初版発行日 2007年9月10日
発行出版社 祥伝社
スタイル 長編
私の評価
首のない三つの殺人!「卑弥呼の金印」が事件の鍵?東京・京都=鞍馬・福岡=太宰府。十津川警部、東奔西走!
あらすじ
首のない他殺体が東京で発見、直後、京都、福岡でも同様の事件が起こった。現場には「正義之国王」という署名と、国宝「金印」の朱印の押された死刑宣告文が遺されていた。凄惨な連続殺人と「金印」につながりは?捜査に乗り出した十津川は、三つめの朱印が史書にしか記されていない女王卑弥呼の「もう一つの金印」であることを知る。本物か?古代史学界が騒然となる中、実物を発見したと主張する謎の団体「アドベンチャー・ジャパン」が、幹部の一人を連続殺人の犯人として告発した……。
小説の目次
- 首なし死体
- 三人目の犠牲者
- 挑戦者
- ある取引
- 深まる謎
- 三ひく一は二
- 終局
冒頭の文
八〇五号室から異臭がすると、中目黒のマンションの住人が騒ぎ出したのは、寒さも和らいだ、三月五日のことだった。
小説に登場した舞台
- 福岡空港(福岡県福岡市博多区)
- 福岡市博物館(福岡県福岡市早良区)
- 志賀島(福岡県福岡市東区)
- 金印公園(福岡県福岡市東区)
- 京都駅(京都府京都市下京区)
- 博多駅(福岡県福岡市博多区)
- 太宰府(福岡県太宰府市)
- 鎌倉(神奈川県鎌倉市)
- 旧軽井沢(長野県・軽井沢町)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上本部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 篠原:
京都府警の警部。 - 加藤:
福岡県警の警部。
アドベンチャー・ジャパン
- 大日向浩志:
55歳。アドベンチャー・ジャパンの代表。弁護士。 - 織田澤芙蓉:
大日向浩志の秘書。 - 伊藤慶吾:
30歳。大日向浩志の秘書。 - 渡辺孝:
40歳。アドベンチャー・ジャパンの幹部。首なし連続殺人の犯人と名指しされた男。 - 岡田龍三郎:
アドベンチャー・ジャパンの幹部。 - 戸川守:
35歳。アドベンチャー・ジャパンの幹部。 - 福田久雄:
S銀行の渋谷支店に勤務。元アドベンチャー・ジャパンのメンバー。
事件関係者
- 浅井直也:
52歳。京都にあるK大学の助教授。日本古代史研究会の会員。木村利香の部屋で首なし死体として発見された。 - 稲川友之:
45歳。東京都世田谷区に住む会社員。日本古代史研究会の会員。京都の鞍馬の森の中で首なし死体として発見された。 - 小山多恵子:
日本古代史研究会の会員。稲川友之の恋人。福岡太宰府の近くで首なし死体として発見された。 - 木村利香:
30歳。フリーの秘書。浅井直也の死体が発見された部屋を借りていた女。行方不明。 - 原口:
64歳。京都にある国立大学の教授。古代史研究の権威。 - 石川:
福岡にある国立大学の教授。古代史研究の権威。 - 御手洗:
東京にある国立大学の教授。古代史研究の権威。先月、病死した。 - 土屋明日香:
銀座のクラブのママ。戸川守の恋人。 - 成瀬光一:
元整形外科医。
その他の登場人物
- 井上:
中目黒のマンションの管理人。 - 浅井悦子:
浅井直也の妻。 - 水木克男:
東京都内にある中学校の教師。稲川友之の同僚。 - 青木美佐子:
木村利香の大学時代の友人。 - 原田亜希:
渋谷区内にある中学校の教師。木村利香の大学時代の友人。 - 久保:
58歳。S女子大学の教授。木村利香の母校の教授。 - 三沢伸子:
50歳。作家。S女子大学出身。 - 小野寺:
京都にある日本古代史研究会本部の事務局長。 - 木下:
日本古代史研究会九州支部の事務局長。 - 秋山:
弁護士 - 田口:
中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。 - 矢野透:
65歳。日本歴史記念館の館長。 - 神田:
調布市深大寺に住む資産家。矢野透の友人。 - 藤田肇:
国立博物館の館長。
印象に残った名言、名表現
■人間の真理。
「アブク銭が貯まると、人間というものは、おかしなものでね。やたらと高いものを、買いたくなるんだよ。世界の名画を集めたり、骨董品を買ったり、あるいは、日本に一台しかないような、高価な車をかったりね」
感想
本作は、親魏倭王の金印をめぐっておきた、殺人事件である。
本作については、西村京太郎先生から発表された「作者のことば」をみた方がわかりやすいので、紹介しよう。
日本では古くから、二つの金印が、どこかに存在するはずだといわれてきた。一つは、西暦五七年に、九州にあったと思われる奴国の王が、後漢に使者を送り、当時の光武帝から金印を送られた。これが有名な「漢委奴国王」の印で、一七八四年、筑前福岡の志賀島で見つかっている。もう一つは、西暦二三九年、邪馬台国の女王、卑弥呼が、魏に使者を送り、その時に贈られたはずの「親魏倭王」の金印だが、いまだに発見されていない。発見されれば、日本古代史にとって、画期的なことになるだろうし、もし、九州で見つかれば、邪馬台国九州説の大きな根拠になる。今回の小説は、この謎に包まれた金印が発見されたら、どんな騒ぎになるかを書いたものである。
この作品も、2000年代以降の十津川警部シリーズに多い、”歴史組込型ミステリー”や”歴史のifをめぐるミステリー”のように、見えるかも知れない。
確かに、その一面もあるが、この作品については、歴史要素とミステリーのバランスが、程よく保たれている。そのため、歴史を学ぶ書物にもなるし、ミステリーとしても十分楽しめる作品だ。
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