初版発行日 1992年9月25日
発行出版社 中央公論社
スタイル 長編
私の評価
【POINT】
西本刑事が殺人容疑で逮捕！？十津川警部がこの難局を突破するために取った策とは!?
西本刑事が殺人容疑で逮捕！？十津川警部がこの難局を突破するために取った策とは!?
あらすじ
ハネムーンで殺された新妻との思い出の地、十和田湖で、西本刑事は亡き妻そっくりの女性・みな子に出会う。しかし彼女は猪苗代湖からの手紙を残し姿を消し、何者かに殺害されてしまう……。殺人の容疑者として勾留された部下である西本刑事の窮地を救うために、十津川警部は、美しい湖面の下に隠された恐ろしい真相を探るが捜査は難航する。
小説の目次
- 出会い
- 消えた男
- 逢引き
- 尋問
- 鎌倉
- ロワール地方
- 裏切りの過去
- 突破口を求めて
- 対決をめざして
- 個展
- 静かな湖
- 最後の賭け
冒頭の文
刑事には、旅行が趣味という者が多い。
小説に登場した舞台
- 上野駅（東京都台東区）
- 盛岡駅（岩手県盛岡市）
- 特急「はつかり9号」
- 青森駅（青森県青森市）
- 浅虫温泉（青森県青森市）
- 萱野茶屋（青森県青森市）
- 酸ヶ湯温泉（青森県青森市）
- 十和田湖（青森県十和田市）
- 東京駅（東京都千代田区）
- 郡山駅（福島県郡山市）
- 特急「ばんだい11号」
- 猪苗代駅（福島県・猪苗代町）
- 猪苗代湖（福島県・猪苗代町）
- 野口英世記念館（福島県・猪苗代町）
- 天鏡閣（福島県・猪苗代町）
- 鎌倉駅（神奈川県鎌倉市）
- 国立駅（東京都国立市）
- 平塚駅（神奈川県平塚市）
- 湘南スターモール商店街（神奈川県平塚市）
- 宮城刑務所（宮城県仙台市若林区）
- 新宿西口（東京都新宿区）
- 成田空港（千葉県成田市）
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三：
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄：
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明：
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一：
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗：
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 清水新一：
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 樋口：
警視庁捜査一課のベテラン刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長：
刑事部長。十津川警部の上司。
刑事関係者
- 中村：
福島県警の刑事。 - 小高：
福島県警の刑事。 - 後藤：
福島県警の警部。 - 上原：
科研の技官。
事件関係者
- 小菅みな子：
銀座にあるS画廊に勤務。西本刑事が十和田湖で出会った女性。天鏡閣で絞殺死体となって発見された。 - 磯辺功一郎：
32歳。画家。国分寺市内のマンションに在住。福島県出身。猪苗代湖近くの雑木林で死体となって発見された。 - 木之内順子：
52歳。銀座にあるS画廊のオーナー。鎌倉に在住。夫の木之内康夫がフランスで磯辺の運転する車にはねられて死亡した。 - 木之内康夫：
木之内順子の夫。3年前、フランスで車にはねられて死亡する。 - はるみ：
新宿歌舞伎町にあるバーのホステス。 - 二宮ゆみ子：
死んだ西本刑事の妻。 - 二宮：
二宮ゆみ子の父親。平塚駅前商店街にある「二宮菓子店」の店主。 - 二宮君子：
二宮ゆみ子の母親。 - 白木徹：
30歳。サラリーマン。二宮ゆみ子殺害で逮捕され宮城刑務所に服役中。 - 新井恒夫：
55歳。中野坂上に事務所をかまえる弁護士。白木徹に定期的に面会している。 - 山下：
猪苗代のタクシー運転手。猪苗代湖に沈んでいた車の中で死体となって発見された。 - 本橋竜太：
新人画家。
印象に残った名言、名表現
■嫉妬する西本刑事。
明らかに、嫉妬だと、自分でも、感じた。磯辺に、嫉妬しているのだ。自分が、平刑事で、画家でないことが、口惜しかった。
感想
まず、十和田湖と猪苗代湖の描写が秀逸だった。
十和田湖については、西本刑事が死んだ妻との思い出の地であり、西本刑事の思い出とシンクロさせながら、十和田湖を描いていった。途中からは、十和田湖で出会った女性・小菅みな子に、西本刑事が惚れ、今度は、西本刑事の恋心とシンクロされながら、十和田湖や猪苗代湖の情景描写が展開された。
その後は、西本刑事が殺人容疑で逮捕されてしまうという、ショッキングな展開。
もちろん、西本刑事の逮捕は冤罪なのだが、この事件の根本は、死んだ西本刑事の妻・二宮ゆみ子の殺害事件ともリンクしており、過去作品との繋がりが見える、面白い展開だった。
過去作品と直接的に連携させるのは、十津川警部シリーズでは、珍しいのではないかと思う。
中盤以降は、サスペンスフルな展開になるが、この後の経過と結末は、本書を手にとって、確かめてもらいたい。
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