初版発行日 2009年4月19日
発行出版社 双葉社
スタイル 長編
特急オーシャンアロー号がトレインジャックされた!犯人は、アメリカの駐日大使を人質にとり、20億円の要求をしている。同じ車両に十津川警部の妻・直子も乗車していた。事態を重くみたアメリカ政府は、米軍を現地に派遣する。犯人と米軍との間で、十津川警部は難しい判断を迫られる!
あらすじ
京都を出発した特急オーシャンアロー17号。その列車には、次期駐日大使のウィリアム・コテッティ、その夫人と娘、それに白浜に向かう十津川警部の妻直子と叔母の美津子も乗車していた。異変に気づいたのは、美津子だった。停車予定の天王寺を通過したのだ。直子は、十津川警部からの電話でそれを告げた。
そして、犯人と称する男が外務省に電話をしてきた。神木昌幸とそのグループと名乗り、トレインジャックしたとしてコテッティ一家の身代金として日米両国で合わせて10億円、ほかの100人を超す乗客乗員の身代金として、JP西日本に対して10億円を要求してきた。
そのうち、その列車には生け花の小暮流家元、小暮龍園が乗車していること、主犯格がフランスの外人部隊にいて、ギニアで政府軍に雇われて反政府ゲリラと戦っていた高木健介という男であることがわかった。そして、アメリカ政府は、ギニアのアメリカ大使射殺は高木の仕業と見ておりアメリカ軍も動き出してきた。さまざまな思惑が錯綜する中、十津川は犯人逮捕と乗客の安全確保の双方ができるのか――。
小説の目次
- 南紀の旅
- 京都発新宮行
- 混乱
- 予期せぬ展開
- 動く
- 最後の賭け
- 全ての終わり
冒頭の文
外務省北米局北米第一課課長の中田は、面倒な仕事をいいつかって、少しばかり戸惑っていた。
小説に登場した舞台
- 成田空港(千葉県成田市)
- 柊家(京都市中京区)
- 清水寺(京都市東山区)
- 渡月橋(京都市右京区)
- 金閣寺(京都市北区)
- 新大阪駅(大阪市淀川区)
- オーシャンアロー号
- 下里大橋(和歌山県・那智勝浦町)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 柿沼:
和歌山県警の警部。 - 岩田:
和歌山県警の本部長。 - 柴田:
京都府警捜査一課の警部。
JR西日本
- 水沼敬一郎:
51歳。JR西日本の渉外部長。大阪在住。三軒茶屋にある神木昌幸の部屋で死んでいるのが発見された。 - 井上:
JR西日本の総務部長。 - 高橋:
JR西日本の営業部長。 - 菅原:
JR西日本の営業課長。 - 田辺:
JR西日本の社長秘書。 - 黒木:
特急オーシャンアロー号の運転士。
事件関係者
- 中田:
外務省北米局北米第一課長。 - ウィリアム・コテッティ:
アメリカの新しい駐日大使。 - マーガレット:
ウィリアム・コテッティの妻。 - リサ:
ウィリアム・コテッティの娘。 - 神木昌幸:
50歳。神木明の父親。息子が亡くなった事故で、JR西日本に賠償を求めていた。 - 高木健介:
35歳。元フランスの外人部隊。 - 新田:
高木健介の仲間。 - 内藤:
高木健介の仲間。 - 鈴木:
高木健介の仲間。 - 横田:
高木健介の仲間。 - 佐々木脩:
NGO「アフリカの命」の責任者。 - 十津川直子:
十津川警部の妻。 - 美津子:
十津川直子の叔母。 - 小暮龍園:
生花の家元。 - 槌田透:
40歳。小暮龍園の高弟。
その他の登場人物
- 楠:
大阪グランドホテルの社長。 - 青木:
外務省北米局長。 - 三浦伸一:
大阪に住む30代の男。高木健介の友人。 - 益田:
50歳。かつてフランスの外人部隊にいた。
印象に残った名言、名表現
■十津川警部の妻、直子の叔母は大阪在住の資産家。
「大阪というと、奥さんの、確か親戚の人が住んでいるんでしたね?」
「叔母さんというのは、大変なお金持ちだとおききしたことがあるんですが」
感想
本作は、トレインジャックから人質を救出し、犯人を逮捕する、ノンストップアクションミステリーである。
序盤はスロースタートである。外務省の中田が、アメリカの新しい駐日大使に京都案内をするという、旅情たっぷりにストーリーが進行する。
しかし、いざトレインジャックが始まるや、ストーリーの緊張感は一気に増す。特急オーシャンアロー号が、止まるはずだった天王寺駅を超え、和歌山駅を超えたあたりで、トレインジャックされたことが明らかになる。そこから、最終盤まで息つく暇もなく、ノンストップで駆け抜ける。
そのスピード感が素晴らしい。
謎解きミステリー、心理トリック、アリバイ崩し、ロジカルな捜査だけでなく、こうしたアクションも描ける西村京太郎先生の筆さばきに、ただただ感嘆するだけである。
コメント