初版発行日 2013年3月10日
発行出版社 集英社
スタイル 長編
十津川警部の妻、直子が大活躍!!椿の因縁をめぐる謎を追って、東京、京都、福井を結ぶ推理行。
あらすじ
十津川警部の妻・直子に、京都K女子大学同窓会の招待状が届く。同期の金井富美が、日本画の賞を受賞したお祝いだという。直子たちは、”椿の君”と呼ばれた富美をはじめ仲良し5人で、美女軍団と称していた。同窓会直前、仲間の三原敏子が殺害される。十津川警部は、同窓生から情報を得るため京都へ向かうが、また軍団メンバーが殺害され……。
小説の目次
- 京都の夜
- 奇妙な椿の花
- 思い出の椿の花
- 女の嫉妬
- 直子狙われる
- 四人目の死者
- 小浜線に死ぬ
冒頭の文
五月九日、直子は、一通の招待状を受け取った。
小説に登場した舞台
- 京都駅(京都府京都市下京区)
- 京都ホテルオークラ(京都府京都市中京区)
- 嵯峨野(京都府京都市右京区)
- 東映太秦映画村(京都府京都市右京区)
- 小浜市(福井県小浜市)
- 神明神社(福井県福井市)
- 特急まいづる
- 小浜港(福井県小浜市)
- 舞鶴セントラルマリーナ(京都府舞鶴市)
- 東舞鶴駅(京都府舞鶴市)
- 小浜駅(福井県小浜市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
警察関係者
- 安田:
京都府警の警部。 - 湯沢純一郎:
京都府警の元警部。すでにガンで死亡している。13年前の三条恵美自殺事件の捜査をしていた。 - 湯沢佳子:
湯沢純一郎の妻。 - 三浦:
福井県警の警部。
京都K女子大学の卒業生
- 十津川直子:
十津川警部の妻。 - 金井富美:
日本画家。十津川直子の大学時代の親友。京都在住。「京都藤の花賞」を受賞。 - 花村亜紀:
夫婦で骨董店を営む。京都在住。十津川直子の大学時代の親友。 - 後藤久美:
主婦。京都在住。十津川直子の大学時代の親友。 - 三原敏子:
京都にある輸入販売会社の社長。十津川直子の大学時代の親友。 - 相原樹里:
京都K女子大学の卒業生。十津川直子の先輩。 - 三条恵美:
京都K女子大学に在学中に自殺。13年前の学園祭の舞台で主役を演じている。
事件関係者
- 金井敬伯:
金井富美の父親。日本画家。2年前に自殺している。 - 相原剛:
相原樹里の父親。京都で旅館業を営む。京都の実力者で資産家。 - 小林:
映画監督。 - 三条悦子:
三条恵美の母親。
その他の登場人物
- 杉浦:
檀家の子孫。 - 芦田信一郎:
F大学の教授。植物を研究している。 - 高木:
「新しい京都」出版社の編集長。 - 古橋:
「新しい京都」出版社の部員。 - 星川:
京都にある芸能雑誌の出版社の編集長。 - 中井:
小浜線の車掌。 - 児玉由里子:
京都アートの社長。相原樹里の友人。
印象に残った名言、名表現
(1)ひさしぶりに再会した学生時代の友人。当時と同じようにはいかない。
「昔のような親しさは、なかったわ。みんな、大人になって、いろいろとあって、それぞれが、小さな秘密を、持っているからじゃないかしら?」
(2)戦場は京都。
十津川は、部下の刑事たちを京都に、呼ぶことにした。次の戦場は京都と考えたからである。
感想
本作は、十津川警部シリーズの中で、異色の作品といっていいだろう。
まず、「小浜線に椿咲く頃、貴女は死んだ」というタイトルである。
十津川警部シリーズは○○殺人事件など、ストレートなタイトルが多い。一番多いのが、「地名+殺人事件」、「列車名 or 駅名+殺人事件」というタイトルだ。こうしたタイトルは、トラベルミステリーの特徴と言っていい。
だが、本作は、なんともセンチメンタルなタイトルになっているのだ。内容も、このタイトルにふさわしく、女性の愛憎劇を、女性の感性で描いた作品になっている。
十津川直子が実質的な主人公になったことも、珍しい。
十津川警部の妻、直子は長編、短編問わず、たびたび登場する。警部の妻らしく、肝が座っている。それでいて、頭も良い。
今回は、直子が、事件の渦中にいる。そして、直子、十津川警部のお株を奪ってしまうのだ。”女探偵・十津川直子”が、どんな活躍をするのか?それが、本書のお楽しみである。
そして、本書をすべて読み終わったとき、「小浜線に椿咲く頃、貴女は死んだ」の意味に、胸を打たれるだろう。
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