初版発行日 2010年5月25日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 長編
私の評価
大臣を乗せた新幹線に届いた恐るべき爆破予告!十津川警部、室蘭と東京を結ぶ愛と殺意の連鎖に挑む!!
あらすじ
「母恋」と書いて、「ぼこい」と読む。室蘭本線にある小さな駅の駅名だ。事件の謎を解くカギがそこにある。北海道に飛んだ十津川警部は、そこで奇妙な事実につきあたる。犯人と思われる女性と同じ名前の女は、すでに死亡しているというのだ。謎を抱えたまま帰京した十津川警部を待っていたのは、第2、第3の殺人事件だった。
小説の目次
- 母を恋うる唄
- 室蘭本線
- 第二の犠牲者
- 深夜のビル
- 死亡診断書
- 最後のひとり
- 告白
冒頭の文
五月六日の夜、六本木の十八階建ての雑居ビル、その十七階にあるカラオケクラブで、五人の男女が、楽しんでいた。
小説に登場した舞台
- 羽田空港(東京都大田区)
- 函館空港(北海道函館市)
- 函館駅(北海道函館市)
- 特急「北斗」
- 東室蘭駅(北海道室蘭市)
- 母恋駅(北海道室蘭市)
- 室蘭駅(北海道室蘭市)
- 室蘭市役所(北海道室蘭市)
- 世田谷区役所(東京都世田谷区)
- 函館朝市(北海道函館市)
- 金森赤レンガ倉庫(北海道函館市)
- 湯の川温泉(北海道函館市)
- 函館山(北海道函館市)
- 茅野駅(長野県茅野市)
- 軽井沢駅(長野県・軽井沢町)
- 東京駅(東京都千代田区)
- 名古屋駅(愛知県名古屋市中村区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 柴田:
室蘭警察署の警部。 - 田中:
50歳。室蘭警察署の刑事。早乙女みどりの高校時代の同級生。 - 福山:
成城の派出所の巡査。 - 井崎:
北海道警捜査一課の警部。
事件関係者
- 井ノ口博也:
60歳。R製薬の社長。六本木のカラオケクラブで服毒死した。 - 川口光一郎:
代議士。厚生労働大臣。井ノ口博也の大学時代の同級生。 - 早乙女みどり:
50歳。銀座にある高級クラブのママ。成城のマンションに在住。室蘭市母恋町出身。去年の10月に病死している。 - 早乙女由紀:
25歳。早乙女みどりの娘。 - 本間敬之助:
50歳。俳優。東京スタークラブに在籍。函館山の山頂謎の女に刺殺された。 - 瀬戸晴子:
50歳。銀座にある瀬戸ビルのオーナー。瀬戸企画の社長。武蔵小金井の住宅に在住。事務所で謎の女にボーガンで撃たれて死亡する。 - 蘇我良太郎:
48歳。蘇我病院の院長。早乙女みどりの死亡診断書を書いた医師。 - 高野妙子:
蘇我良太郎の元妻。現在は長野県の茅野市にある診療所の医師として働いている。 - 大島秀夫:
銀座にあるクラブ「みどり」のマネージャー。 - 伊藤詩織:
銀座にあるクラブ「みどり」のホステスをしていた女性。
その他の登場人物
- 及川雅之:
35歳。R製薬営業第一課の課長補佐。井ノ口博也の縁戚。 - 速水亜紀:
30歳。井ノ口博也の秘書。 - 今井優花:
33歳。赤坂にある美容整形外科の医師。 - 岩崎明:
神田にある雑誌社の編集者。 - 小柳:
62歳。六本木にあるRビルに入るバーのバーテン。 - 川端:
室蘭新報の記者。 - 鈴木:
世田谷区役所の職員。 - 矢木:
新宿にある「週刊ロマンス」社の記者。 - 柿沼:
中央テレビのプロデューサー。 - 島崎あかね:
中央テレビのアナウンサー。 - 杉田:
函館のタクシー運転手。 - 綿貫:
函館のタクシー運転手。 - 脇田満:
60歳。芸能プロダクション「東京スタークラブ」の社長。 - 土屋信雄:
俳優。江東区のマンションに在住。 - 金井敬子:
女優。土屋信雄の妻。 - 松永亜紀:
55歳。銀座四丁目にあるクラブ「亜紀」のママ。早乙女みどりと親しくしていた。 - 三浦邦子:
六本木ヒルズ近くにあるクラブのママ。早乙女みどりと親しくしていた。 - 斉藤敦子:
60歳。瀬戸晴子の家政婦。 - 樋口三郎:
瀬戸企画の経営顧問。 - 木村:
早乙女みどりが住むマンションの管理人。 - 南原:
軽井沢にある川口光一郎の別荘の管理人。 - 真田:
川口光一郎のSP。 - 関根:
川口光一郎のSP。 - 盛田:
川口光一郎の秘書官。 - 小林:
東海道新幹線の車掌。
印象に残った名言、名表現
■母恋弁当。
母恋の語源が、アイヌ語の、ホッキ貝の採れるところというだけに、母恋弁当の中身も、ホッキ貝の炊き込みご飯だった。
感想
本作は、殺人事件が起こるシーンからスタートする。その後、2件続けて殺人事件が発生する。この段階で、”ある女”が犯人であることがわかっている。
この女の実像をつかむことが捜査のテーマになった。
物語の中盤で、今回の事件の大まかな全体像がつかめるようになっている。病死に見せかけて母親を殺された娘が、その復讐をしているのである。
そのため、十津川警部たちは、病死として処理された過去の事件から、洗い直し、この殺人事件の証明もすることになったのである。
捜査については、関係者のすべてを洗い出し、一つ一つ地道に話を聞いていき、それぞれの話を丁寧に検証して、事件のストーリーを組み上げていてくスタイル。
小さいけれど、一歩一歩真相に近づき、犯人を追い詰めていくという実感が伝わってくる。一つ難点をあげれば、登場人物が多すぎて、一人ひとりのキャラが薄まってしまっていることである。
登場人物が多すぎることを除けば、派手さはないが、良作だったと思う。
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