初版発行日 2017年12月31日
発行出版社 トクマ・ノベルズ
スタイル 長編
私の評価
事件は予想外の展開を見せ始めた!?旅情あふれるトラベルミステリー。
あらすじ
失踪した娘を捜してほしい―依頼を受けた、かつて十津川警部の部下だった私立探偵の橋本は、池戸彩乃の捜索を始める。勤務先のパソコンに謎のメモが残されていた。「4116581411123」。本州最北の鉄道の駅、下北駅の緯度と経度と判断した橋本は下北に飛び彩乃の痕跡を追う。一方、東京では彩乃の同僚が殺され十津川が捜査に乗り出す。
小説の目次
- 下北半島・恐山
- 更に北へ
- 知床の海
- 知床か洞爺湖か
- 盛岡駅で
- ある新聞記者の死
- 終末を告げるロボット
冒頭の文
私立探偵の仕事は、最近、人探しが多くなった。正確にいえば、失踪人探しである。
小説に登場した舞台
- 東京駅(東京都千代田区)
- 八戸駅(青森県八戸市)
- 下北駅(青森県むつ市)
- 大湊駅(青森県むつ市)
- むつ警察署(青森県むつ市)
- むつ市役所(青森県むつ市)
- 恐山菩提寺(青森県むつ市)
- 宇曽利山湖 極楽浜(青森県むつ市)
- 仏ヶ浦(青森県・佐井村)
- 大間港(青森県・大間町)
- 函館港(北海道函館市)
- 新函館北斗駅(北海道北斗市)
- 土方・啄木浪漫館(北海道函館市)
- 新千歳空港(北海道千歳市)
- 女満別空港(北海道・大空町)
- オシンコシンの滝(北海道・斜里町)
- ウトロの町(北海道・斜里町)
- ウトロ漁港(北海道・斜里町)
- 知床斜里駅(北海道・斜里町)
- 釧路駅(北海道釧路市)
- 網走駅(北海道網走市)
- モヨロ貝塚館(北海道網走市)
- 博物館 網走監獄(北海道網走市)
- オホーツク流氷館(北海道網走市)
- 北海道立北方民族博物館(北海道網走市)
- 弟子屈(北海道・弟子屈町)
- 洞爺湖(北海道・洞爺湖町)
- 洞爺駅(北海道・洞爺湖町)
- 特急「スーパー北斗6号」
- 盛岡駅(岩手県盛岡市)
- 中野駅(東京都中野区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 津村:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 西本:(巡視した西本明刑事とは別の刑事?)
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 橋本豊:
私立探偵。元警視庁捜査一課の刑事で、十津川警部の元部下。 - 田島:
中央新聞社会部の記者。十津川警部の大学時代の同級生。 - 森田:
むつ警察署生活安全課の巡査長。 - 矢田:
北海道警の警部補。 - 三浦:
盛岡署の警部。
NAGATA研究所
- 永田秀樹:
「NAGATA研究所」の所長。札幌にある「世界AI研究所」の所員でもる。工科大学院の教授。 - 山乃内:
「NAGATA研究所」の副所長。 - 池戸彩乃:
26歳。人工知能ロボット開発会社「NAGATA研究所」の社員。世田谷区北沢のマンションに在住。行方不明になる。 - 青田まき:
28歳。「NAGATA研究所」の社員。池戸彩乃の大学時代の同級生。四谷三丁目のマンションに在住。調布市付近の甲州街道沿いで車に轢かれて死亡した。 - 菊池:
「NAGATA研究所」の社員。青田まきの上司。 - 高瀬美奈子:
「NAGATA研究所」の社員。カメラマン。
事件関係者
- 石渡和江:
25歳。弟子屈のホテルで橋本豊が出会った私立探偵。大湊駅の構内で電車に轢かれ死亡した。 - 城戸明:
48歳。私立探偵。盛岡駅の構内で死体となって発見された。 - 関根玄哉:
中央新聞社会部の記者。池戸彩乃の逃避行の協力者。中野のマンションに在住。青梅街道の成子坂付近で自動車事故を装い殺された。
その他の登場人物
- 今西:
池戸彩乃が以前に務めていたIT会社の課長。 - 崎田千夏:
池戸彩乃が以前に務めていたIT会社の同期。 - 瀬戸隆:
「世界AI研究所」の総務部長。 - 香川:
「世界AI研究所」の所長。 - 園田:
中央新聞社会部の記者。関根玄哉の同僚。
印象に残った名言、名表現
(1)イタコとは。
イタコは、東北地方の土俗的な信仰を支える、盲目の巫女である。恐山でも口寄せも行うし、「おしら様」のお祭りでも、神寄せの経文を唱えて、神懸かり状態で、託宣も行うらしい。
(2)仏ヶ浦の絶景。
眼の前に現れた自然の造形は、恐山のそれをはるかにしのいでいる。向こうは、どこか作られたような自然だが、こちらのほうは、文字通り手つかずの自然である。風や波によって削られた巨大な奇岩郡が圧倒的な風景を作っていた。
(3)人間には覚悟を求められる時がある。
人間は、一生に何度か、覚悟を求められるときがあるだろう。今がそのときだ。
(4)北海道のエゾシカ被害。
「エゾシカが増え続けて困っているんですよ。うちの庭にだって平気で入ってきて、果実を食べちゃうしね。ひどい時には、うちの庭で、子供を産んだこともありましてね」
感想
2010年代以降は、歴史組み込み型ミステリーがメインだった、十津川警部シリーズ。トラベルミステリーファンにとっては、かつての作品の方が良かったと思っている方も多いのではないだろうか。
そんな、トラベルミステリーファンの方にとって、今回は満足できる作品なのではないかと思う。
本作では、青森の下北半島をまわり、そこから北海道に渡り、函館、ウトロ、網走、洞爺湖をめぐる旅が展開される。いずれの地域も旅情たっぷりに描かれている。
また、作品全体に満ち溢れる緊張感。これも、かつての十津川警部シリーズの特徴である。本作も、次から次へと展開が動いてき、読者を飽きさせない。常に緊張感を伴いながら、読み進められるのだ。
本作は、往年のトラベルミステリーを楽しめる、良作であった。
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