初版発行日 2011年4月15日
発行出版社 双葉社
スタイル 長編
一乗谷朝倉氏遺跡が舞台!十津川警部、世界遺産目当てに群がる蟻を退治する!!
あらすじ
甲州街道の明大前付近に駐められていた車から、ゲームの神さまと呼ばれていた武井要の刺殺体が発見された。捜査を担当した十津川警部は武井が一年間滞在していた雨晴海岸の生活に着目した。そんな折、高岡駅近くの路地裏で殺人事件が発生した。その被害者と武井には意外なつながりがあり、十津川警部は富山県警との合同捜査に乗り出したが…。
小説の目次
- 幻の都
- フィギュアの女
- 朝倉氏の時代
- 再捜査の旅
- 事件の裏側
- 群がる蟻
- 最終列車
小説に登場した舞台
- 芦原温泉(福井県あわら市)
- 一乗谷朝倉氏遺跡(福井県福井市)
- 高岡駅(富山県高岡市)
- 越ノ潟駅(富山県射水市)
- 特急「しらさぎ」
- 福井駅(福井県福井市)
- 二上山(富山県高岡市)
- 雨晴海岸(富山県高岡市)
- 高岡警察署(富山県高岡市)
- 福井県立図書館(福井県福井市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
福井県警&富山県警
- 小林:
富山県捜査一課の警部。 - 中田:
福井県警捜査二課の警部。50歳。 - 佐藤:
福井県警の刑事。
事件関係者
- 加東肇:
35歳。農水省人事課の職員。独身。 - 佐々木茂:
『旅行タイムス』の編集長。 - 間下麻樹:
朝倉氏の29代目の子孫と名乗る女性。 - 間下美樹:
間下麻樹の妹。 - 武井要:
35歳。人気ゲーム「ゴーストサムライ」の作者。 - 前田清志:
『旅行タイムス』の同人メンバー。千歳烏山駅近くの喫茶店「日本海」を営む。 - 野口健太郎:
野口不動産の社長。資産家。 - 大西俊:
政治評論家。 - 高野雅之:
大西俊の秘書。
その他の登場人物
- 渡辺ゆり子:
一乗谷朝倉氏遺跡のガイド。 - 太田博之:
ゲーム開発者。武井要と一緒に仕事をしたことがある。 - 鈴木信明:
ゲーム開発者。最近まで武井要と一緒に仕事をしていた。 - 小野浩:
ゲーム開発者。最近まで武井要と一緒に仕事をしていた。 - 中林:
N大学の事務長。 - 高橋光太郎:
コスモ工業の課長補佐。武井要と大学時代に親しかった。 - 安藤:
福日新報の編集責任者。
印象に残った名言、名表現
■十津川警部の捜査哲学を如実にあらわしている言葉。
「犯人の動機、アリバイ、事件の関係者といったことを、地道に捜査していけば、自然に、犯人が浮かびあがってくると、私は、確信しています」
総評
本作は、一乗谷朝倉氏遺跡を舞台としている。
こうした一乗谷朝倉氏遺跡が世界遺産に登録されれば、大きな注目を集める。もちろん、大きな注目は大きなビジネスチャンスなのだ。大きなビジネスチャンスには、その蜜を吸おうとたくらむ、海千山千が無数に現れる。
今回の事件は、お金目当てに集まった”蟻”たちに、祭り上げられた女性を中心とした悲劇。この先のストーリーについては、自分で確かめてもらいたい。
ミステリーの本筋とは別になるが、本作は、”歴史ミステリー”なのではないか?というほど、一乗谷における朝倉氏の盛衰が詳細に記されており、歴史好きの読者も大いに満足できる作品である。
印象に残ったのは、一乗谷にまつわる和歌が数多く登場したこと。最後にそれをいくつか紹介しておこう。
(1)十五代将軍足利義昭を一乗谷に迎えたときに交わされた足利義昭の歌。
もろ共に 月も忘るな糸ざくら 年の瀬ながき 契と思はば
(2)十五代将軍足利義昭を一乗谷に迎えたときに交わされた朝倉義景の歌。
君が代の 時にあひあふ糸桜 いとも かしこき けふのことの葉
(3)大伴家持が雨晴海岸から立山を見て、詠んだ歌。
立山に降り置ける雪を常夏に 見れども飽かず 神からなし
(4)大伴家持が二上山を詠った歌。
玉くしげ二上山に鳴く鳥の 声の恋しき時は来にけり
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