初版発行日 2011年12月31日
発行出版社 徳間書店
スタイル 長編
私の評価
人気作家の代筆? 作中作を駆使したミステリーの醍醐味!
あらすじ
走行中のバスが爆破された。たまたま乗り合せ、けがをおった作家志望の北村悟は、刑事から現金五百万円と長野県の資料を渡される。人気作家・田中公正の秘書で、事故で死亡した諸星恵から、田中に代わって小説を書いてほしいと託されたというのだ。同じ犠牲者の中に、田中の担当で喜多村という編集者がいることがわかり、人違いと知りつつ長野に向かった北村だったが……。
小説の目次
- 北村という男
- 奇妙なストーリー
- 休筆宣言
- 第一章の言葉
- 急変
- 疑惑と不安
- エピローグで殺せ
冒頭の文
北村悟は、死にかけていた。
小説に登場した舞台
- 新宿西口(東京都新宿区)
- 松本駅(長野県松本市)
- 姨捨駅(長野県千曲市)
- 信州そば処 一松亭(長野県千曲市)
- 長野駅(長野県長野市)
- 渋温泉(長野県・山ノ内町)
- 軽井沢駅(長野県・軽井沢町)
- 旧軽井沢(長野県・軽井沢町)
- 日比谷公園(東京都千代田区)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 北条早苗:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三田村功:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 三上刑事部長:
刑事部長。十津川警部の上司。
爆発した甲州バスの乗客
- 池上博:
51歳。甲州バスの運転手。 - 北村悟:
35歳。無職。作家志望。 - 喜多村良一:
40歳。R出版の編集者。芦花公園のマンションに在住。バスの爆発事件で死亡する。 - 鈴木茜:
42歳。主婦。 - 鈴木吾郎:
56歳。明大前でパン屋を経営。 - 諸星恵:
作家。田中公正の秘書。バスの爆発事件で死亡する。 - 高橋慶太郎:
39歳。吉祥寺で書店を経営。 - 白井喜八郎:
66歳。中野でスーパーを経営。バスの爆発事件で死亡する。 - 渡辺泰助:
40歳。白井喜八郎の経営するスーパーの営業部長。 - 後藤正久:
34歳。桜上水でイタリアンレストランを経営。バスの爆発事件で死亡する。
事件関係者
- 田中公正:
人気作家。永福町に在住。 - 木之内:
「文芸ジャパン」の社長。 - 木之内美紀:
木之内の娘で社長秘書。北鎌倉に在住。 - 十条寺華子:
40歳。華族の娘。去年の四月、湯田中温泉の新明荘で殺害される。 - 新井進一:
30歳。「文芸ジャパン」のカメラマン。 - 滝田明彦:
25歳。「文芸ジャパン」の助手。
その他の登場人物
- 宇津木健太郎:
42歳。歴史時代小説の中堅作家。北村悟の大学時代の先輩。 - 井上:
甲州バスの営業所長。 - 笠井信子:
渋温泉「湯本館」の仲居。 - 吉田:
R出版の編集長。喜多村良一の上司。 - 安川:
R出版の文芸部長。 - 早川良子:
40歳。木之内の別荘の家政婦。 - 井上勝男:
35歳。木之内の別荘の運転手。 - 安藤:
出版社「A社」の編集者。 - 白井修:
30歳。白井喜八郎の息子。大手の住宅メーカーに勤務。 - 伊坂:
51歳。出版社「T社」の文芸部長。
印象に残った名言、名表現
(1)作家の書評。
この作者には、才能がある。長編を書くだけの筆力もある。残念なのは、作品全体に強弱がないことで、そのため、読み終わってからも、感動がないのである。また、主人公に、魅力がないので、読んでいて、主人公に感情移入ができない。
(2)姨捨伝説
わが心 なぐさめかねつ 更級や 姨捨山に 照る月を見て
(3)松尾芭蕉の『更科紀行』。
更科の里 姨捨山の月見んこと しきりにすすめる秋風の 心に吹きさわぎて
感想
本作の見どころは、何と言っても、作家の卵を自称する北村悟が、ミステリー小説を書き上げる流れであろう。
これまで文学賞に応募してきたが、箸にも棒にもかからなかった北村悟が、はじめて書く長編ミステリー。これを構想段階から取材、人物の設定、構成、書き出しなど、小説を書く経緯やどんなことに悩むのかが、仔細に描かれている。
もちろん、大作家の西村京太郎先生が本作を描いているので、かなりリアルである。作家が作品を書き上げる過程は、一般人にはほとんど知られていないので、かなり貴重な作品であったと思う。
また、本作は、ゴーストライターの存在も、大きなテーマになっている。このゴーストライターの存在が、事件の背景に深く関わっているからである。
作家の世界の裏側を少しだけ垣間見れたのは、実に面白い。
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