初版発行日 1973年8月15日
発行出版社 光文社
スタイル 長編
私の評価
【POINT】
十津川警部シリーズの記念すべき第1作目!東京―タヒチ間のヨットレースを舞台に繰り広げられる雄大なトリックに、十津川が挑む!!
十津川警部シリーズの記念すべき第1作目!東京―タヒチ間のヨットレースを舞台に繰り広げられる雄大なトリックに、十津川が挑む!!
あらすじ
深夜の自動車事故。犠牲者は、ヨットによる単独無寄港世界一周に成功し、一躍英雄となった内田洋一だった。遺体の毒物反応から、殺人事件と判明。警部補・十津川の前に次々と浮上しては消える容疑者たち……最後に真犯人と見込んだ人物には、鉄壁のアリバイがあった!
小説の目次
- 成功の甘き香り
- 東京ータヒチ間一千万円レース
- 一枚の写真
- 劇的な死
- 疑惑の風
- 南十字星の海
- 捜査の壁
- S・O・S
- サンゴ礁の死
- 幽霊船
- 疑惑への接近
- 遭難
- 幻のクルー
- 放火
- 罠をかける
- トリックの解明
冒頭の文
十月十八日の深夜、第三京浜道路を東京都心に向かって、制限速度を超す時速一〇〇キロ以上のスピードで飛ばす一台のスポーツカーがあった。
小説に登場した舞台
- 京急油壺マリンパーク(神奈川県三浦市)
- 明大前駅(東京都世田谷区)
- 新宿駅(東京都新宿区)
- タヒチ(フランス領ポリネシア)
- 羽田空港(東京都大田区)
- 晴海埠頭(東京都中央区)
- 木負(静岡県沼津市)
- グアム(アメリカ合衆国)
- 城ヶ崎海岸(静岡県伊東市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
30歳。警視庁捜査一課の警部補。主人公。 - 永井:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 崎田信介:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。
事件関係者
- 内田洋一:
33歳。ヨットマン。ヨットで単独無寄港世界一周に成功した男。第三京浜で交通事故を起こして死亡したが、その前に毒殺されていた。 - 内田亜矢子:
内田洋一の妻。元テレビタレント。 - 山代ルミ子:
24歳。銀座のバーのホステス。内田洋一の愛人。明大前のマンションに在住。 - 村上邦夫:
33歳。ヨットマン。中野のアパートに在住。 - 服部克郎:
25歳。ヨットマン。村上邦夫に同行したクルー。 - 山下太一:
28歳。ヨットマン。村上邦夫に同行したクルー。 - 名取高志:
グアムでヨットが転覆して死亡したとされた男。 - 長谷部大造:
丸栄物産の社長。 - 大野:
52歳。丸栄物産海洋レジャー部の部長。 - 小西清治:
丸栄物産ヨット販売宣伝課の社員。詩人。 - 金子昌子:
丸栄物産の社長秘書。
その他の登場人物
- 斉藤周三:
ヨットマン。 - 宍戸賢:
ヨットマン。 - 西沢栄太郎:
ヨットマン。 - 関谷直一郎:
大船造船所の社長。ヨットの設計者でもある。 - 森下:
「マーベリック1号」の船長。 - 日野:
「マーベリック1号」のクルー。 - 佐々木:
「マーベリック1号」のクルー。 - 榊原紳一郎:
日本ヨット連盟の理事長。 - 大河原:
東日新聞の記者。 - 伊達:
東日新聞の記者。 - 杉山:
新東亜デパート・ヨット関連の営業部長。 - 三崎:
一等航海士。 - 山下徳太郎:
35歳。東京のサラリーマン。 - 山下民雄:
22歳。大学生。 - 藤沼加奈子:
名取高志の婚約者。千葉市内の菓子屋の娘。 - 名取高一郎:
名取高志の兄。千葉市にある「スーパーナトリ」の社長。 - ヘンダーソン:
ハワイのヒッカム空軍基地の少佐。 - フィッシャー:
ハワイのヒッカム空軍基地の軍曹。 - ジェニング:
ハワイのヒッカム空軍基地の伍長。
感想
本作は、十津川警部シリーズの記念すべき第一作目である。
刊行は1973年。2021年現在、550冊近い刊行をほこる、ミステリーシリーズの怪物ともいえる十津川警部シリーズの第1作目というだけでも、大変な価値のあるものだろう。
ダイナミックでロマンに溢れた、海洋ミステリーらしい作品で、最後まで二転三転するストーリー展開や犯人像は、十津川警部シリーズの片鱗が垣間見える、力作だったといえる。
私の感想はほどほどにして、本作刊行にあたって発表された、西村京太郎先生のことばを紹介しておこう。
私は海が好きだ。穏やかな海も、荒れ狂う海もである。そこにはロマンがある。だが、そのロマンの海に、さまざまな人間の欲望が入り込んできたとき、美しい海も、また修羅場と化すだろう。美しい女の微笑も、ある場合には、殺人の道具に化すように、エメラルド・グリーンの海も、白いヨットの帆も、殺人の道具と化すことがあるかもしれない。この作品は、海と帆船と人間の欲望との葛藤を書いたものである。したがって、これは、人間同士の戦いでもあり、人間と海との戦いを書いたものでもある。
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