初版発行日 1983年12月1日
発行出版社 光文社
スタイル 長編
私の評価
昭和15年の「超特急”燕”開業10周年記念」の招待客二人が、43年を経て、惨殺された!あの時の「燕号」車内で何が……!?43年前の事件に挑戦する十津川警部の推理!
あらすじ
「特急『つばめ』で、恐ろしいことが……!」不可解な匿名の手紙が警視庁に……。国鉄が計画した、戦前の「燕号」と同じ編成・時刻表で走る特別列車「つばめ号」での事件を予告?十津川警部がつきとめた手紙の主・小井出春雄は何者かに絞殺!小井出は昭和15年の「超特急『燕』開業十周年記念」列車に招待されていた。さらに、もう一人の招待客も絞殺!43年前の「燕号」の車内で、何があったのか!?当時の招待客とその関係者を乗せ、東京を発った「つばめ号」が名古屋を通過したとき……!?
小説の目次
- 出発進行
- 東京駅ー昭和十五年「燕」
- 東京駅ー昭和五十八年「つばめ」
- 沼津ー静岡 昭和十五年「燕」
- 沼津ー静岡 昭和五十八年「つばめ」
- 名古屋ー神戸 昭和十五年「燕」
- 名古屋ー京都 昭和五十八年「つばめ」
- 東京
- 京都駅
- 爆発時刻へ
- 大阪駅ー昭和五十八年「つばめ」
冒頭の文
「この事件について、君の意見を聞きたくてね」捜査一課長の本多が、一通の封書を、十津川の前に置いた。
小説に登場した舞台
- 田園調布駅(東京都大田区)
- 初台駅(東京都渋谷区)
- 国立国会図書館(東京都千代田区)
- 銀座駅(東京都中央区)
- 新宿駅(東京都新宿区)
- 三鷹駅(東京都三鷹市)
- 有楽町駅(東京都千代田区)
- 沼津駅(静岡県沼津市)
- 静岡駅(静岡県静岡市葵区)
- 名古屋駅(愛知県名古屋市中村区)
- 千歳烏山駅(東京都世田谷区)
- 京都駅(京都府京都市下京区)
- 摂津富田駅(大阪府高槻市)
登場人物
警視庁捜査一課
- 十津川省三:
警視庁捜査一課の警部。主人公。 - 亀井定雄:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の相棒。 - 西本明:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 日下淳一:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 新井:
警視庁捜査一課の刑事。十津川警部の部下。 - 本多時孝:
警視庁捜査一課長。十津川警部の上司。
特急「つばめ号」の乗客
- 小井出春雄:
田園調布のマンションに在住。43年前の「超特急『燕』開業10周年記念」列車の招待客。自宅で死体となって発見された。 - 小井出弓子:
28歳。小井出春雄の娘。デザイナー。亡くなった小井出春雄の代わり、「つばめ号」に乗車することになった。 - 安田淳一郎:
68歳。元俳優。芸名は安川敏彦だった。渋谷区初台に在住。43年前の「超特急『燕』開業10周年記念」列車の招待客。自宅で死体となって発見された。 - 小野かおる:
25歳。女優。43年前の「超特急『燕』開業10周年記念」列車の招待客だった酒井夕子の長女。 - 本郷三枝子:
58歳。女優。43年前の「超特急『燕』開業10周年記念」列車の招待客。 - 細川健志:
43年前の「超特急『燕』開業10周年記念」列車の招待客だった細川勇二郎の息子。 - 三村康夫:
68歳。東都新聞社会部の主筆。三軒茶屋に在住。43年前の「超特急『燕』開業10周年記念」列車の招待客。「つばめ号」の車内で死体となって発見された。 - 山形貢太郎:
68歳。作家。三鷹に在住。43年前の「超特急『燕』開業10周年記念」列車の招待客。 - 崎田勝:
中央鉄鋼の営業課長。千歳烏山の建売住宅に在住。43年前の「超特急『燕』開業10周年記念」列車の招待客だった崎田喜一郎の息子。 - 武田靖男:
崎田勝の招待状を奪って、「つばめ号」に乗っていた男。 - 田島徹:
48歳。M商事の営業第三課長。43年前の「超特急『燕』開業10周年記念」列車の招待客だった田島飛行機の社長・田島久造の息子。
その他の登場人物
- 北野:
国鉄総裁秘書。 - 神木祐一:
国鉄の東京総合司令室の責任者。 - 森田:
つばめ号の車掌。 - 久保田:
生命保険会社の相談役。元陸軍中尉。 - 崎田千寿子:
崎田勝の妻。 - 三村徳子:
三村康夫の妻。 - 高木:
大阪のサラリーマン。
感想
43年前に走った超特急「燕号」と、現在(昭和58年)に走る特急「つばめ号」を描いた秀作ミステリーだったと思う。
43年前の「燕号」の出来事と、現代の「つばめ号」での描写が、交互にくり返されながら、物語は進んでいく。当然、「燕号」の事件と現代の「つばめ号」の事件はつながっており、読み進むにつれて、過去と現代の事件の全体像が明らかになっていくという、巧妙な作りだった。
何より、43年前の描写が興味深い。戦前の時代背景やその当時の様子がありありと描かれていた。
2021年現在から見たら、昭和58年設定の”現代”の描写も、戦前の描写も、ともに古き良き日本の姿に見えるのも面白い。
最後に、西村京太郎先生のことばを紹介しておこう。
私が生まれた昭和五年に、超特急「燕号」が、初めて東京ー神戸間を走っている。
それまでの特急が、平均時速五一・六キロだったのに比べて、「燕」は、六七・五キロだったから、いかに画期的なものだったかわかる。この超特急「燕」が、のちの新幹線に発展していくのである。
私は、いつかこの「燕」のことを、書きたいと思っていた。何年か考え、戦前の「燕」へのノスタルジイをこめて書いたのだが、この作品である。
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