初版発行日 2013年1月25日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 長編
私の評価
戦国時代の因縁が殺人事件を起こした!?武田信玄、浅井長政、織田信長の争いが現代に蘇る!
あらすじ
テレビの骨董鑑定番組に女が武田信玄の掛軸を持ち込み、3人の鑑定家のなかで1人だけ500万円の値をつけた。その戦国史研究家が後日、女が経営する喫茶店「風林火山」を訪ねると、店内で見知らぬ女が絞殺されていた。そして壁には「風が殺した」の文字が……。被害者は誰なのか?掛軸の持ち主はどこへ消えたのか?手がかりを追って、十津川警部は滋賀県大津市へ飛んだ!!
小説の目次
- 風が殺した
- 林の中を探せ
- 寺の歴史
- 狂気の男
- 焼身自殺
- 夢と狂気
- 狂気の終わり
冒頭の文
「鑑定アップダウン」という番組は、中央テレビの中でも、高視聴率を誇る人気番組である。
小説に登場した舞台
- 大津市歴史博物館(滋賀県大津市)
- 瀬田の唐橋(滋賀県大津市)
- 嵐山駅(京都府京都市右京区)
- 京都駅(京都府京都市下京区)
登場人物
事件関係者
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。 - 三上本部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
事件関係者
- 浅井孝子:
30歳。浅草の千束で喫茶店「風林火山」を営む。鑑定アップダウンに武田信玄の掛軸を出品した女性。 - 高橋昭典:
S大学の教授。戦国時代の研究家。行方不明になる。 - 高橋美奈:
28歳。出版社に勤める雑誌記者。高橋昭典の妹。 - 織田美穂:
26歳。織田電機の社長の娘。浅井孝子が営む喫茶店「風林火山」で死体となって発見された。 - 伊那啓介:
55歳。浅井孝子の父親。大津市の市立図書館の館長。 - 浅井洋子:
40歳。京都に住む健康食品会社の社長。 - 織田清:
65歳。織田美穂の父親。織田電機の社長。織田信長の子孫。 - 中山雄介:
織田清の秘書。 - 権藤正:
檀家総本。
その他の登場人物
- 小川健三郎:
鑑定アップダウンの司会者。 - 三浦:
武田家の研究家。 - 平:
滋賀県警の警部。 - 小森いずみ:
30歳。浅井孝子の高校時代の親友。 - 坂巻:
京都府警捜査一課の警部。 - 岩沼恵:
26歳。織田美穂の大学時代の友人。 - 橋本豊:
私立探偵。元警視庁捜査一課の刑事で十津川警部の部下。 - 田中敬一郎:
60歳。京都の元檀家。 - 杉浦雅陵:
京都に住む日本画家。
印象に残った名言、名表現
■瀬田の唐橋。
戦国時代、この橋を何人もの武将が、京に向かって渡っていった。明智光秀に、殺された織田信長も、天下布武のために、この橋を渡っていった。
武田信玄は、この橋を渡る前に、死んでしまった。その一子、武田勝頼への遺言は、「瀬田に旗を立てよ」である。
感想
本作は、武田信玄、武田勝頼、浅井長政、織田信長の歴史事実を、物語の中に組みこんだ、歴史組み込み型ミステリー作品である。
本作を読み、改めて考えたのは、「もし、武田信玄が死なずに、織田信長と戦ったら、どちらが勝ったのだろうか?」という、戦国時代ファンなら、一度は、考えたことのある、歴史のifである。
武田信玄、浅井長政、織田信長のファンならば、本作を楽しめるのではないだろうか?
入り口は、武田信玄を描いた掛軸だが、ここから、武田家の歴史、浅井長政と織田信長の因縁、武田信玄と織田信長の因縁の歴史へと、話は飛躍していく。
本編では、浅井長政+武田信玄グループvs織田信長グループの対決という構図になる。これは、戦国時代の因縁の歴史そのままの構図になっているのだ。
そして、最終章、因縁の地、瀬田の唐橋で”戦争”がおこる。この戦いは、400年以上前の因縁が、現代に蘇ったとも言えるほどの、激しさだったと思う。
ちなみに、十津川警部シリーズでは、こうした歴史小説組み込み型の作品が、多数刊行されている。
例えば、徳川家康公の死因の謎や東海道にまつわる歴史を描いた「謎と裏切りの東海道-徳川家康を殺した男」、出雲大社や日本の神道の歴史がテーマの「出雲 神々の殺人」、もし、柴田勝家が豊臣秀吉に勝利したら?という歴史のifを描いた「湖北の幻想」。
さらに、天草四郎の島原の乱にまつわる歴史がテーマの「天草四郎の犯罪」、日本の太平洋戦争の終戦がテーマの「八月十四日夜の殺人」、忠臣蔵の歴史小説を組み入れた「三河恋歌」、鎌倉幕府3代の盛衰の歴史小説を組み入れた「修善寺 わが愛と死」、桃太郎伝説の歴史小説を作中に組み入れた「吉備 古代の呪い」などがある。
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