殺害の第一発見者となり、そのまま逃走したため、容疑者になってしまうというストーリー。読者は物語の冒頭で小野寺誠が真犯人ではないとわかっているのだが、登場人物や事件がおこった情況をみたら、誰が犯人であるかはほぼわかっている。
したがって、小野寺誠がどうやって逃げていくのか?そして、真犯人までどうやってたどり着くのか?がメインとなるだろう。
さらに今回は十津川警部の視点も少ない。主人公は小野寺誠である。こういった点も十津川警部シリーズとしては珍しい試みだった。
クライマックスは緊迫感にあふれている。そこらのドラマや映画よりよほどドキドキするだろう。
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