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「私が愛した高山本線」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

私が愛した高山本線小説

初版発行日 2013年6月10日
発行出版社 実業之日本社
スタイル 長編

私の評価 4.5

POINT】
連続殺人事件の被害者は、探偵事務所の女性探偵とその依頼人!古い家並みを残す町、飛騨高山、風の盆で名高い八尾。美しき日本の原風景の中に、連続殺人事件解決ヒントがあった。2010年代の十津川警部シリーズ、名作の一つ。
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あらすじ

最初に殺されたのは、失踪した姪の行方を捜して欲しいと探偵事務所に依頼してきた建設会社の社長だった。しかし、その依頼を受けて捜索に当たっていた女性探偵もビルから突き落とされて殺された。不可解な連続殺人事件の背後に見え隠れするのは、野望と欲望が渦巻く、血なまぐさい男たちの戦いの世界だった!

小説の目次

  1. 女私立探偵
  2. 高山さんまち
  3. 五年前の漢方薬
  4. ミス・高山本線
  5. 彼女の日記
  6. 対決へ
  7. たったひとりの風の盆

冒頭の文

私立探偵の橋本豊は、今まで、一人で仕事をやっていたのだが、今年の四月から、前から仕事仲間の、佐々木恵美、二十五歳と二人で、私立探偵事務所を、立ち上げた。

小説に登場した舞台

  • 特急ワイドビューひだ
  • 下呂駅(岐阜県下呂市)
  • 高山駅(岐阜県高山市)
  • さんまち通り(岐阜県高山市)
  • 越中八尾駅(富山県富山市)
  • 下呂温泉(岐阜県下呂市)
  • 飛騨金山駅(岐阜県下呂市)
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登場人物

警視庁捜査一課

  • 十津川警部:
    警視庁捜査一課の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。
  • 西本明:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 日下淳一:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 北条早苗:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三田村功:
    警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
  • 三上本部長:
    刑事部長。十津川警部の上司。

事件関係者

  • 橋本豊:
    私立探偵。元警視庁捜査一課の刑事で十津川警部の元部下。
  • 佐々木恵美:
    25歳。私立探偵。橋本豊とともに、渋谷区初台に「ツイン探偵事務所」を立ち上げる。高山出身。
  • 青木理江子:
    ツイン探偵事務所の事務員。
  • 足立伸之:
    35歳。佐々木恵美の夫。弁護士。新橋にある向井法律事務所に勤務。
  • 御園生加奈子:
    18歳。大学一年生。両親は死亡しており、伯父が後見人になっている。行方不明。
  • 土井洋介:
    60歳。土井建設の社長。御園生加奈子の伯父。ツイン探偵事務所に御園生加奈子捜索の依頼をした。自宅近くの公園を散歩中、何者かに刺殺される。
  • 土井妙子:
    40歳。土井洋介の妻。六本木のクラブのママ。
  • 柴崎憲子:
    高山にある柴崎薬局の娘。佐々木恵美の高校時代の同級生。
  • 柴崎史郎:
    柴崎憲子の兄。5年前に自殺している。
  • 佐々木秀雄:
    佐々木恵美の父親。高山で佐々木薬局を営んでいた。5年前、火事で亡くなる。
  • 佐々木弓子:
    佐々木恵美の母親。5年前、踏切事故で亡くなる。
  • 三浦:
    61歳。越中八尾にある三浦製薬の社長。
  • 川辺新太郎:
    保守党の大物政治家。岐阜県選出の国会議員。元厚生大臣。次期総理大臣の有力候補。
  • 片岡克彦:
    川辺新太郎の秘書。
  • 中田勲:
    川辺新太郎の秘書。

その他の登場人物

  • 五味秀子:
    土井家のお手伝い。
  • 田中久美:
    御園生加奈子の大学の同級生。高校時代からの親友。
  • 佐伯:
    世田谷警察署の刑事。
  • 大下:
    墨田警察署の刑事。
  • 上村:
    高山警察署の警部。
  • 田島:
    中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。
  • 岡本健治:
    川辺新太郎の元秘書。

印象に残った名言、名表現

(1)下呂温泉で起きた過去の事件。

列車は、下呂温泉に着いた。以前、十津川たちは、ここで降り、犯人が、この温泉町を、見下ろす山に埋めた死体を、掘り起こしたことがあった。

(2)最近の若者の傾向。

相変わらず、通りは、若い観光客で賑わっている。最近の若い人たちは、歴史に興味を持つように、なったのだろうか?それとも、歴史の残る町への興味なのか?

(3)高山の町の美しさ。

川に出た。朱塗りの中橋がある。高山を紹介する時に、よく写真に出てくる朱塗りの橋である。人力車が、十津川の横を、走りぬけていった。

高山という町は、京都に似せて、市内が基盤の目のようになっている。それだけに、古い建物がよく似合う。

(4)十津川警部の観察眼。

明らかに、橋本は、恵美のことが、好きだったのだ。だから、ここに来て、彼女のことを、聞くと、悲しくもあり、また、嬉しくもあるのだろう。

感想

本作は、間違いなく、2010年代に刊行された十津川警部シリーズの中で、上位に入る名作である。

ストーリー全体に漂う緊迫感とスピード感、高山の美しい景観描写と旅情、登場人物たちの人間ドラマ、パズルを組み立てるようなロジカルな推理、納得感のある結末。

すべてがバランス良く調和した、最高のミステリー小説であったと思う。

また、本作では、十津川警部の相棒は亀井刑事ではなく、私立探偵の橋本豊であった。これも、いつもと違う、新鮮さがあった。

最後の風の盆のシーンも素晴らしい。これまでの緊張感から開放された、優しい時間が流れていた。事件の真相とは関係ないので、風の盆のシーンの一部を紹介しておく。

越中八尾駅に着くと、多くの乗客が降りた。誰もが、今日から始まっている「風の盆」を見物に来たか、あるいは、踊りに来たかのどちらかだろう。

すでに、太鼓や三味線、そして、「風の盆」のやさしい鼓弓の音が、町中に流れていた。

憲子は、どこで、用意したのか。いつの間にか踊り子の衣装に着替えていた。和服姿になり、顔を隠す編み笠をかぶり、手には三味線を、持っていた。

橋本は、川原に腰を下ろし、闇の中から聞こえてくる三味線の音、太鼓の音、そして、鼓弓の音、静かな歌声を、じっと、聞いていた。

こうした作品を読むと、頭が冴える。感情が豊かになる。すばらしい。

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