初版発行日 1986年10月5日
発行出版社 講談社
スタイル 短編集
私の評価
鉄壁の時刻表トリックに十津川警部が挑む!表題作ほか、十津川班の活躍を描く全五編。
あらすじ
1.関門三六〇〇メートル
一一〇番で男から「キチが危ない」という連絡があった。狛江駅前の公衆電話からかけているらしい。男の電話が切れた後、狛江駅前で男の死体が発見された。この電話の意図は何か?この男は何者か?
2.裏切りの中央本線
警視庁捜査一課の西本刑事は、大学時代の同級生・崎田と急行アルプスに乗った。西本刑事は松本へ向かい、崎田は天竜峡へ向かった。西本刑事が松本駅で降りたとき、急行アルプスの六号車で死体が発見される。
3.臨時特急を追え
短編集「車窓に流れる殺意の風景」に収録。下記を参照↓↓
→「車窓に流れる殺意の風景」
4.最北端の犯罪
短編集「恋と哀しみの北の大地」に収録。下記を参照↓↓
→「恋と哀しみの北の大地」
5.特急「おき3号」殺人事件
山陰本線の出雲市駅に到着した特急「おき3号」の車内で、写真家の石田が刺殺体で発見された。怨恨の線から容疑者に浮上したのは、十津川の先輩で警視庁OBの政務次官・山崎の息子・徹だった。しかし、徹は同日、ハネムーンで山陰本線を走る寝台特急「富士」に乗っていた!
小説に登場した舞台
1.関門三六〇〇メートル
- 狛江駅前(東京都狛江市)
- 東京駅(東京都千代田区)
- 下関総合車両所(山口県下関市)
- 関門トンネル(山口県下関市&福岡県北九州市門司区)
- 小倉港(福岡県北九州市小倉北区)
- 徳島港(徳島県徳島市)
- 東京港フェリーターミナル(東京都江東区)
2.裏切りの中央本線
- 急行アルプス
- 急行こまがね
- 松本駅(長野県松本市)
- 松本城(長野県松本市)
- 岡谷駅(長野県岡谷市)
3.臨時特急を追え
短編集「車窓に流れる殺意の風景」に収録。下記を参照↓↓
→「車窓に流れる殺意の風景」
4.最北端の犯罪
短編集「恋と哀しみの北の大地」に収録。下記を参照↓↓
→「恋と哀しみの北の大地」
5.特急「おき3号」殺人事件
- 特急「おき3号」
- 出雲市駅(島根県出雲市)
- 寝台特急富士
- 宮崎駅(宮崎県宮崎市)
- 出雲縁結び空港(島根県出雲市)
登場人物
1.関門三六〇〇メートル
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。 - 北野:
国鉄の総裁秘書。 - 小野田:
国鉄の副総裁。 - 柴田敬:
29歳。今年の4月までK製薬の社員だった。中野のマンションに在住。狛江駅近くで死体となって発見された。 - 相川あや子:
26歳。K製薬の社員。柴田敬の恋人。 - はるこ:
中野にあるバー「泉」のママ。 - 白石:
下関署の警部。 - 秋山:
門司署の署長。
2.裏切りの中央本線
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 崎田:
27歳。西本刑事の大学時代の同級生。日南商事に勤務。 - 和多晴記:
30歳。世田谷にある富士運送のトラック運転手。四谷三丁目のマンションに在住。急行アルプスの車内トイレで刺殺される。 - 梅木かおり:
和多晴記の恋人。 - 吉田:
松本署の刑事。 - 沼田:
有楽町にあるK新聞社のデスク。 - 片山京子:
28歳。S銀行新宿支店に勤務。先月、三鷹の住宅火災で死亡した女性。 - 浜野健一:
私立探偵。石神井公園の自宅付近で殺害された。
3.臨時特急を追え
短編集「車窓に流れる殺意の風景」に収録。下記を参照↓↓
→「車窓に流れる殺意の風景」
4.最北端の犯罪
短編集「恋と哀しみの北の大地」に収録。下記を参照↓↓
→「恋と哀しみの北の大地」
5.特急「おき3号」殺人事件
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。 - 三浦:
島根県警の警部。 - 山崎晋太郎:
公安関係の政務次官。元警視庁の幹部。 - 山崎徹:
29歳。山崎晋太郎の息子で秘書。 - 山崎はるか:
山崎徹の妻。 - 石田友二:
写真家。特急「おき3号」の車内で刺殺される。 - 石田ゆう子:
石田友二の娘。ファッションデザイナー。 - 井上:
出版社の編集者。 - 中村:
出版社の編集長。 - 松本:
宮崎にあるNホテルの支配人。 - 今村:
寝台特急富士の専務車掌。
印象に残った名言、名表現
■一一〇番マニア。
何も事件が起きていないのに、一一〇番して来る人間がいる。いわゆる一一〇番マニアというやつだ。パトカーが出動して来るのを見たいので、電話するというのが意外に多いのである。
感想
今回の5作品の中で、「裏切りの中央本線」と「特急「おき3号」殺人事件」には、時刻表を使ったアリバイトリックが使われていた。
この時刻表のアリバイトリックは、作る側からすれば、かなり大変だと思う。列車、臨時列車、タクシー、バス、飛行機、船など、あらゆる選択肢の時間を計算しながら、トリックを作らなければならないからである。
確かに、現代では、インターネットを使って時刻表と最短ルート、その他のルートも検索できるようになったので、以前に比べて、楽にはなっただろう。
だが、臨時列車や観光列車の情報を完璧に網羅しているわけではないし、それをトリックとして造るのは容易ではない。トリックにするからには、誰もが考える当たり前のルートと、誰もが考えない非常識なルートの2つを用意しなければならないからである。
こうした時刻表トリックを何作品も編み出してきた、西村京太郎先生は、やはり偉大である。
コメント