初版発行日 1984年7月5日
発行出版社 講談社
スタイル 長編
私の評価
北陸を舞台に人間の心の”二面性”を描く、旅情ミステリー。
あらすじ
金沢のホテルから失踪した学生時代の親友を探すため、理沙は上野から寝台特急「北陸」に乗った。早朝、後頭部を殴られて理沙は昏倒。気がつくと寝台に運ばれていて、隣には旧知の男性の刺殺体が! 当然、理沙に殺人容疑がかけられる。一方、東京で捜査を進める十津川と亀井も「北陸」に乗り込むが……。
小説の目次
- 城下町金沢への旅
- 広告会社
- 追跡
- 第二の殺人
- 北陸の宿
- 男と女の関係
- 越前海岸
- 水死体
- 疑惑の中で
- ホテル
- 裏切りの終り
冒頭の文
高橋理沙が、太洋物産に勤めて三年になる。
小説に登場した舞台
- 上野駅(東京都台東区)
- 寝台特急「北陸」
- 水上駅(群馬県・みなかみ町)
- 金沢駅(石川県金沢市)
- 新橋駅(東京都港区)
- 目黒駅(東京都目黒区)
- 兼六園(石川県金沢市)
- 金沢城公園(石川県金沢市)
- 尾山神社(石川県金沢市)
- 片町商店街(石川県金沢市)
- 犀川大橋(石川県金沢市)
- 福井駅(福井県福井市)
- 芦原温泉(福井県あわら市)
- 東尋坊(福井県坂井市)
- 荒磯遊歩道(福井県坂井市)
- 特急「雷鳥13号」
- 富山駅(富山県富山市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 青木:
石川県警の部長刑事。 - 安田:
石川県警の警部。 - 仁科:
福井県警の部長刑事。
事件関係者
- 高橋理沙:
25歳。太洋物産の社員。 - 神木美也子:
25歳。高橋理沙の大学時代の友人。富山で両親が営む旅館を手伝っている。 - 本田めぐみ:
25歳。高橋理沙の大学時代の友人。イラストレーター。六本木のマンションに在住。「新日本イラストの会」の会員。金沢で行方不明になる。 - 井崎徹:
29歳。銀座にある広告会社NNNの社員。目黒のマンションに在住。本田めぐみの恋人だった。寝台特急「北陸」の車内で何者かに刺殺された。 - 矢代達夫:
28歳。売れないイラストレーター。「新日本イラストの会」の会員。巣鴨のアパートで死体となって発見された。 - 折戸けい子:
21歳。福井にあるK短大に通う短大生。東尋坊で水死体となって発見された。
その他の登場人物
- 小林:
広告会社NNNの制作部長。 - 伊東:
広告会社NNNの社員。 - 山口昌夫:
イラストレーター。「新日本イラストの会」の会員。原宿のマンションに在住。 - 奥田幸子:
26歳。元イラストレーター。今は結婚して主婦をしている。 - 平井:
S大学の助教授。 - ユミ子:
銀座にあるクラブ「あき」のホステス。井崎徹行きつけのお店だった。 - 田原:
N製薬の営業部長。
感想
本作のテーマは、「人は変わる」である。
学生時代の友人とひさしぶりに再会したが、学生時代と同じような空気感で話せず、会話もどこか噛み合わない。誰しも一度はこのような経験をしているはず。
なぜなら、人は変わるからである。卒業後、社会人になって、いろいろな経験を重ねる中で、自分も変わってしまったし、友人も変わってしまったのだ。
本作では、もっと劇的に変わってしまった人物が描かれる。社会に出て、大人の汚い部分を知り、どんどん変わってしまった人物たちだ。そして、この「人は変わる」が、事件の真相や真犯人を見つけるカギにもなっている。
本作がとくに良かった点は、登場人物を限りなく少なくし、変わってしまった女の人生を詳細に描いていったことである。
十津川警部シリーズは、登場人物が多い作品が多い。登場人物が多いと、どうしても一人ひとりを描ききれず、薄くなってしまいがちだ。が、本作は、しっかりと一人の女について描いていったと思う。
ミステリーについては、最後にどんでん返しがある。しかし、このどんでん返しは、ミステリー好きの読者なら、読めた展開だと思う。
最後に犯人が言った言葉。「子どもみたいに変わらないから馬鹿にしていたけど、そんな彼女が羨ましかった」という言葉が胸に染みる。
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