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「イヴが死んだ夜」感想レビュー。あらすじ、舞台、登場人物

イヴが死んだ夜小説

初版発行日 1978年11月25日
発行出版社 集英社
スタイル 長編

私の評価 4.6

POINT】
女性の空白の3年間を追う、迫真のサスペンス!
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あらすじ

氷雨の浅草寺境内で若い女性の全裸死体が発見された。太腿には、上品な顔立ちとは不釣り合いなバラの刺青が彫られていた。「被害者は岐阜市内の旧家の長女では……」という通報により、事件を担当する十津川警部は岐阜に飛ぶ。通報通り、被害者は3年前に家出した良家の娘で、イヴと呼ばれていたことがわかった。捜査を進めると事件の影に十津川の婚約者の存在が浮上し……。

小説の目次

  1. バラの刺青
  2. 旧家の門
  3. 金のブローチ
  4. 一人の詩人
  5. 愛と死と
  6. 第三の殺人
  7. 遺書
  8. イヴが死んだ夜

冒頭の文

浅草千束町のラヴ・ホテルを出て歩き出すと、男は、女の腰あたりに、というより意識して胸のあたりに腕を廻して、彼女の乳房を、コートの上から押さえるようにした。

小説に登場した舞台

  • 浅草寺(東京都台東区)
  • 表参道(東京都渋谷区)
  • 赤坂見附駅(東京都港区)
  • 名古屋駅(愛知県名古屋市中村区)
  • 岐阜駅(岐阜県岐阜市)
  • 東京駅(東京都千代田区)
  • 信濃町駅(東京都新宿区)
  • 松屋 浅草(東京都台東区)
  • 草加駅(埼玉県草加市)
  • 吉原(東京都台東区)
  • 言問橋(東京都台東区)
  • 岐阜公園(岐阜県岐阜市)
  • 宮城刑務所(宮城県仙台市若林区)
  • 仙台空港(宮城県名取市)
  • 名古屋空港(愛知県・豊山町)

登場人物

浅草署

  • 十津川省三:
    浅草署の警部。主人公。
  • 亀井定雄:
    浅草署の刑事。十津川警部の相棒。
  • 井上:
    24歳。浅草署の刑事。
  • 木村:
    浅草署の刑事。
  • 本多:
    捜査本部長。

警察関係者

  • 野崎:
    岐阜県警の警部。
  • 三浦:
    警察医。

事件関係者

  • 岩井妙子:
    十津川警部の婚約者。上野広小路にある出版社「山本書房」に勤務。向島のアパートに在住。行方不明になった後、岐阜羽島駅近くの雑木林で死体となって発見された。
  • 首尾木大造:
    岐阜の旧家。大地主で旅館経営もしている。
  • 首尾木明子:
    首尾木大造の娘。3年前、家出した後、東京で翻訳やコールガールの仕事をしていた。原宿にあるマンション「正和原宿コーポ」に在住。浅草寺の池で水死体となって発見された。
  • 首尾木美也子:
    首尾木明子の妹。
  • 山本:
    岐阜市内にある山本旅館の主人。鵜飼。長良川で水死体となって発見された。
  • 長田史郎:
    32歳。自称詩人。草加のアパートに在住。十津川がインターポールにいた時に岩井妙子が浮気した相手。本名は高田史郎。
  • 堀正子:
    25歳。国際通りにあるバーNのホステス。向島のアパートに在住。松屋デパート浅草から飛び降りて死亡した。
  • 高田礼子:
    詩人。岐阜在住。3年前に死亡した。長田史郎の母親。
  • 高田信次郎:
    59歳。首尾木大造の弟。高田礼子の夫。3年前、高田礼子殺害事件で逮捕され宮城刑務所に服役中。
  • 朝倉:
    刑事専門弁護士。

その他の登場人物

  • 山口:
    原宿にあるマンション「正和原宿コーポ」の管理人。
  • 中山英次:
    新人歌手。イヴの隣の住人。
  • 小島光子:
    ファッションデザイナー。赤坂にお店がある。
  • 岩井文江:
    岩井妙子の母親。
  • 新谷:
    中央新聞の記者。
  • 小坂井:
    出版社「山本書房」の編集長。
  • 宮坂敏広:
    サン翻訳工房の社長。
  • 平井靖之助:
    東亜興業の社長。吉原にある「第一王宮トルコ」の支配人。
  • カオル:
    「第一王宮トルコ」の風俗嬢。
  • 彫達:
    60歳。向島の彫師。
  • 宮川郁夫:
    長良川の上流にあるK町の町長。歯科医。
  • 小野:
    詩人。
  • 武藤知子:
    画家。
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感想

本作は、十津川警部シリーズの初期作品である。西村京太郎先生が、トラベル・ミステリーへと舵を切る前の作品であるため、旅情という要素はない。が、それ以上にサスペンスフルな作品に仕上がっている。

本作は、人間関係の謎が多く、この人間関係こそが事件の本質にもなっていた。物語の終盤で、人物たちの関係が明らかになっていくのだが、今まで起きた事件のすべてが一つの線、一つの人間関係で結ばれていたのである。よくここまで考えるものだと驚嘆してしまった。

また、本作では、十津川警部が浅草署の警部になっていたことも面白い。十津川警部といえば、警視庁捜査一課の警部であることが、十津川警部シリーズの通例なのだが、この作品は十津川警部が本庁へ異動する前の時代を描いたという設定なのだろう。

十津川の独身時代の作品であり、この当時、岩井妙子という婚約者がおり、彼女も今回の事件の関係者になっているのである。

謎が多く、妖しげな雰囲気につつまれた本作。トラベル・ミステリーとは違うけど、別の魅力につまった作品であった。

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